June.3.2018
ヨハン・カール・フリードリヒ・ガウスは,
1777年ドイツ生まれの数学者・天文学者・
物理学者です
その業績は
近代数学のほとんどの分野におよび,
史上最大に影響力のあった数学者
とさえ称されています
よく知られた逸話では,ガウスが小学生の時に,
先生が生徒たちを自習させようとして,
1から100までの数字を足しなさい,
という課題を出したところ,
ガウスは
1+100=101
2+99=101
3+98=101
…
となることに気づき,
こうした数の組み合わせが50組できるので,
1から100まで足すと,
101×50=5050
と解答した,というものがあります
また,15歳の時に1日15分ずつかけて,
1000個ずつの自然数の中に
素数がいくつあるか調べ,
それがだんだん減っていくことから,
約100年後に証明されることになった素数定理,
含まれているかを述べる定理の予測をしました
2 | 79 | 191 | 311 | 439 | 577 | 709 | 857 |
3 | 83 | 193 | 313 | 443 | 587 | 719 | 859 |
5 | 89 | 197 | 317 | 449 | 593 | 727 | 863 |
7 | 97 | 199 | 331 | 457 | 599 | 733 | 877 |
11 | 101 | 211 | 337 | 461 | 601 | 739 | 881 |
13 | 103 | 223 | 347 | 463 | 607 | 743 | 883 |
17 | 107 | 227 | 349 | 467 | 613 | 751 | 887 |
19 | 109 | 229 | 353 | 479 | 617 | 757 | 907 |
23 | 113 | 233 | 359 | 487 | 619 | 761 | 911 |
29 | 127 | 239 | 367 | 491 | 631 | 769 | 919 |
31 | 131 | 241 | 373 | 499 | 641 | 773 | 929 |
37 | 137 | 251 | 379 | 503 | 643 | 787 | 937 |
41 | 139 | 257 | 383 | 509 | 647 | 797 | 941 |
43 | 149 | 263 | 389 | 521 | 653 | 809 | 947 |
47 | 151 | 269 | 397 | 523 | 659 | 811 | 953 |
53 | 157 | 271 | 401 | 541 | 661 | 821 | 967 |
59 | 163 | 277 | 409 | 547 | 673 | 823 | 971 |
61 | 167 | 281 | 419 | 557 | 677 | 827 | 977 |
67 | 173 | 283 | 421 | 563 | 683 | 829 | 983 |
71 | 179 | 293 | 431 | 569 | 691 | 839 | 991 |
73 | 181 | 307 | 433 | 571 | 701 | 853 | 997 |
1000以下の素数表
本日はこの,ガウスの名言のいくつかを
ご紹介したいと思います
(和文拙訳)
ドイツ連邦銀行発行の10マルク紙幣
ガウスのサイン
まずは,ガウスの
「プロセス重視」を表す名言からです
It is not knowledge, but the act of learning,
not possession but the act of getting there,
which grants the greatest enjoyment.
知識ではなく学ぶ行為こそが,
所有ではなくそこに至る行為こそが,
最も喜びを与えてくれる
知識は結果です
それ自体は答えであり,
思考プロセスを必要としません
ガウスにとって
「最も喜びを与えてくれる」のは,
考える過程に他なりませんでした
続きまして,
「証明」についてのコメントです
I mean the word proof
not in the sense of the lawyers,
who set two half proofs equal to a whole one,
but in the sense of a mathematician,
where half proof = 0,
and it is demanded for proof
that every doubt becomes impossible.
私が証明という言葉で言いたいのは,
2つの半分ずつの証明が
1つの全体的な証明と同等であるとする,
法律家が使う意味でではなく,
数学者が使う意味でである
つまり半分の証明=0で,
あらゆる疑いが不可能になることが
証明に求められている場である
数学の美しさの一つではありますが,
いざ「証明」が「証明」足り得るためには,
完璧が求められる,
ということです
半分だけの証明では無に等しい…
どんな科学理論も
必ずや反証されるものではありますが,
それが分かっていながらも完璧を志向するのは,
数学者は芸術家である
とも言われる由縁かも知れません
l
もちろんガウスと言えど,
「無」から理論構築した訳ではありません
Mathematicians stand on each other's shoulders.
