Piet Mondrian: Composition II en rouge, bleu et jaune
April.2.2019
アイルランド生まれの詩人・小説家です
彼の作品は
多大な影響を与えたと言われています
医師の家庭に生まれ,
オックスフォード大学首席卒業の一方で,
文学サロンなどで過激な言動をし,
幼少期は母から女装をさせられたためか,
パリでは奇抜な服装で
友人ができなかったなどの
逸話が残されています…
その後各国を転々としつつ,
晩年は日の目を浴びずに
過ごしたそうです
こういう奇行性のある方には
必然的に興味が湧いてきます
本日は,このオスカー・ワイルドの
名言のいくつかをご紹介したいと思います
(和文拙訳)
まずは,
ワイルド独特の「複眼の思考」が
表されています名言からです
Some cause happiness
wherever they go;
others whenever they go.
行く先々で
幸福をもたらす人もいれば,
どんな時も行けば
幸福をもたらす人もいる
幸福に時空は無関係である,
とでも言わんばかりのことばです
幸福の超俗性は,古今東西
様々に語られてきました
一方で,ワイルドは
逆の極端の表現もしています
There are only two tragedies in life:
one is not getting what one wants,
and the other is getting it.
人生には二つの悲劇しかない
一つは欲しいものが手に入らないこと,
そしてもう一つはそれが手に入ることだ
持つものは持たれる
綱渡り師が
綱をたどたどしく渡るか落下するか,
その二択しかないように,
ワイルドは人生という悲劇を
描写しています
善悪二元論に対しても,
鋭い指摘でこう言い放っています
It is absurd to divide people
into good and bad.
People are either charming or tedious.
人々を善悪で分けるのは
馬鹿げている
みんな魅力的か退屈か
どちらかなんだから
こうした人生観の背景には,
透徹した人間観察がありました
The old believe everything,
the middle-aged suspect everything,
the young know everything.
老人は全てを信じ,
中年は全てを疑い,
若者は全てを知っている
知らぬが仏
我思う,故に我あり
信じるものは救われる
コンパクトな一言に
ワイルドはこの三つの要点
全てを盛り込んでいます
ワイルドの残したものの中に,
現代世界の日常的文脈でも
ハッとさせられるコメントがありました
It is a very sad thing
that nowadays there is
so little useless information.
とても悲しいことに,
最近では無駄な情報がほとんどない
全ての情報が
有用性・役に立つこと・意味
を志向するかのような現代社会
もの・カネが情報に置換された形の,
AI化した「新」資本主義社会
そこで淘汰されていくのは,
無意味性です
Society exists
only as a mental concept;
in the real world
there are only individuals.
社会は精神的概念としてのみ
存在する
現実世界では,
個人だけがいる
こうした意味で,
ワイルド流に野心を語ると
次のようになります
Our ambition should be
to rule ourselves,
the true kingdom for each one of us;
and true progress is to know more,
and be more, and to do more.
私たちの野心は自分自身を支配すること,
各人にとって真の王国であるべきだ
そして真の進歩とは
より多く知ることであり,
より多く存在することであり,
より多くのことをすることである
とは言え,ワイルドはアドバイスに関し
極めて「社会的」なコメントを
残しています
The only thing to do with good advice
is to pass it on.
It is never of any use to oneself.
良いアドバイスにすべき唯一のことは,
それを伝え続けることである
それは自分自身のためだけなら
決して役に立たない
よくある経済原理を連想させます
10人が10円ずつを持っていたとします
みんな持っているだけで使わなければ,
全部で100円の価値しかありません
ですが,それぞれが隣の人に
10円を渡して何かと交換できたら,
トータルで200円に価値が生まれます
その回転をn回すれば,
n倍の価値が生まれる…
ただし…
No man is rich enough
to buy back his past.
過去を買い戻せるほど
裕福な人はいない
他者の過去と死は
様々な文化活動の根本であり,
「お金」になり得ます
ですが,
個々人の過去と死は
資本主義的文脈に乗り得ません
極私的経験は
極私的価値しか持ち得ないからです
Memory... is the diary
that we all carry about with us.
記憶とは…
私たちみんなが携帯する日記だ
耽美主義とも称されたワイルドの世界では,
しばしば美が極上の価値として讃えられます
Beauty has as many meanings
as man has moods.
Beauty is the symbol of symbols.
Beauty reveals everything,
because it expresses nothing.
When it shows us itself,
it shows us the whole fiery-coloured world.
美は人の気分と同じだけの意味を持つ
美は象徴の中の象徴だ
美は全てを露わにする,
なぜなら無を表現するからだ
もし美が美自体を表すなら,
全て燃え盛る世界を表す
美は無を表現する
だから全てを露わにする
まるで
数学のゼロの概念を語るかのように,
ワイルドは美を位置づけています
座標軸の原点に美をすえると,
万物がそこから表されうるからです
Beauty is the only thing
that time cannot harm.
Philosophies fall away like sand,
creeds follow one another,
but what is beautiful is a joy
for all seasons,
a possession for all eternity.
美は時が経っても無傷でありうる
唯一のものだ
哲学は砂のごとく崩れ去り,
宗教はお互いを追うが,
美的なものは
どの季節でも喜ばしいものであり,
全き永遠に保たれ続けるものである
ここに,ワイルドならではの,
真・善・美における
美の優位性が高らかに宣言されています
そうした美の探求に
無比較に邁進した自身を描写するかのように,
美的イメージでこう述べていました
A dreamer is one
who can only find his way by moonlight,
and his punishment is
that he sees the dawn
before the rest of the world.
夢想家とは月光によってしか
自分の道を見つけられない人のことだ
そして彼の罰は世界の他の誰よりも早く
夜明けを見ることだ
それでは,このへんで