April.27.2018
ダライラマ14世は,1935年7月6日,
チベット北部アムド生まれの
チベット僧です
1959年,毛沢東率いる
インドのダラムサラに亡命,
以降現在に至るまで,同地を拠点に世界規模で
平和活動をされておられます
中国共産党は1949年からの30年間のみで,
およそ1,200,000人のチベット人の命を
奪ったとされています
その対立図式は未だ続いたままです
ダライラマ14世は,1989年には,
中国政府に対する非暴力・不服従による
チベット人弾圧に対する抗議と
本土返還要求を始めとする世界平和活動,および
チベットの宗教・文化の普及に対する貢献が
高く評価され,
ノーベル平和賞を授与されました
ダライラマ14世は
ガンジーをこよなく尊敬されておられ,
御自身の信条として「非暴力・不服従」を
継承し矜恃されておられます
本日はこの,ダライラマ14世の
名言をいくつかご紹介したいと思います
(和文拙訳)
まずは,「問題の解決」についてのコメントです
If a problem is fixable,
then there is no need to worry.
If it’s not fixable,
then there is no help in worrying.
There is no benefit in worrying whatsoever.
もし問題の解決が可能であるなら,
何も不安に思うことはありません
もし,問題の解決が不可能であるなら,
不安に思うだけ無駄です
不安は,何の役にも立ちません
ダライラマ14世のことばは,
常にクリアカットです
何らかの問題が生じている時に,
解決できるなら不安などいらない,
解決できないとしても不安は無駄だから,
不安は何の役にも立たない
チベット仏教は「論理」を徹底的に重視します
もはやその思考過程は,
宗教というよりは哲学と呼ぶべきだとさえ言われます
数学の確率で言います「場合分け」の発想が
至る所に見られます
そのきめ細やかな哲学性のエッセンスが
マンダラです
カーラチャクラ砂絵マンダラ
ダライラマのみが行える儀式で用いられ,
終了時には川に流されます
ダライラマ法王14世日本公式サイトより
http://www.dalailamajapanese.com/teachings/kalachakra-initiations
西洋のノーベル賞級の学者,
たとえば「オートポイエーシス(自己組織化)」
で知られます生物学者フランシスコ・ヴァレラは,
晩年にダラムサラやネパールなどで
チベット仏教研究をし,
チベット仏教と科学者との対話を通じて
心の科学の発展をめざす団体の設立に関わりました
とりわけ,理系の最先端の科学者に
その論理性は高く評価されます
ダライラマ14世は時代の流れに非常に敏感な方です
その一例として,Twitterでつぶやいておられもします
(@DalaiLama)
本日朝の時点でのフォロワー数は,18,551,259人です!
最近つぶやかれた2つの例を見てみましょう
4月2日
Our real enemies and the enemies of humanity
are negative emotions like anger and hatred.
Indeed, people who are dominated
by powerful negative emotions
should be objects of our compassion.
我々の本当の敵そして人間性の敵は
怒りや憎しみといった否定的感情です
実際強い否定的感情によって支配されている人々は,
私たちの慈悲の対象となるべきです
内なる敵こそが真の敵
そしてその敵を調伏することこそが,
真の世界平和につながると考えておられます
4月16日
Compassion reduces our fear,
boosts our confidence,
and opens us to inner strength.
By reducing distrust,
it opens us to others and brings us
a sense of connections with them
and a sense of purpose and meaning in life.
慈悲は私たちの恐れを減らし
自信を後押ししてくれます
そして内なる力に対して私たちを開いてくれます
不信感を減らすことで
他者に対して私たちは開くことができ,
彼らとのつながりの感覚と
人生の目的と意味の感覚を持てます
チベット仏教哲学の根本概念に
「知恵と慈悲」があります
チベット仏教僧が身に付けています,
外側のえんじ色の衣が慈悲を,
内側の黄色い衣が知恵を表しています
繰り返し繰り返し,
現代の教育に足りないのは慈悲だと仰っています
ダライラマ14世は,
エスプリの利いたユーモアでも知られています
If you think you are too small to make a difference,
try sleeping with a mosquito
自分の存在は小さすぎて大したものではない
と感じているなら,蚊と一緒に眠ってみなさい
蚊と寝るんですか…⁉︎
また,「ルール」については…
Know the rules well,
so you can break them effectively
ルールをよく学びなさい,
適切にルールを破る方法を見つけるためにです
なんと柔軟でアバンギャルドな発想でしょう!