数学者はお互いの肩の上に立っている
この点は,ニュートンが
私がより遠くを見られてきたのは,
巨人たちの肩に乗っているからだ
と語っていたことを想わせます
とは言いましても,
数学者は孤独だと言われます
最先端の研究をするということは,
誰にも理解されないことをする,
ということです
敢えてそれまで人類が直面したことのない闇に
単独で分け入り,
下手をすれば発狂してしまうかも知れない状況に,
みずから好んで挑んで行くのです
When I have clarified and exhausted a subject,
then I turn away from it,
in order to go into darkness again.
私はある主題を明らかにし調べ尽くしてしまったら,
それからそっぽを向く
再び暗闇へと入っていくために
ガウスは数があくまで人工物であり,
予め自然界に「埋もれて」いたものではない,
と自覚していました
We must admit with humility that,
while number is purely a product of our minds,
space has a reality outside our minds,
so that we cannot completely prescribe
its properties a priori.
私たちが謙虚に認めなくてはならないことは,
数は純粋に私たちの精神の産物であるが,
一方で宇宙は私たちの精神の外部にある現実だ
ということだ
なので私たちは,完全には前もって
その特性を描写することなどできない
あるがままの自然界に秩序はありません
そこに秩序を読み込むのは人間です
赤ん坊は世界を見て秩序を感じられません
「ものごころ」がついて初めて,
ことばを操るようになってしまって初めて,
秩序を意識するのです
ですが,何故だか,
アインシュタインも言いますように,
科学理論の多くは美的です
ガウスもその感覚を共有していました
Further, the dignity of the science itself
seems to require that every possible means
be explored for the solution of a problem
so elegant and so celebrated.
さらに,科学それ自体の尊厳は,
全ての可能な手段がとても優雅で祝福された形で,
問題の解決のために模索されるべきことを
求めているように思われる
1+1=2, 1+2=3, 2+3=5, 3+5=8, 5+8=13,
8+13=21...と,
1つ前の数を足し合わせていく数列が,
頭の渦巻き,シンクの水の流れ,オウムガイ,
ヒマワリの種の並び,薔薇の花びら,樹木の枝,
毛細血管,渦潮,台風,銀河系の構造に
潜んでいると言われます
時折耳にすることですが,
偉大な数学者の中には,
解法より先に答えが分かっている人がいる
と言われます
I have had my results for a long time:
but I do not yet know how I am to arrive at them.
私は長い間いろいろな答えを持ち合わせてきたが,
いまだにそれらにどうやって私が到達するべきか
わかっていない
こういうことがあるので,
やはり凡人からしますと,
数学的天才は奇人扱いされても
仕方がないと思ってしまいます
そういう世間の「目線」にも,
ガウスは重々気づいていました
It may be true,
that men, who are mere mathematicians,
have certain specific shortcomings,
but that is not the fault of mathematics,
for it is equally true of
every other exclusive occupation.
単なる数学者である人たちには,
ある特定の欠点があることは確かかもしれないが,
それは数学の責任ではない
というのも,こうしたことはどんな他の
独占的職業にも当てはまることだからだ
とは言え,
ガウスは真理の深淵を孤独に覗き込みつつも,
幸福感に包まれてはいたようです
Life stands before me like an eternal spring
with new and brilliant clothes.
人生は私の前に新しく輝かしい衣服を着て
永遠の春のように立っている
そして極めてシンプルにこうつぶやいていました
God does arithmetic.
神は算数を解く
それでは,このへんで
ガウスの定理
「ある体積内での湧き出し量と表面から出ていく量は等しい」