tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:人生における主たる危険は,余りにも用心しすぎてしまうことだ(アドラー)

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                                                 July.11.2018 

 

ルフレッド・アドラーは,

1870年オーストリア生まれの

精神科医・心理学者です

 

西洋ではフロイトユングと並んで,

現代心理学の3大巨頭と称されています

 

当ブログではこれまで二回,

アドラーを取り上げさせて頂きましたが,

どちらも非常に多く関心を寄せて頂き,

アドラー心理学には,やはり,

現代日本に広く響く何かがあるのかな

と感じています

 

かつて知られてきました心理学理論と

決定的に違うところは,

過去志向ではなく未来志向で,

たとえ今の今まで何があったとしても, 

たった今から自分が思い描く未来を

作っていけるはずだと考える点です

 

個人的・社会的に

過去がどれだけ暗くても,

この瞬間から新しく明るい未来を

創造していかれる,

あるいはそうしていきたいという

切なる思いこそ,

アドラー心理学がこれほどの人々の

支持を得ている理由なのかも知れません

 

前回アドラーの記事を

書かせて頂きましてから

1ヶ月が経ちましたので,

本日もこの,アドラー

名言のいくつかをご紹介したいと思います

和文拙訳)

tsuputon7.hatenablog.com

tsuputon7.hatenablog.com

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まずはアドラーが,

「隣人愛」について語った

コメントからです

 

There is a law

that man should love his neighbor

as himself.

In a few hundred years

it should be as natural to mankind

as breathing or the upright gait;

but if he does not learn

it he must perish.

人は自分自身と同じように

隣人を愛するべきだという掟がある

それは二,三百年後には人類にとって,

呼吸することや

直立歩行することと同じくらい

自然なことになるはずだ

しかし,もしそれを学ばない人がいたら,

その人は滅びるに違いない

 

アドラーが活躍してから

約1世紀が経ちますが,

「隣人愛」とは程遠い世相が否めません…

ですがアドラーは,彼の時代からしまして

「二、三百年後」,

つまり現在からしますと,

100年後か200年後に,

それは呼吸や直立歩行と同じ位

自然になるはずだと語っていました

しかも隣人愛を学ばない人は,

滅びてしまうに違いないとまで… 

 

過去のトラウマの

現在に対する影響の必然性を完全否定し,

たった今から未来は

自分で作り出せるのだと,

徹底的に目的志向を貫いた

アドラーならではの人類に対する

期待も含めたコメントだったと思われます

 

続きまして,心理学を始めとします

「精神の科学」について… 

 

The science of the mind can only have

for its proper goal the understanding

of human nature by every human being,

and through its use,

brings peace to every human soul.

精神の科学はその適切なゴールとしては

全ての人が人間の本性について

理解できること以外にない

そしてそれを使えば,

全ての人の魂に平和がもたらされる

 

心理学の目的は,

万人に人間の本姓について

理解してもらうこと

 

アドラーのその意識は端的明瞭でした

そしてそれにより,

「全ての人の魂に平和がもたらされる」

ことを願っていたのです

 

アドラー心理学は別名

「個人心理学」と言われます

ですが,

その「個人」のアイデンティティーは

私たちの皮膚に覆われた,

個々の身体レベルにとどまりません

私たち自身が家族・地域社会・国家

そして地球,果ては宇宙にまでつながり,

一体化した存在であると

アドラーは考えました

「意識」がどこまで広げられるかが,

その認知レベルを左右するとも言いました 

ある意味でこれは,

 

世界はあなたの心のあらわれである

 

とする,

仏教心理学とも言われます「唯識論」に

極めて近い発想だったと思われます

 

 

tsuputon7.hatenablog.com

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つぎに,社会や教育について,

アドラーはこう述べています

 

The test of one's behavior pattern is

their relationship to society,

relationship to work

and relationship to sex.

人の行動パターンの基準は,

その人の社会との関係,

仕事との関係,

そして性との関係である

 

社会,仕事,性,

すべて個々人の生活に根付いた

重要なファクターです

確かに私たちの日常は,

これら三要素に

大きくその行動左右されている

と言っても過言ではありません

 

また,教育については…

 

The educator must believe

in the potential power of his pupil,

and he must employ all his art

in seeking to bring his pupil

to experience this power.

教育者は生徒の潜在能力を

信じなくてはならない

そして,

生徒にこの力を

経験できるようにするべく

模索する時,

自分の持つ全ての力を

使わなくてはならない

 

これはあの

モンテッソーリのメッセージと同一です

 

生徒の潜在能力を信じること,

それが教師の最大の役割である

そしてその能力を引き出すことによって,

本人に自分のポテンシャルに気づかせ,

自信を持たせ,

最終的な結果につなげていく

それが理想の教育だと

アドラーも考えていたようです

 

tsuputon7.hatenablog.com

 

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アドラーは「真実と嘘」について,

次のように述べています 

 

The truth is often

a terrible weapon of aggression.

It is possible to lie,

and even to murder, with the truth.

真実が攻撃のための

恐ろしい武器であることが

よくある

真実を使って嘘をついたり,

人をあやめることさえ可能だからだ

 

ユング心理学者・河合隼雄先生は,

「嘘は常備薬、真実は劇薬」という

タイトルのコラムを,

名著『心の処方箋』に書いておられました

ものごとの真実ほど実は

凶暴な存在はない,と

アドラーも考えていたようです

 

tsuputon7.hatenablog.com

 

そうした目線から,

アドラーは嘘について,

次のような鋭いコメント残しています

 

A lie would have no sense

unless the truth were felt dangerous.

嘘は真実が危険だと感じられない限りは,

意味のないものだろう

 

安全な真実があるところに,

わざわざ嘘をつく必要は

ありませんから…

 

真実を知られると

危険な状態を引き起こす

と分かった時に,

私たちは嘘をついてしまいます 

 

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ただそうした心理は

危険に対する怯えから

生まれるものであって,

アドラー心理学

キーワードの1つでもあります「勇気」を

適切に発動できれば,

なにがしかわざわざ嘘をつかなくても,

リアルにうまく状況に対処できるはずです

 

と言いますのも…

 

Meanings are not determined

by situations,

but we determine ourselves

by the meanings we give to situations.

意味は状況によって

決定されるのではなく,

私たちは状況に与える意味によって

自分自身を決定してしまうのだ

 

ただその場合に「嫌われる勇気」が

必要なのでしょうけれども… 

 

The chief danger in life is

that you may take too many precautions.

人生における主たる危険は,

余りにも用心しすぎてしまうことだ

 

用心も過ぎれば逆説的に危険と化す…

アドラーの思索の深みがうかがえる

秀逸なフレーズです

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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