July.15.2018
河合隼雄先生は,
1928年,兵庫県生まれの心理学者です
日本に初めてユング心理学を紹介し,
箱庭療法を数多く実践して
世に広めた方です
主に京都大学で活躍されていましたが,
晩年は国際日本文化センターや
文化庁長官を務められるなど,
他分野でも精力的な活動を
続けておられました
英語を日本語の公用語にしようと提案され
かなり本腰で取り組まれていました
小生はこれまで,何らかしら
行き詰まりを感じたりモヤモヤした時,
幾度となく
河合先生のことばにふれ,感銘を受け,
救われた経験があります
本日はこの,河合隼雄先生の
名言のいくつかをご紹介したいと思います
(英文拙訳)
まずは,河合先生流の「やわらか頭」
のススメからです
人間、
そう簡単に自分の生き方は
こうだと決めつけたり、
型にハメたりしないほうが、人生、
豊かなものになるのではないでしょうか
We human beings can make
our lives richer, deciding our way of life
as this or that easily,
or putting it into some form.
自分の信念や考え方を
しっかりと持つことは大事です
確固たるビジョンを持って
ハードワークをして初めて,
人の役に立ち自分も充実することが
できるのだと思います
ですが,それが裏目に出てしまい,
「意固地」にまでなってしまうと,
かえって悪い状況を作ってしまう
という場合も多々あり得ます
河合先生は自分の生き方の決定
などについては,
焦る必要はないと仰っておられます
速断せずに期待しながら
見ていることによって、
今までわからなかった可能性が
明らかになる。
Not making a sudden decision
and expecting watching things
will reveal the possibility
that we haven’t found so far.
自分で「分かっている」ことは,
実はほんの一部でしかなく,
「分からないこと」が大半を占めている中で
私たちは生活しているという考えが,
河合先生の御専門であられた
ユング心理学では大前提となっています
いわゆる,無意識です
気付きたくても,
にわかには気づけない自分の中の声…
その声を聴くには,
大抵時間がかかるのだと
河合先生は
食べ物の心配のない日本などの
先進諸国に触れた上で,
次のように語っておられます
物で溢れた豊かな国は、
その上を行かなくては
幸せにはなれません。
心を遣って自分なりの幸せを
探さなくてはならない。
The richter country full of things
can’t be happy
unless she goes beyond it;
they have to find out
their own happiness
by using their minds.
物の少ない国々では,
物が得られるだけで
幸せを感じられます
場合によっては,
生活必需品を得るだけでも…
ですが日本などですと,
「より良い物」が得られないと
幸せを感じず,それが得られても,
「さらに良い物を」となってしまいます
資本主義の病です
ですから私たちは「幸せ探し」を
しなくてはならない,と
河合先生は仰るのです
世界の国々を見ても、
貧しい国は活気があって当たり前です。
食べものを確保するのに必死ですから、
自ずと活気が生まれてくる。
It’s natural
that you find poor countries vigorous,
looking at the rest of the world,
because they’re desperate to get food,
and have energy spontaneously.
百歳を超えても現役医師として活躍された
日野原重明先生が,
現代日本の若者には,
ものはたくさん持っていても,
「心のホームレス」状態の人が沢山いると,
ご著書で述べておられました
Stay hungry.
Stay foolish.
ハングリーであれ
愚かであれ
と言った,ジョブズを思い出します
河合先生曰く,
人間誰しも,
お釈迦様の様に悟りを
開いたのでなければ,
必ずコンプレックスを持っている
とのことでした
要はそのコンプレックスと
どう付き合っているかで,
その人の気質が決まってくるのだと
そこで先生は,
人間関係上における
コンプレックスの積極的役割について,
次の様に述べておられます
おのおのの人が
自分の心の内部にあるコンプレックスを
開発してゆく代わりに、
それを補う人と結びつくことによって、
手っ取り早く相補性を獲得する。
Each person can acquire
the compensation easily by connecting
with the partner
who can compensate for the complex
within the person’s mind,
instead of developing it.
そして,
無理のない人づき合いも大事だと…
人づきあいを大切にするというと、
すぐに「自分を殺して」
とまで考えがちになる。
しかし、そんなに自分を殺しても、
人間はそれほど簡単に死ぬものではない。
When it comes to cherishing relationship,
at once we are prone to think
as much as ‘to kill ourselves’;
however, if you try to,
you’re hard to die so easily.
なんと切れ味鋭いユーモアでしょう!
とはいえ,凹んでしまう時など,
どんなに強がっている人にだってあります
そうした時こそ,心の成長のチャンスだと
河合先生は考えられました
思い屈するような心萎える時間こそ、
心がしなっている状態で、
重い雪をスーッと
滑り落としているときなんだから、
それを肯定し自分を認める。
At the very time
when you give in to something
and are discouraged,
you should affirm it and admit yourself,
because your mind is flexible,
and letting the heavy snow fall smoothly.
まさしく,心の雪解けです
たとえば教育の世界ですと,
家庭であれ学校であれ,
ほぼ確実に「問題児」はいます
河合先生は
そうした子たちの中にでさえ,
逆にこちらを成長させてくれる
何かがあると考えられます
問題児というのは、
われわれに「問題」を
提出してくれているのだ。
The problem child is submitting
a ‘problem’ to us.
親や教師の側が凝り固まった信念などを
どんな時にも子どもたちに
押し付けようとするのは,
むしろ怠惰なのかもしれません
自分の根っこをぐらつかせずに
他人を理解しようとするのなど、
甘すぎるのである。
It’s too lazy to try to understand others
without shaking our own roots.
ある意味,
他人を理解しようとする作業は,
こちらのアイデンティティを揺さぶられる,
いわば命がけの仕事でもあります
生きていますと,
いろいろな方々に出会います
そしてさまざまな思惑が交差して,
時に理解し合え,時に対立して,
人間関係の化学反応が起きます
その反応結果は,
実験しないことには分かり得ません
人間心理の内奥に潜水し続けられた
河合先生のメッセージを見るにつけ,
たとえどんなに嫌なことがあったとしても,
無駄な経験などは全くない,
と再確認させて頂けます
ゆっくりと寄り道をすればいい。
道草の途中には、
きっと小さな幸せが落ちています。
You may take your time
going around slowly;
on your way in your rest time,
you are sure to find a little happiness
on the ground.
それでは,このへんで