tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を:年々にわが悲しみは深くして いよよ華やぐいのちなりけり(岡本かの子)

f:id:tsuputon7:20180712075009j:plain

 

                                                July.12.2018

 

 

岡本かの子さんは,1889年

現在の東京都港区青山生まれの

小説家・歌人・仏教研究家です

ご主人は漫画家岡本一平氏,

そしてご長男が岡本太郎氏です

 

私生活でご主人と太郎氏と,

ご自分の崇拝者であった学生で

愛人の青年と一緒に同居する,

という奇想天外な生活を送られたことも

よく知られています

 

家庭環境自体が,

芸術に源泉である狂気の発動です

 

また幼児期に太郎氏を柱にくくり付け,

ご本人は小説の執筆に専念し続け,

何時間も泣き叫ぶ太郎氏をほったらかす

という激しさもお持ちでした

ですが太郎氏にかかりますと,

このエピソードでさえ

童女のような母親」として,

その背中をじっと見つめていた

と回顧されています

 

芸術家・岡本太郎があったのは

母かの子さんがいらっしゃったからだ

と,太郎氏ご本人も様々な機会で

述べておられました

 

 

本日はその影響の一端を探るべく,

岡本かの子さんの

名言のいくつかをご紹介したいと思います

(英文拙訳)

岡本かの子 - Wikipedia参照

f:id:tsuputon7:20180712075046j:plain

左から,一平,太郎,かの子

 

 

太郎氏が18歳の時に,一平とかの子さんは

息子を絵の勉強のためパリの寄宿舎に預け,

お二人でロンドン・ベルリン・アメリカの

世界外遊に行かれました

 

その際等に手紙のやりとりをされたものを

まとめた本が,

『母の手紙』として出版されています

 

小生は今を去ること二十年ほど前に,

東京神保町の古本屋さんで

偶然発見し手に入れたのですが,

家に持ち帰って

おもむろに扉を開けましたら,

なんと太郎氏のサイン本でした…

 

f:id:tsuputon7:20180712083030j:plain

f:id:tsuputon7:20180712083103j:plain

 

 

それではまず,

かの子さんが太郎氏に

手紙で書いたメッセージからです

 

お前が迷う気持ちはよくわかる。

だけどあなたは絵描きになりなさい。

他の自分に絶望して絵に専念なさい。

I can understand or your irresolution,

but you have to be a painter.

Be disappointed at the rest of yourself

and devote yourself to pictures.

 

逆に岡本太郎が画家になるかどうかを

迷っていた時期があった

ということです!

 

そして…

 

お前の絵を最初に評価するのは、

お前しかいない。

人の評価に身を委ねてはダメ。

There is no one but you

that evaluates your picture first.

It’s not good to commit yourself

to the evaluations of people

 

このコメント…

太郎氏が,

 

評価なんて,一切関係なし!

 

と仰っておられたことを

思い出さずにはいられません

 

さらに…

 

人生は悟るのが目的ではないです。

生きるのです。

人間は動物ですから。

It is not the purpose of life to realize;

Just live,

because you are an animal.

 

なんと,

このことばは全く太郎氏オリジナルの

ご発言かと思っていましたが,

実はかの子さんだったのです

tsuputon7.hatenablog.com

f:id:tsuputon7:20180712085932j:plain

 

  

かの子さんは母親でありながら,

ナルシシストである自分に

苦しんでおられました

その中でも,息子に対する思いは

手紙で伝え続けていました

 

さらばお前の新鮮な自由な生活のなかで

幸福におくらしなさい。

Then, live happily in your fresh free life.

 

ただ太郎氏に対し,

「ツボ」となる点は

ズバリと押されていたようです

 

とにかく

ピカソの精神がわかれば、

あとは実行があるばかりです。

Anyway,

once you understand

the spirit of Picasso,

then all you have to do is carry it out.

 

ですが,どこか太郎は太郎,自分は自分,

という,何と言うのでしょうか,

奇妙な母子関係が見え隠れしています

 

お前のこの間くれた手紙

すばらしいよ。

私は芸術家だから

芸術の神にぬかずけばいいんだよ。

The letter you sent me last time

was fantastic.

I am an artist,

so I have only to kneel down

to the god of art.

 

太郎さんの手紙の内容を褒めた直後に,

突如文脈が垂直に飛躍して,

ご自分の芸術家としての

アイデンティティを語っておられます… 

 

f:id:tsuputon7:20180712090053j:plain

 

 

かの子さんは川端康成氏の指導のもと,

小説の腕を磨いていきましたが,

本格的な執筆を続けられたのは

晩年期の数年間でした

 

楽しく公平に人間、

あるいは世間を見て行く。

そして自分の情操思想を

とり扱って生きて行く。

その余は何をかたくらみ希求しよう。

To keep watching people or the world

joyfully or fairly.

And to live dealing with my emotions;

I will attempt and seek for something

during the rest.

 

この「たくらみ」は,

小説家としての成功だったのでしょうか… 

 

かの子さんらしい

芸術家としての心がけを示すフレーズが

ありました

 

はじめからアテのないことを

しているんだから、

迷うことを恐れず

ひたすら手を動かしながら考えることよ。

From the beginning, I have been doing

what isn’t guaranteed,

so I have only not to be afraid of straying

and just think by moving my hand. 

 

何気ないディーテールではありますが,

通常「迷い」と「恐れ」は類義語に近く

扱われるところ,

かの子さんは

「迷うことを恐れず」という表現で

「勇気」を宣言されています

そして「体を動かしながら考える」と

仰っておられるところなどは,

アインシュタインの,

 

私は筋肉で考える

 

ということばを想起させます

tsuputon7.hatenablog.com

f:id:tsuputon7:20180712090135j:plain

 

 

こう見てきますと,

岡本太郎があったのはやはり

岡本かの子の存在があったからこそだ

ということがよくわかります

いえ,それ以上に,

ミーム(文化的遺伝子)までもが母子間で

完全に伝達されていることが目に見えます

 

不遇や孤独を恐れては、

本当に欲しいものは手に入らない。

As long as you are afraid of

your misfortune or solitude,

you cannot to get what you do want.

 

太郎氏は,次のような題名の本を

出版されています… 

f:id:tsuputon7:20180712085251j:plain

 

大正から昭和初期にかけ,

比類なき生活を共にされていた岡本一家は,

その作品の中でも当然の如く,

比類なきミームを残していました

 

年々にわが悲しみは深くして

いよよ華やぐいのちなりけり

The deeper my sorrow gets year by year,

the more gorgeous my life becomes.

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

f:id:tsuputon7:20180712090300j:plain