「法は破られるためにある」ではなく,
「適切にルールを破る方法」と,
さらりと語られています
次元も内容も異なる話しですが,
超一流の芸術家たちが,口を揃えて
「自分にあったら,自分を潰せ」という考え方にも,
通じるものがあります
来日されると必ず飲まれるのが紅茶花伝
中国政府に「悪魔」呼ばわりされた時,
私に角でも生えてるのですか,と返されました…
続きまして,「成功」についてのコメントです
Take into account that great love
and great achievements involve great risk.
大いなる愛と大いなる成功には,
大いなる危険が伴うことを忘れないように
リスク無くして自由はないように,
愛も成功も危険の大きさに比例すると…
そしてその「危険」を,
より具体的にこう述べられています
Judge your success
by what you had to give up
in order to get it.
成功を得るために
あなたが手放さなくてはならなかったもので
あなたの成功を判断しなさい
「手放さなくてはならなかったもの」とはまさしく,
仏教で言います「執着」です
過去の自分のこだわりを捨て,
その自由から得られるものこそが真の成功である
まるで数学の如きクリアな論理です
ですが,ものごとは早々
「成功」するものではありません
そうしたときにでもダライラマ14世のメッセージは,
とことんポジティブなものです
Remember
that sometimes not getting what you want
is a wonderful stroke of luck.
あなたが欲しいものを得られないということは,
時としてすばらしい幸運の一撃あることを
忘れないように
願いが叶っていない時でさえも,
「すばらしい幸運の一撃」と
仰るのです
朝目覚めた時には…
Every day, think as you wake up,
today I am fortunate to be alive,
I have a precious human life,
I am not going to waste it.
I am going to use all my energies
to develop myself,
to expand my heart out to others.
毎朝,目覚めた時こう考えること
今日も生きていて私は幸運だ,
私は尊い人生を送っている,
決して無駄にしないようにしよう
自分自身を成長させるため,
周りの人たちに私の心を広げるために,
持てるすべてのエネルギーを費やそう,と
自分のためだけでもなく,
自分のためだけでもなく,
周りの人たちの為だけでもなく,
自分と周りの人たち双方同時に意義ある,
役立つエネルギーの使い方,
これこそがダライラマ14世の仰る「慈悲」の実践です
No matter what people call you,
you are just who you are.
Keep to this truth.
You must ask yourself
how is it you want to live your life.
We live and we die,
this is the truth that we can only face alone.
No one can help us, not even the Buddha.
So consider carefully,
what prevents you from living
the way you want to live your life?
人があなたを何と呼ぼうとも,
あなたはあなたでしかありません
この真実を忘れぬよう
どんな人生を歩みたいのか自問自答しなさい
人は生き,そして死ぬ
これは一人で立ち向かわなければならない真理です
誰一人として,たとえ仏陀であろうとも
あなたに手を差し伸べることはできません
さあ,じっくりと考えてください
あなたが生きたいように生きようとする道を
邪魔するものは何ですか?
オバマさんとも仲良く…
ダライラマ14世は,
旧来の「寺院」というものの在り方に対し,
非常に疑問を抱かれています
チベット仏教哲学の本質を学ぶために大切なのは,
ひとりひとりのあり方であり,
制度としての寺院ではない,と
仏陀は「私を疑え」と仰いました
疑って,疑って,疑い続け,
それでも疑えない何かがあって初めて,
それを自分の宝として信じなさい
「懐疑の炎」こそが真理にたどり着く唯一の道である
仏陀のおられた頃から二千数百年ほど経ちましたが,
何故,世に言う「リーダー」たちは
「私を信じよ」としか言えず,
仏陀のように理性的発言が出来ないのでしょうか?
理由は至って簡単です
心の底では自信がないからです
そして同類の追従者を募り催眠にかけることでしか,
自らの「能力」を発揮できないからです
ダライラマ14世の志向される未来の仏教は,
直通するものに違いないと思われます
数年前来日されたある時,ダライラマ14世は
日本の僧侶たちと会議を行われました
その記念撮影の際,隣にいた「偉いお坊さん」が
数珠を落としてしまいました
ですが,そのお坊さんは岩のごとく動かず,
慌てた弟子が走りよって拾い上げるのを,
じっと待っていたそうです
そのことに対し,法王は痛烈に批判されました
かがんで拾うことすら出来ないのですかね,と…
日本でもチベットでも,
形骸化し腐敗した僧侶もお寺も,
たくさんおわすようです
未来に向けたダライラマ14世の
「来るべき仏教寺院」は,
なんと,「今・ここ」にあるのです
This is my simple religion.
No need for temples.
No need for complicated philosophy.
Your own mind, your own heart is the temple.
Your philosophy is simple kindness.
これが私のシンプルな宗教です
寺など必要ではありません
複雑な哲学も必要ではありません
あなた自身の頭と心があなたの寺なのです
あなたの哲学とはシンプルな優しさです
それでは,このへんで