tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を:生きるために食べよ。食べるために生きるな。(ソクラテス)

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                                                         April.17.2018 

 

 

ソクラテスは,紀元前469年ごろ

ギリシアに生まれた哲学者です

 

自分が無知であることを知る人間こそが賢人だとし,

無知の知」の必要性を説き,

表面的な知識を振りかざすソフィストと呼ばれた

「学者気取り」の人たちが,

ソクラテスと話しているうちにロゴス(論理)を育み,

実はよくわからずにその知識を使っていた

ということに気づかせる「産婆術」を実践しました

 

西欧的思考の原型とも言われます

 

とは言え,政治経済の世界を始め,

事実上日本も含む「西側諸国」では,

ソクラテスから2500年ほど経った今でさえ,

彼の知的謙虚さを実践し,

それを人々のために有効活用しあおうとする

社会になっていないという,

残念な現実があります

真理を志向することなく,

諸問題を解決しようとしているのです

 

おそらくソクラテスが今生きていましたら,

小生も含めさぞかし滑稽なソフィストたちばかりで,

ほぼ全員に産婆術を施そうとすることでしょう

 

昨年末に一度,書かせて頂きましたが,

本日はこのソクラテスの名言のいくつかを,

新たにご紹介したいと思います  

tsuputon7.hatenablog.com

ソクラテス - Wikipedia 参照

 

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まずは,ソクラテス

自身のアイデンティティについて語った一言です

 

I am not an Athenian or a Greek,

but a citizen of the world.

私はアテネ人でもギリシア人でもなく、

世界市民である。

 

世界市民

 

すでに彼には,アテネギリシアも超えた

「世界」についての意識があったのです

「国家」意識こそが対立・紛争の諸悪の根源であり,

ひいては個人の魂を肉体の束縛から解放することが

真理に至る唯一の方法

と考えていましたソクラテスには,

自身のアイデンティティにとって

「世界」こそ住処だったのです

 

これは

 

私の住処は家ではない

私の家は宇宙であり,棺は宇宙だ

 

と語った,荘子のことばを想起させます

 

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続きまして,「生」と「食」についてです

 

Thou shouldst eat to live; not live to eat.

生きるために食べよ。食べるために生きるな。

 

ソクラテスは節制のとれた生活が,

健全な精神の育成には欠かせないとしました

「食べるために生きる」とは,

「食」の楽しみのために生きることとなり,

それは本末転倒であると考えたのです

 

彼にとって生活の質を向上させるのは

「死の準備」としての哲学をすること,

どこまでも考え続けていくことでしか

ありませんでした

 

The unexamined life is not worth living.

吟味されない生に、生きる価値はない。

 

ただただ惰性的に生きるのではなく,

食べるために生きている状態では,

感覚の奴隷になり下がってしまいます

そして感覚による快・不快に縛られる限り,

この肉体の原理のみに執着することとなり,

より高次の私たちのアイデンティティーを

開花させることにはつながりません

 

私たちは物体なだけではありません

物体でもあるだけです

 

「もの」の原理だけに自身を限定してしまったら,

3次元世界の重力場に隷属することしかできません

宮澤賢治は「わたくしといふ現象」とし,

銀河系を意識した生を促して

4次元世界のアイデンティティを認知し,

リサ・ランドール博士は 5次元世界の存在を

すでに数式で証明されたと言うのに…

 

だからこそ,ソクラテスは言います

 

Know thyself.

汝自身を知れ

 

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ソクラテスは,社会参加する際の心得として,

次のようなコメントをしています

 

The way to gain a good reputation

is to endeavor to be what you desire to appear.

良い評判を得る方法は、

自分自身が望む姿になるよう努力することだ。

 

自分自身があるべき姿は

誰しも自分が既に知っているはずで,

その姿になることこそが自己実現であり

社会奉仕にもつながると,

ソクラテスは考えました

 

自然な形で自己実現ができている人は,

現代社会でも自然と尊敬されますし,

評判も良くなるものです

 

ただしそれはきちんとした徳(アレテー)を

踏まえてこそのものです

 

Do not do to others

what angers you if done to you by others.

他人からされたら怒るようなことを

人にしてはいけない。

 

これなどはキリスト教で言います,

「他人にして欲しいと望むよう為せ」

の表裏のようです

 

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ソクラテスは「富」についても

いくつかメッセージを語っています

 

If a man is proud of his wealth,

he should not be praised

until it is known how he employs it.

金持ちがどんなにその富を自慢しているとしても、

彼がその富をどんなふうに使うかが判るまで、

彼をほめてはいけない。

 

インドでも古来,大富豪(マハーラージャ)は,

余分なお金を蓄財するのは悪であり,

それを社会の困った人たちのために

役立てることができて初めて,

善業になるという発想があります

 

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同じ巨万の富があっても,

その使い方次第でその人となりが現れるというものです

何よりも大切なのは,

その本人の満足感だとソクラテスは考えます

 

Satisfaction is the wealth to which nature gives it.

Luxury is artificial poverty.

満足は自然の与える富である。

贅沢は人為的貧困である。

  

実は満足感は子どもでも味わえます

贅沢は大人の味わいです

 

贅沢の背景には何らかしらの形で欲求不満があり,

その解消・忘却を目指す反動があります

「一番小さなことでも満足できる人が一番裕福である」

と考えるソクラテスならではの痛烈な風刺です

 

このように考えますのでソクラテスにとって

富は生きる上での二次的な産物であり,

一次的な価値は「善」にありました

 

Wealth does not bring goodness,

but goodness brings wealth

and every other blessing,

both to the individual and to the state.

富は善をもたらさないが、

善は富と

他の全ての恵みを、

個人にも国家にももたらすのである。

 

富は善の結果であっても,善の原因にはならない

善があれば,富も個人も国家も,恵みを与えられる

真善美の三大真理を追求する哲学的生の中でも,

「いかに善く生きるか」こそが至上命題であった

ソクラテスにとって,

最高の豊かさは,

善があふれる人にのみ訪れる美質でした

 

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ソフィストたちとのやり取りの中で

「産婆術」を実践していき,

人間界で最高の賢者と讃えられたソクラテス

 

彼自身が考えます「賢者」とは… 

 

A wise man thinks of the complex simply.

賢者は複雑なことを単純に考える。

 

これは裏返しますと,

学者ぶるソフィストたちは,

知識を振りかざすだけ,そして同時に,

知識に振り回されるだけの存在であり,

複雑なことを複雑なままとらえる人たちだと

ソクラテスは考えていたということを

示唆しています

 

どんなに複雑極まりないように見える対象であれ,

その本質を突いて単純化して捉えられるには,

真の「知恵」が必要です

その知恵を身に付けてこその賢人です

 

ではこの複雑極まりない人間の「生」を,

どうやって単純化して捉えればいいのでしょうか…

ソクラテスの答えはただ一つでした

 

Death may be the greatest

of all human blessings.

死は人間の持つ全ての恵みの中で

最も偉大なものだろう。

 

それでは,このへんで

ごきげんよう! 

 

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