tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:生まれつきの才能などない。あるのはプレッシャーだ。(アドラー)

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                                               June.10.2018

 

 

ルフレッド・アドラーは,

1870年オーストリア生まれの

精神科医・心理学者です

 

西洋ではフロイトユングと並んで,

現代心理学の3大巨頭と称されています

 

その端的明瞭な語り口は,

フロイトともユングとも違った切れ味で,

個人的には誇大解釈かも知れませんが,

禅僧のような鋭さを感じます

 

学生時代,小生は有志を募り,

芸術・哲学・心理学・物理学・医学について

自由に語り合うサークルもどきの集まりを

主催しておりました

そこで,ある時

知人のユング心理学者を自宅に招き,

夜通し意見交換したことがありました

その時のテーマは心理的外傷,

いわゆる「トラウマ」は克服できるかどうかでした

 

小生は生れながら脳天気な性格ですので,

考えて考え抜いた末に

同じ感情をぶり返さなくなったら,

それはもう「心の傷」ではなく

過去の一場面でしかないのでは,

という考え方だったのですが,

彼はトラウマはトラウマでしかなく,

芸術療法などで癒せても全て消すことはできない,

と言い続けていました

 

体の傷は完治できるものも多いのに,

心の傷は何故全部残るの…?

 

当時はアドラーについて

あまり知っていなかったのですが,

その後知るようになってから,

全部とは言いませんが,

かなりあの時言いたかったことを

アドラーが言ってくれていたとわかり,

感激しました

 

ユングアドラーの優劣をつけるつもりなど

毛頭ございませんでしたが,

アドラーの発想の斬新さは刮目ものでした

 

本日はこの,

アドラーの名言のいくつかを

ご紹介したいと思います

 

以前もアドラーの記事を

書かせて頂いたことがありますが,

今回は前回取り上げられませんでした名言を

ピックアウト致しました

和文拙訳)

tsuputon7.hatenablog.com

アルフレッド・アドラー - Wikipedia参照  

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アドラーは一時期

フロイトと共同研究していましたが,

どうしてもフロイトのトラウマ理論を受け入れられず,

訣別しました

過去の経験による心理的な傷が

現在のその人の行動を無意識に規定するとする

フロイトの考え方を飲めなかったのです

 

まずは,この点について

アドラーの考えがシンプルに表れています

フレーズをいくつか挙げさせて頂きます

 

We do not suffer

from the shock of our experiences,

so-called trauma -

but we make out of them

just what suits our purposes.

私たちは経験によるショック,

いわゆるトラウマに苦しむのではなく,

自分の目的にまさしく合うものを

それらの経験から作り出すのだ

アドラーの心理学は徹底した目的志向です

過去の記憶の現在の解釈は

未来の目的に合わせて私たちがするものだとします

 

Every individual acts and suffers

in accordance with his peculiar teleology,

which has all the inevitability of fate,

so long as he does not understand it.

あらゆる個人は

自分自身の特殊な目的論に従って行動し苦しむ

というのもそれは,人が理解しない限り,

避けられない運命全てを持ち合わせているからだ

 

未来の目的が何らかしらあるからこそ,

それが行動原理となる…

 

まるでフロイトと正反対です

アドラーにとっては

今この瞬間から未来に向かう時間ベクトルが

すべてであり,

過去から現在に至るベクトルが延長されて

未来を規定するとは考えないのです

ですから…

 

No experience is a cause of success or failure.

どんな経験も成功もしくは失敗の原因ではない

 

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また…

 

The neurotic is nailed to the cross of his fiction.

不安症の人は自分の物語という十字架に

はりつけられている

これは原始仏教で言います自業自得,

つまり自分が行ったことによって

自分で現在の状態を生んでいる,

とする考え方にそっくりです

 

tsuputon7.hatenablog.com

 

しかもアドラーは,

人はそうした事態を自ら「選んで」いると考えます

 

Meanings are not determined by situations,

but we determine ourselves

by the meanings we give to situations.

意味が状況によって決定されるのではなく,

私たちが状況に与える意味によって,

私たちが自分自身を決定するのだ

  

状況そのものに意味はありません

意味を与えるのは何を隠そう私たち自身であり,

その意味づけがこそが自分を規定する,

つまり,今現在をどう捉えるか次第で,

自分に起こっていることと

これから起こるだろうことを決定している,

とするのです 

 

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 アドラーの心理学のもう一つ大きな鍵概念に,

「劣等感」があります

ユングが「劣等コンプレックス」

を論じていたことはよく知られていますが,

ここでもアドラーが違いますのは,

過去のトラウマからではなく,

今現在,自分を他者と比較し劣っている感覚,

と考える点です

ですが,この「劣等感」は人間誰しもが

避けられないものだとしています

 

To be a human being means

to possess a feeling of inferiority

which constantly presses

towards its own conquest.

The greater the feeling of inferiority

that has been experienced,

the more powerful is the urge for conquest

and the more violent the emotional agitation.

人間であるとは,

絶えず克服するよう迫って来る劣等感を

持つということである

経験されてきた劣等感が大きければ大きいほど,

それを克服する切迫感は強くなり,

感情的なあおりが激しさを増す

 

そして「劣等感」は即,「優等感」を生みます

アドラーは「付き合いづらい人」への対処法を

次のように述べています

 

A simple rule in dealing with

those who are hard to get along with is

to remember that this person is striving

to assert his superiority;

and you must deal with him

from that point of view.

付き合いづらい人に対処する時の簡単なルールは,

この人は自分の優位性を主張しようともがいてるのだ

ということを覚えておくことだ

あなたはその観点から

その人に対処しなくてはならない

 

得てしてこういうタイプの方は,

しょっちゅう機嫌が悪いものですが…

 

We must interpret a bad temper

as a sign of inferiority.

私たちは機嫌の悪さは

劣等感の印だと解釈しなくてはならない

 

なぜなら,

 

Exaggerated sensitiveness is an expression

of the feeling of inferiority.

誇張された敏感さは

劣等感の表現である

 

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そして「劣等感」が個人を超え社会レベル,

果ては国家レベルになった時の結末,

戦争につきましては…

 

Our modern states are preparing for war

without even knowing the future enemy.

私たちの近代国家は

未来の敵を知ることさえなく戦争の準備をしている

 

国家レベルで

「劣等感」を刺激する対象国がありますと,

「優等感」を求めて,その国は戦争するのです

「ストロング」が口癖の方とか…

 

War is organized murder and torture

against our brothers.

戦争とは私たちの兄弟に対する

組織化された殺戮と拷問である

 

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ともかくアドラーにとって,

人が幸せに至るポイントは,

今この瞬間に自分の問題と直面する勇気でした

 

My difficulties belong to me!

私の問題は自分のものだ!

 

得てして被害妄想に苛まれますと,

自分の問題は他人のものだと思いたくなります

 

ですがそもそも,

いま・ここに自分がいるからこそ,

その問題は起きているのです

問題の「場」は自分です

だからこそ,

その問題を解くカギは

過去のトラウマでも未来の不安でもなく,

現在の自分でしかないとアドラーは言います

彼にとって,

それは「無意識の彼方」ではないのです

 

Man knows much more than he understands.

人は自分が理解しているより

ずっと多くのことを知っている

 

ですから,

誰しもに無限の可能性があると言うのです

 

There is no such thing as talent.

There is pressure.

生まれつきの才能などない

あるのはプレッシャーだ

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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