tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:世界は友情が円を描けるように,丸い(テイヤール・ド・シャルダン)

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                             Nov.4.2018

 

テイヤール・ド・シャルダンは,

1881年フランス生まれの

キリスト教イエズス会士です

 

主著『現象としての人間』では,

創世記の創造論の立場を棄て,

独自のキリスト教的進化論を

提唱しました

 

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20世紀の世界の

哲学・思想界に多大なる影響を

与えたと言われています

 

とりわけ鉱物から人類に至るまでの

意識レベルの進化が,

「オメガポイント」と呼ぶ

悟りの境地=最終レベルにまで

進化していくことが,

存在しているものの歩むべき

ベクトルであると捉えていました

 

本日はこの,

テイヤール・ド・シャルダン

名言のいくつかをご紹介したいと思います

和文拙訳)

ピエール・テイヤール・ド・シャルダン - Wikipedia参照

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まずは,近年日本でもよく耳にします

キーワードに関するコメントです

  

We are not human beings

having a spiritual experience.

We are spiritual beings

having a human experience.

私たちはスピリチュアルな体験をする

人間なのではありません

人間的な経験をする

スピリチュアルな存在なのです

いわゆる世間一般に言います

「スピリチュアル」は,

どうしてもオカルト的な含みが

ありすぎるのですが,

それは俗→聖の目線に過ぎません

 

シャルダンからしますと, 

元来万人が聖なる存在であり,

その聖性が仮に肉体に宿っている,

つまり聖→俗のベクトルで見るべきだ

と言うのです

 

そうした意味で,

私たちの能力に限界はありません

 

It is our duty as men and women

to proceed as though the limits

of our abilities do not exist.

私たちの人としての義務は,

まるで能力に限界など

存在しないかのように進むことです

そこで,その聖性を

シャルダンは「宇宙意識」と

命名しました

 

I give the name of cosmic sense

to the more or less confused affinity

that binds us psychologically

to the All which envelops us.

私は宇宙意識という名を,

私たちを包み込んでいる森羅万象に

私たちを心理的に結びつけている,

多かれ少なかれ

混ざり合った親密さに与える

 

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シャルダンは,

「微笑み」の強さについて,

次の様に述べています

 

Nothing can resist the person

who smiles at life - I don't mean

the ironic and disillusioned smile

of my grandfather,

but the triumphant smile of the person

who knows that he will survive,

or that at least he will be saved

by what seems to be destroying him.

何ものも生に微笑みかける人には

抵抗できない

私の祖父の,あの皮肉めいて幻滅した

微笑みのことではなく,

自分を滅ぼすかに思えるものから

生きながらえ,また少なくとも

救われるのだと分かった人の,

勝利の微笑みのことである

自分に打ち勝った人,

まさしくブッダも言及した人の笑みです

 

tsuputon7.hatenablog.com

 

現にシャルダンは東洋思想にも

造詣の深い人でした

 

The incomparable greatness

of the religions of the East

lies in their having been

second to none in vibrating

with the passion for unity.

東洋の宗教の無比なる偉大さは,

他の何ものにも劣らず

一体感を希求する情熱で

振動している点にある

 

この「振動」という表現には,

心が震えます

 

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シャルダンにとって,

鉱物に始まり人間に至る

この世の存在は全て,

「宇宙意識」の進化のシナリオに沿った

流れの中の一部でした

 

Evolution is a light

illuminating all facts,

a curve that all lines must follow.

進化とはあらゆる事実を照らし出す

光であり,あらゆる直線が

沿って行かなくてはならない

曲線である

どのような曲線であれ,

接線は直線です

瞬間瞬間を断片化して捉えると

直線でも,

時の流れに沿いますと,実は

曲線になっている……

まるでDNAの二重螺旋構造を

イメージさせる表現です

 

そしてその曲線の正体は,

別の観点からしますと,

宇宙規模の「愛」だと,

シャルダンは考えました

 

Love is the affinity

which links and draws together

the elements of the world...

Love, in fact, is the agent

of universal synthesis.

愛とは世界の諸要素をつなげまとめる

親近感のことである…

実に,

愛は宇宙を合成させる主体である

また,別の表現では… 

 

Love is a sacred reserve of energy;

it is like the blood of spiritual evolution.

愛とはエネルギーの聖なる備えである

それは精神的進化の血液

のようなものである

つまりシャルダンにとって,

「愛」は宇宙全体を根本から動かしている

力動図式の原動力だったのです

 

At the heart of every being

lies creation's dream of a principle

that will one day give organic form

to its fragmented treasures.

God is unity.

あらゆる存在の核では,

いつしかその断片化された宝物に

有機的形態を与えるだろう原理を

創造プロセスが夢見ている

神は統一体なのだから

 

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個人的意識が宇宙意識と接続できた時,

もはや自他の二元論は解消し,

「個」と「全体」との区別も解消した

アイデンティティーそのものを

生きることになります

 

The most satisfying thing in life

is to have been able to give

a large part of one's self to others.

人生における最大の満足感は,

他者に自分自身の大部分を

与えることができた時に得られる

ギブ・アンド・テイクの原理ではなく,

ギブ・アンド・ギブの原理が

現実化して初めて,

「満足感」が得られる…


シャルダンのこうしたことばの

端々には,その途方もないスケールの

「意識」を前提とした思考が

ほとばしっています

 

We are one, after all, you and I,

together we suffer, together exist

and forever will recreate each other.

結局,あなたと私は,一つなのであり,

共に苦しみ,共に存在し,

永遠に違いを再創造し合うことだろう

 

そして…

 

The world is rounded 

so that friendship may encircle it.

世界は友情が円を描けるように,

丸い

信心のあるなしに関わらず,

説得力あふれる,

実に美しいフレーズです

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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