May.20.2018
サティア・ナデラ氏は,
1967年インド生まれの方で,
マイクロソフト社の現CEOです
一時期アップルやグーグルに押されて
低迷が危惧された同社ですが,
ナデラ氏がCEOになって,
株価は倍以上になったと言われます
「思いやり」(compassion)を,リーダーシップや
ビジネスで欠かせない要素に挙げられていることでも
知られています
脳性麻痺の御子息の存在が,
御自身の道徳的成長につながった
と語られておられます
息子の目を通して世界を見て,
彼に対する自分の責任を認識することで,
現在の私の大部分が形成されたと思う
小生は二十数年間
専らアップルのお世話になっているのですが,
ナデラ氏の存在はとても看過できません
御自身の経営哲学の端々に
東洋思想を浸透させようとなさっておられることなど,
非常に気になる存在です
筑波大学准教授の落合陽一氏は,
スマートフォンに代わる
「空間」に強いデヴァイスを
提供する可能性のある所は,
ナデラ氏率いるマイクロソフト社だろう
と仰っています
本日はこの,サティア・ナデラ氏の
名言のいくつかをご紹介したいと思います
(和文拙訳)
まずは,ネットビジネスについてのコメントからです
Longevity in this business is
about being able to reinvent yourself
or invent the future.
このビジネスにおける寿命は
およそ自分自身を再発明したり
未来を発明したり出来る能力にある
「未来を発明する」ことに言及するコメントは
よく見聞きしますが,
「自分自身を再発明する」ことに触れておられる点に
ナデラ氏の東洋的感性を感じます
従来の近代西洋的自我ですと,
自分は変えずに他者や環境を変える志向に
なりやすいものですから…
続きまして,
人と機械の関わりについてです
Ultimately,
it's not going to be about man versus machine.
It is going to be about man with machines.
究極的には,
人対機械についての話しではないだろう
機械を持った人についての話しだろう
ナデラ氏のヴィジョンでは,
AIなどの機械=コンピュータは
あくまで人の持つものであり,
人が持たれるものではない
ということになります
落合陽一氏も言及されていますが,
芸術をはじめとする創造的活動や
文章の読解・解釈はAIには出来ないと言われています
AIの基本原理が
データ収集・分析・確率予測だからです
ナデラ氏はそうした意味で「アイデア」こそが
人を人たらしめていると考えておられます
It's our own ability to have an idea
and go after the idea and make it happen.
That's what at the end of the day defines us.
それを現実化するのは私たち自身の能力だ
それこそが一日の終わりに
私たちが何者かを定義するものだ
ナデラ氏の「思いやり」経営は,
従来のテクノロジー一辺倒の風潮から
人間性へシフトすることに重きが置かれています
With all the abundance
we have of computers and computing,
what is scarce is human attention and time.
コンピュータやコンピュータ技術に関して
持ち合わせている豊かさにもかかわらず,
人間的な傾注と時間がほぼ不足している
端的に「心」と「時間」の無さに
警鐘を鳴らしておられます
「思いやり」の大切さは,近頃とみに
つぶやいておられることです(@DalaiLama)
因みに,一昨日のつぶやきは…
People inflict pain on others
in their selfish pursuit of happiness and satisfaction.
Yet true happiness comes from a sense
of brotherhood and sisterhood.
We need to cultivate a sense of universal responsibility
for one another and the planet we share.
人々は自己中心的な幸せや満足の追求をすることで,
他者に苦を与えます
しかし,真の幸せは
兄弟姉妹の感覚から生じるものです
私たちはお互いのため,
そして私たちが分かち合っている惑星地球のための
普遍的責任感を育む必要があります
日本ではヒステリックなほどに
「文系」「理系」の二元論が語られますが,
世界的に見ますとこれは異常な「社会通念」の様です
昨夜アメリカ人の知人デヴィッドと会食しました際,
ちょうどこの話題になりました
彼曰く,例えばアメリカでも,
医学部は日本の大学院に相当する
「メディカルスクール」ですが,
学部時代には文学専攻であった人が
医師を目指してそこに進学する,
というのはごく普通で,
むしろ尊重されるそうです
赤ワインに酔い気味のデヴィッドが
日本の過剰な文理二項対立の教育システムは
クレージーだと言っていました
医師を目指す人に学際性がなかったり,
芸術の話題ができないのは問題だ,とも…
アメリカではカルチャーを語れない医師や企業社長は
「文系的教養がなく知的ステータスに劣る人」
とのレッテルを貼られるそうです
ナデラ氏は,私たちの存在意義は
他者にとっての「エネルギーになること」
にあるとされます
The energy you create around you is
perhaps going to be the most important attribute -
in the long run, EQ trumps IQ.
Without being a source of energy for others,
very little can be accomplished.
あなたが周囲に及ぼすエネルギーは
おそらく最も重要な性質のものだ
結局,EQはIQに勝る
他の人たちにとってのエネルギー源とならなければ,
ほとんど何もなし得ない
EQ(感情指数)がIQ(知能指数)に勝る
まさに人の「心」がわかる「思いやり」こそが,
周囲にエネルギーを発することにつながり,
ことを成しうる土台となると仰っています
そうは言っても,
誰しも日によってアップダウンはあります
You renew yourself every day.
Sometimes you're successful,
sometimes you’re not,
but it's the average that counts.
あなたは毎日自分自身を更新している
上手くいくことも
いかないこともある
でも,大事なのはその平均値だ
アップダウンはもちろんあるので,
その振れ幅を自覚しつつも,結局は
どの程度の平均値を保っていかれるか…
非常に数学的客観性のあるコメントです
またナデラ氏は,ガンジーを彷彿とさせるかのように
「学び」の重要性を強調されます
Be passionate and bold.
Always keep learning.
You stop doing useful things if you don't learn.
情熱的で大胆であれ
つねに学び続けよ
学ばないなら,役に立つと思っても行動をやめよ
最後に,ナデラ氏のインド人としての
「知恵」の極意とも思われます至言がありました
You're trying to take something
that can be described in many, many sentences
and pages of prose,
but you can convert it into a couple lines of poetry
and you still get the essence,
so it’s that compression.
The best code is poetry.
散文で途轍もなく多くの文章やページを割いて
描写されうるものを得ようとしてしまうものだが,
それを二、三行の詩に変え,
しかも本質をつくことも出来る
そう,それがまさしく要約だ
最高のコードは詩である
それでは,このへんで