tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を:永遠の生は現在に生きる人々のものである(ウィットゲンシュタイン)

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                                                  Aug.20.2018

 

 

ルートヴィヒ・ウィットゲンシュタイン

1889年,オーストリア生まれの哲学者です

 

しばしば,20世紀最大の哲学者と称されます

アインシュタインと共に平和宣言を発して,

ノーベル平和賞を授与された

バートランド・ラッセルに師事しましたが,

ラッセルが彼の生前出版された

唯一の哲学論文,『論理哲学論考』を

理解していないことを,

彼は鋭く見抜いていたほどでした

 

また,あのマクロ経済学ケインズ

「神」と呼んだという逸話もあります

 

今では言語哲学社会学・経済学などで

当たり前のように用いられています,

言語ゲーム」という用語は,

ウィットゲンシュタインの発案です

 

小生は学生期に,

ただルックスがカッコいいから,

という理由で

ウィットゲンシュタイン全集』を

コツコツと集めたものですが,

未だその内容は深遠すぎて,

幾度となく見返しては

難しさに絶望します

 

本日はこの,稀代の哲学者,

ルートヴィヒ・ウィットゲンシュタイン

名言の中から,比較的分かりやすいものを

いくつかご紹介したいと思います

和文拙訳)

ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン - Wikipedia

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まずは,ウィットゲンシュタイン

哲学教育を受けることなく原案を

構築していたと言われます,

論理哲学論考』の,

終結論部分からです

 

Whereof one cannot speak,

thereof one must be silent.

語りえぬことについては,

沈黙しなくてはならない

 

このことばを思い出すたびに,

自分がいかに普段,

「語りえぬこと」を

あたかも分かっているかのように

語ってしまっているかに気づかされ,

愕然とします

 

小生にとって,

頭を初期化した気に

させてくれるフレーズです

 

続きまして,

言語ゲーム」にまつわるものです

 

The limits of my language means

the limits of my world.

私の言語の限界が

私の世界の限界である

ウィットゲンシュタイン

何度もカトリック僧になろう

と試みていました

西欧人の哲学者たちが軒並み

対決せざるをえない運命にあるのが,

 

はじめにことばありき。

 

という,旧約聖書の第一文です

 

個人的見解で申し上げますと,

「言語の外はない」とする第一原理は,

西欧人の思考の重力場のように感じます

 

インドに端を発し

仏教の根本原理とも言えます,

「空」の概念,

つまり,

 

ものに実体はない。

 

とする東洋思想の体系とは,

決定的な違いがあります

 

その中で,

「沈黙」の必要性まで言及していました

ウィットゲンシュタインは,

西欧人哲学者としましては,

知の極北にまで至っていた

と言われるのも頷けます

 

Philosophy is a battle

against the bewitchment

of our intelligence by means of language.

哲学とは言語による

私たちの知性の呪文との戦いである

 

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「愚かなこと」と「知的なこと」について,

ウィットゲンシュタイン

こう述べています

 

If people never did silly things

nothing intelligent would ever get done.

人々が決して愚かなことをしなかったら,

知的なことは何一つなされないだろう

ウィットゲンシュタインにとって,

古代ギリシア哲学に始まる

哲学史の全ては,

「愚かなこと」

だったようです

現に,『論理哲学論考』を脱稿した際,

 

哲学の全ての問題が解決した

 

とさえ,言い放ったくらいですから…

 

とは言え,

ウィットゲンシュタインにも

西部劇鑑賞をするくらいの

「あそび」はありました 

また,口笛はプロ並みの上手さで,

「口笛コンサート」も開いていたそうです

  

Never stay up on the barren heights

of cleverness,

but come down into

the green valleys of silliness.

賢さという不毛な高台に

決してたたずむのではなく,

愚かさという緑の谷に

下りて来なさい

スティーヴ・ジョブズ

 

Stay hungry.

Stay foolish.

ハングリーであれ

愚かであれ

 

を想わせます

「愚かさ」の積極的価値を

明言するのは,

他の西欧哲学者としては

ニーチェなど,数えるほどしか

いない気がします

 

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ウィットゲンシュタイン哲学は

「日常言語学派」

と呼ばれます

 

普段の話しことばで

深遠な哲学的真理に至ろうとする営みは,

専門用語の羅列による虚飾が効かないため,

より鋭い洞察を必要とします

 

たとえば…

 

It is an hypothesis

that the sun will rise tomorrow:

and this means

that we do not know whether it will rise.

明日太陽が昇るだろうということは

仮説であるそしてこのことは,

私たちが太陽が昇るのかどうか

知らないことを意味する
 

「当たり前」を問う怖さと迫力が,

凝縮されています

「机は何で机なの?」と

無邪気に聞いてくる子どもの視点です

 

A man will be imprisoned in a room

with a door that's unlocked

and opens inwards;

as long as it does not occur to him

to pull rather than push.

人は鍵がかかっておらず,内側に開く

扉のついた部屋に閉じ込められるものだ

押すのではなく引くことを

思いつかないのなら

 

最早,禅の言います「気づき」に

酷似したコメントです

一休さんの「頓知」と言いますか…

 

空性理解がなくても

ここまで知的に自身を追い込んだ

ウィットゲンシュタイン

ストイックさが溢れています

 

そうした彼の目でしか看破しえない

「日常」の「非日常性」もあります

 

次のコメントは,

現代世界の生活者として,

決して笑える人ごとではありません

 

Nowadays it is the fashion to emphasize

the horrors of the last war.

I didn't find it so horrible.

There are just as horrible things

happening all round us today,

if only we had eyes to see them.

今日では,最後の戦争の恐怖を

強調することが流行っている

私はそれをさほど怖いとは思わなかった

今日,私たちの周り中に

ちょうど同じくらい怖いことが起こっている

もし私たちがそれらを見る目を

持ってさえいれば
 

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最後に,ウィットゲンシュタイン

死生観はどのようなものだったのでしょうか

 

Death is not an event in life:

we do not live to experience death.

If we take eternity to mean

not infinite temporal duration

but timelessness,

then eternal life belongs to

those who live in the present.

死は生の出来事ではない

私たちは生きても死を経験しない

もし永遠を無限なる一時の持続ではなく,

無時間性ととらえるなら,

永遠の生は

現在に生きる人々のものである

 

「永遠の生」は「永遠の現在」,

過去と未来に挟まれた瞬間のことではなく,

いわゆる「時間」とは全く無縁の,

ピカソが永遠の子どもであり続けようとし,

アウグスティヌス千年王国の在り処と呼び,

ガンジーが指摘した何かに,

ウィットゲンシュタイン

気づいていたのでしょう

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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