tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:科学は真理の像に過ぎない(フランシス・ベーコン)

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                                               June.11.2018 

 

 

フランシス・ベーコンは,1561年,

イギリス生まれの哲学者です

 

イギリス経験主義哲学の祖と言われています

あまりにも有名ですが,

 

Knowledge is power.

知は力なり

 

ということばを残しました

 

学問の体系化を構想し,

後の百科全書派にも影響を与えました

 

また,人間の先入的謬見,

思い込みによる間違った考え方を

「四つのイドラ(偶像)」として示しました

 

1. 種族のイドラ…民族差別などにつながる偏見

2. 洞窟のイドラ…個人の習慣・教育などによる偏見

3. 市場のイドラ…噂などの伝聞による偏見

4. 劇場のイドラ…権威を無批判に信じての偏見

 

…気づけばどれも心当たりが…

 

ベーコンはこれらを取り除けて初めて,

真理に至れると考えました

 

ベーコンのこうした

「科学的客観性」を求める姿勢は,

後にホッブスジョン・ロックにも受け継がれ,

近代資本主義の哲学的源流の一つとも言えます

 

さらにベーコンはシェークスピアと同年代で,

実は「シェークスピア」は

ベーコンのペンネームだったとする説さえあります!

 

本日はこの,

科学を始め現代世界に多大な影響を及ぼし

イギリス史上最大の哲学者と称されます,

フランシス・ベーコンの名言のいくつかを

ご紹介したいと思います

和文拙訳)

フランシス・ベーコン (哲学者) - Wikipedia

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まずは,ベーコンにとって「真理」とは…

 

Truth is the daughter of time,

not of authority.

真理は時の娘であり,

権威の娘ではない

「エライ人」も間違えます

それまでの業績がいかに素晴らしく,

世間から絶賛されている人であっても,

人ですから,

間違えないことなどあり得ません

そういう意味で,

個人ではなく時の試練を経たものこそが

真理を表しうる,とベーコンは考えました

 

これはブッダが,

 

私ではなく,教えを信じよ

 

と語られたことを思わせます

真のリーダーに然るべき発言かと思います…

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とはいえ,

真理はそれを知らない人に説かれるためには,

「作り話」が必要だとベーコンは言います

 

Truth is so hard to tell,

it sometimes needs fiction to make it plausible.

真理は語ることが相当難しいので,

時にはもっともらしくするために作り話が必要だ

これはピカソと気が合いそうです…

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ベーコンの哲学的方法は経験主義でした

 

実験によって試行錯誤をして真理に迫る,

という現代科学の常識は,

実はベーコンが説き始めた方法論だと言われています

 

Truth emerges more readily from error

than from confusion.

真理は混乱からよりも

誤りからよりよく現れる

 

間違えて,学ぶ…

 

学生時代の恩師の口癖が,

 

早くたくさん間違えなさい,

正解とかまとめなんていらいないから!

 

でした

で,間違えると「なんで間違えられるの?」と言う,

ファニーな先生でしたが…

 

ベーコンによりますと,

私たちは四つのイドラの呪縛から解放されるべきだが,

完全に解き放たれることは難しい

でもその中で,真理を求めて

科学などの学問をするのだから,

その産物は真理そのものではあり得ない,

と考えていました

ですから,

 

Science is but an image of the truth.

科学は真理の像に過ぎない

 

「科学万能」などとは,

イドラ無くして語れぬ妄言,

となります

 

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 ソユーズの打ち上げ

 

 

ベーコンは,

時の試練を経たものは,「ベター」なものだ

という認識をしていました

 

He that will not apply new remedies

must expect new evils;

for time is the greatest innovator.

新しい治療薬を使わない人は

新たな害悪を予期しなくてはならない

というのも,時は最高の改革者だからだ

 

とかく個人的「イノベーター」を望んでしまう

風潮があります現代科学の世界でも,

たとえば山中伸弥教授のように,

大抵一人称が「我々」であるような方こそ,

知的謙虚さを併せ持つ超一流の科学者だと思います

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宇宙ステーションから見たオーロラ

 

 

続きまして,ベーコンは「自然」を

どのように捉えていたのでしょうか
 

The subtlety of nature is

greater many times over than the subtlety

of the senses and understanding.

自然の微細さは

感覚や理解の微細さの何倍も素晴らしいものである

こうしたコメントは,

たとえばデカルトライプニッツなどの

フランス大陸合理主義哲学者たちなら

まず言わなかっただろう「自然賛美」です

イギリス経験主義の自然に対する謙虚さは,

日本人には理解しやすい点もあると思われます

 

Nature is often hidden,

sometimes overcome, seldom extinguished.

自然はしばしば隠されていて,

時に克服もされるが,滅多に使い果たされない

さらに,こうも語ります

 

We cannot command Nature

except by obeying her.

私たちは自然に従うことによってしか

自然に命じることはできない

 

ただし,

ベーコンの自然観は

絶対神に対する想いから来るものでした

 

God Almighty first planted a garden.

And indeed,

it is the purest of human pleasures.

全能の神は最初に庭園を作られた

そして現に,

それは人間の楽しみの中で最も純粋なものだ

 

「神の庭園としての自然」なのです

そして自分自身も含め,

神が人類に課している何かを,

印象的な比喩で表現しています

 

God hangs the greatest weights

upon the smallest wires.

神は最も細い針金に

最も重たいおもりをかける

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では,ベーコンにとって

「美」とはなんだったのでしょうか

 

The best part of beauty is

that which no picture can express.

美の最高の部分は

どんな絵画でも表現できないものだ


どんな画家もイドラに囚われているために,

その作品そのものが美を極めることはできません

逆に,芸術家のできることは,

同じくイドラに囚われた鑑賞者共々,

謎を呼ぶことです

 

The job of the artist is

always to deepen the mystery.

芸術家の仕事はつねに

その神秘性を深めることだ

 

そして経験主義哲学者だからこそ,

抽象ではなく具体を求めて,

このような美学を語っていました

 

Nothing is pleasant

that is not spiced with variety.

多様性で味付けされていないものは

喜ばしくない

 

確かに,こうした価値観ですから,

ベーコン=シェークスピアでは?

と疑われたのもうなづけます

シェークスピアは頭の中に三十人以上の人がいて,

いつも会話していたそうですから…

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

 

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ハッブル望遠鏡が捉えたキャッツアイ・ネブラ