tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を:本音なんて、みんな幻でございますよ。(宮部みゆき)

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                                               July.21.2018

 

 

宮部みゆきさんは,

1960年東京都生まれの

推理作家・小説家です

 

『龍は眠る』『火車』『理由』

模倣犯』『名もなき毒』などの

代表作があり,直木賞を始め

数々の賞を受賞され,

名実ともに現代日本を代表する

作家さんです

 

ミステリー,時代小説,

ファンタジージュブナイルなど,

カバーされておられるジャンルは

多岐に渡ります

 

小生の知り合いで,宮部さんの

熱狂的なファンがいまして,

是非『ブレイブ・ストーリー』も

紹介して欲しいと言われました…

映画と原作小説は結構違う作品だそうです

小生は残念ながら未読です

 

本日はこの,

宮部みゆきさんの作品の中から,

名言のいくつかをご紹介したいと思います

(英文拙訳)

宮部みゆき - Wikipedia 参照

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まずは,とある場面の

興味深いやりとりからです

 

ごめんで済めば、

警察はいらないんだからさ

If you can do with sorry,

you don’t need the police.

 

そこで,こう言われた慎吾は

父ちゃんはそうは言わなかった

と拳を握って反論します

 

ごめんという気持ちがあれば、

警察が要らないことはいっぱいある

If you have the feeling of sorry,

there are many things

that don’t need the police.

 

「ごめんという気持ちがあれば、

    警察が要らないこと」 

 

宮部さんの鋭い洞察力が光っています

小生の個人的イメージとしましては,

宮部さんの「ことだま」は,

小刻みに揺れるシャープな軌道を描く,

という感じです

 

他人のすることが、

なんでもかんでも

気に入らないっていう人が、

世の中にはいるんだよ

There are some in the world

who don’t like anything others do.

 

他人のすることを何でも良く受け取る人

他人のすることを何でも疑う人

他人のすることを何でも聞く人

他人のすることを何でも気に入らない人

 

小生の学生時代の恩師である,

美学教授のことばを思い出しました

アンリ・ベルクソンの『笑い』の

原書購読をするゼミでした

 

微笑んでいる人はいつも微笑んでいる

悲しんでる人はいつも悲しんでる

怒ってる人はいつも怒ってる

楽しんでる人はいつも楽しんでる

 

この「いつも」を巡って,

ゼミ生の中で大議論が起こったのですが,

そのゼミの打ち上げパーティーのとき,

ほろ酔い気分になっておられた教授に,

小生が「先生,あの<いつも>って,

言い過ぎではと

みんな言ってるんですが…」

とお聞きしたところ,

 

人は見かけだけでなく

内面まで含めて観察なさい

 

とのおことばを頂きました…

tsuputon7.hatenablog.com

 

もちろん人は千差万別ですが,

こうした姿勢に,その方の人間関係,

ひいては自己肯定感の程度が

反映されるものと思います

 

宮部さんの視点は,

常に常識の背後を突きます

 

子供はすべての暗闇に

お化けの形を見出す。

そして千にひとつ、万にひとつには、

その暗闇に、本物のお化けが

隠れていることがある。

Children find some figures of ghosts

in all the darknesses;  

and in one of the thousand,

or one of the ten thousand,

it hides itself in the darkness

  

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続きまして,龍についてのコメントです

 

ことによると、我々は本当に、

自分のなかに一頭の龍を

飼っているのかもしれません。

底知れない力を秘めた、

不可思議な姿の龍をね。

Perhaps, we may really have a dragon

within ourselves;

a strange figure of a dragon

that has unlimited power. 

 

自分が自分の中に一頭の龍を飼っている

 

生命力の象徴としての龍は,

古来インド,チベット,中国などで

多大な影響を及ぼしてきた

シンボルでした

 

それはいわゆる風水の「龍脈」のように,

地理的特徴に潜んでいる

エネルギーの流れという意味では,

しばしば描写されてきましたが,

個人の内面に龍が潜むという発想自体,

実は斬新さがある気がします

 

さらに,「幸せ」についてです

 

でもあなたは幸せになれる。

何かに、誰かに追いかけられて、

キャッと叫んで机の下に隠れても、

いつかはそこから出なくてはならない。

出ていけば、世界はまだそこにあるのだ。

But you will be able to be happy.

If you shout, ‘Ooops!’,

and hide yourself under the desk,

being chased by something, or somebody,

you’ll have to get out of there some day.

If you do, the world will be still there.

 

子どもに対して,時空を超えた存在が

「天の声」として諭すかのような

メタファ溢れる幸福論です

 

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宮部作品の登場人物たちは,

時に,アクティブたれ!とする

端的なメッセージを発します

 

突っ立って問い掛けているだけでは、

誰も得なことを教えてはくれない。

If you just stand up and ask,

nobody will tell you something beneficial. 

 

自分で動いて始めて見える世界,人,

そこからしか良い学びはない,と…

 

間違いを繰り返しても、

そこから引き返し、考え直し、

生きて、懸命に生きて、

また自分たちの道を切り拓いてゆく

ことにこそ意味があります。

Returning from there, thinking twice,

living, living hard,

and exploiting our own ways

will have some meaning,

even if we repeat the same mistake. 

 

どれだけ間違ってもその度に起き上がって

問題に立ち向かい続ければ,

新たな境地が拓けてくる,

というビジョンです

 

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情報と人間の「距離」について,

意味深なセリフがありました 

 

たしかに情報には距離がない。

だが、人間には距離があるのだ。

生身の人間は、

依然として距離に隔てられる存在なのだ。

Surely, there is no distance of information;

however, people have distances.

The real person is an existence

still separated by the distance.

 

超情報化社会を迎えました現在,

まるで回転寿司の如く

さまざまな料理の小鉢が目の前に

差し出され続けるかのように,

情報は「並列」しています

 

そこに適度な距離感も何もありません

 

ところが人と人は,生身の人間同士は,

「人」と「人」の「間」で,

距離を持ち合う存在です

 

そうした視点から人間観察をしますと,

たとえ無二の友人や

おしどり夫婦であっても,

お互い言いたいことを言おう

と誓い合っていたとしても,

叶わぬことなど多々あるでしょう

 

自分が一体何を考えているのか?

その答えが分かるのは,

自分とは誰かが心底分かった人でしょう

 

おそらくそれが分かる方は,

悟りを開いておられます

 

宮部さんはそのことを重々承知の上で,

こう主人公に言わしめています

 

本音なんて、みんな幻でございますよ。

The real intentions are all illusions.

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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