tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言: 個人の記憶は独自の私小説だ(オルダス・ハクスリィ)

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                                            Nov.26.2018

 

 

オルダス・ハクスリィは,1894年,

イギリス生まれの著作家です

 

小説では

『道化芝居』『すばらしい新世界』,

エッセイでは

『知覚の扉』『天国と地獄』などの

代表作があります

 

個人的には,

古今東西の哲学者・宗教家らのことばを

連鎖させ,ハクスリィ独自の解釈で

人類が脈々と伝えてきた思想系譜を

あぶり出そうと模索した

『永遠の哲学』に,

学生時代とても感激しました

 

とりあえず無知ななりにも,

ハクスリィのガイドによって

思想史の概略がつかめたという,

青年期にありがちな

素敵な思い込みをさせてくれた名著です

 

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本日はこの,オルダス・ハクスリィに

当時の感謝の意を表すべく,

名言のいくつかをご紹介したいと思います

和文拙訳)

オルダス・ハクスリー - Wikipedia参照

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昨日,久々に知人とランチをし,

美術館巡りをしました

あってすぐ,

色々と会話が弾んだのですが,

その時に以前,

小生が書きましたハクスリィの

記事の中の名言を思い出しました

 

A man may be

a pessimistic determinist before lunch

and an optimistic believer

in the will's freedom after it.

人は昼食の前は

悲観的決定論者で,

その後,意志の自由を奉じる

楽観的信者になるものだ

 

絶好の行楽日和の連休最終日,

日曜日のランチとは思えないような

ディープな話をしてしまいました… 

本当に知人にとっては

いい迷惑だったかもしれませんが,

話せた本人としては,感謝しかなく,

その時の開放感たるや

何物にも替えがたい,有難いものです

tsuputon7.hatenablog.com

 

知人はここ一ヶ月で二度,

海外旅行に行ってきたそうです

そのお話を聞くにつけ,

やはり旅行で得るものは

想像以上にあるんだなと思いました

ハクスリィもこう言っています

 

To travel is to discover

that everyone is wrong

about other countries.

旅行するとすべての人が

他国に関して間違えている

と分かる

 

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 ハクスリィの文体の小気味良さは,

その比喩力にあると思われます

 

Happiness is like coke -

something you get as a by-product

in the process of

making something else.

幸福とはコークスのようなものだ

何か他のものを作っているプロセスで

副産物として得られるものだ

 

石炭を蒸し焼きにし

炭素部分だけを残した燃料,

「骸炭」とも呼ばれるコークスが

ハクスリィにとっての

「幸福」のメタファでした

 

幸福は求めても得られるものではない

 

幸福は気づけばそこに,

あたかも空気のように

自分の周りを被ってくれている,

受動的実態である

 

ハクスリィの透徹した眼差しが

うかがえます

というのも,

彼にとって「経験」は

通常の意味での経験では

ないからです

 

Experience is not

what happens to you.

It is what you do with

what happens to you.

経験は自分に起こることではない

経験は自分に起こることに対し

自分ですることだ

 

これはニーチェのことばを連想させます

tsuputon7.hatenablog.com

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コークス 

 

 

ハクスリィは教育について次のように述べて

 

The most valuable of all education

is the ability to make yourself

do the thing you have to do,

when it has to be done,

whether you like it or not.

あらゆる教育のうち

最も価値のあるものは,

好きであろうとなかろうと,

なされなくてはならない時に,

しなくてはならないことを

自身でするようにさせる能力だ

 

自分のすべきことを,

しかるべき時に,

しっかりと自分でできるようにする

 

確かに,誰もがそうできるならば,

世の中に「教師」など

要らないことでしょう

 

逆にこのように実行できない人たちが

知らず知らずに大人になってしまい,

さまざまなネガティヴな想念を蓄積して,

気づけば最悪の場合,

戦争にまで至ってしまうのでしょう

 

Everyone who wants to do good

to the human race

always ends in universal bullying.

人類に善を成したがる人は

畢竟,最後には世界中をいじめる

 

政治然り経済然り宗教然り,

そのリーダーたちは社会に対し

良かれと思って「善」を成そうとします

 

ですがそれは,

いつの間にか「独善」となってしまい,

排他的原理を持つものです

その結果は端的に,

自分に賛同しない人間を攻撃する

大義名分になってしまいます

 

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イギリス人貴族の生まれで,

名だたる学者の家系であった

ハクスリィは,思う存分

読書ができたと言います

その博学ぶりで有名でしたが,

おそらくは東洋哲学にも

相当な造詣があったと思われます

 

There are things known

and there are things unknown,

and in between are

the doors of perception.

知られていることと

知られていないことがあり,

その中間に知覚の扉がある

 

このことばなどは,まさに

「わびさび」の見事な解説

と言えるのではないでしょうか…

そしてハクスリィはこの

「知覚の扉」を

何よりも重要視しました

 

I'm afraid of losing my obscurity.

Genuineness only thrives in the dark.

Like celery.

私は自分のあいまいさを

失くしてしまうことを恐れる

本物は暗闇の中でしか育たない

セロリのように

 

ハクスリィはまた,

神について次のような

ユニークなコメントを残しています

 

All gods are homemade,

and it is we who pull their strings,

and so,

give them the power to pull ours.

あらゆる神々は自家製だ

だから,彼らの糸を引くので

彼らに私たちの糸を引く力を

与えてしまうのは,まさしく私たちだ

 

なんと絶妙なる指摘!

こうのたまわせるのは,

何を隠そう彼の父君だったかと

思われます

 

My father considered a walk

among the mountains

as the equivalent of churchgoing.

私の父は山の中の散歩を

教会通いと同じと考えていた

 

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安藤忠雄光の教会

 

 

ハクスリィは「天才」について,

スティーブ・ジョブズピカソ

岡本太郎氏らと同様の見解の

持ち主でした

 

The secret of genius is

to carry the spirit of the child

into old age,

which means never losing

your enthusiasm.

天才の秘訣は,子どもの精神を

年をとっても持ち続けることであり,

それは情熱を

失わないということだ

tsuputon7.hatenablog.com

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誰しもが自分自身の中に

「天才」を宿して生まれてくるのに,

「社会」という共同幻想の渦中に

もまれすぎて,

気づけばその「天才」をいけにえにし,

没個性の社会の一歯車となって

収束し満足してしまう…

 

ですが,その過程であってさえ,

すべてを達観し

自身を見守り続けている,

生来の「天才」の目が

優しく輝き続けている間は,

誰もが等しく自らの人生という作品を

作り続ける作家です

 

Every man's memory is

his private literature.

個人の記憶は独自の私小説

 

それでは,このへんで

ごきげんよう! 

 

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