tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:行動的な人のように考え、思慮深い人のように行動せよ。(ベルクソン)

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オーギュスト・ ロダン『考える人』

 

                                                        Feb.20.2018 

 

 

アンリ・ベルクソンは,1859年

フランス・パリ生まれの

哲学者です

 

日本では

西田幾多郎氏に強い影響を与えました

 

代表作『創造的進化』で

"élan vital"(エラン・ヴィタール)

「生命の飛躍」という概念を提唱し,

生の哲学」を構築しました

 

どちらかと言いますと

暗く深刻なイメージの強い西洋哲学者たちの中でも

珍しく「明るい」哲学者です

「生の力動図式」

なども掲げています

 

その端的明瞭な美文体で,

国内外で知名度を上げました

1927年には

「彼の豊かで活発な発想と,

それが表現された鮮やかな技巧に対して」

ノーベル文学賞が授与されています

 

本日はこの,異彩を放つ哲学者,

ベルクソンの名言のいくつかを

ご紹介したいと思います

(英文拙訳)

 

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 アンリ・ベルクソン

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まずはベルクソン哲学の骨格でもあります

意識の流れを表す「持続」についてです

 

The duration is to continue the change.
A change is to take “non-oneself” into oneself.

持続とは変化を続けることである。
変化とは自己の中に「非自己」を取り込むことである。

 

生きるとは変化することです

ベルクソンは全宇宙の生物の持つ意識の流れを

変化し続けるエネルギー,「持続」と呼びました

その持続が成り立つためには,

自分の中に自分でないもの,

「非自己」が取り込まれなければなりません

 

その「変化」する様を,

次のようにも言い表しています

 

To change is to live,

and to change is to add the experiences,

and to add the experiences is

to create oneself boundlessly.

生存するということは変化することであり、

変化するということは経験を積むことであり、

経験を積むということはかぎりなく

己れ自身を創造していくことである。

 

生存→変化→経験→創造,

この解釈の流れを全宇宙の存在に当てはめていく

壮大なプロジェクトをベルクソンは試みました

 

 「もの・カネ」にしか注目しようとしなかった

20世紀初頭の資本主義社会に,

「こと」の論理を提出していたのです

 

 A change exists,

but the one which changes doesn’t exist.

変化は存在するが、

変化するものは存在しない。

 

変化する「こと」はあっても,

変化する「もの」はない

これは直ちに宮澤賢治のあのフレーズを想わせます

 

    わたくしといふ現象は

    仮定された有機交流電燈のひとつの

    青い照明です

 

tsuputon7.hatenablog.com

 

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ベルクソンの「生の力動図式」は

何も抽象的な机上の空論ではありません

 

   Think like an active person

   and behave like a thoughtful person.

   行動的な人のように考え、

   思慮深い人のように行動せよ。

 

意外なほど,

行動と思考はただ二項対立で考えてしまうものです

その相補性をこれほど上手く表現したフレーズは

小生には記憶にありません

たしかにこうできれば,

いろんなレベルでバランスの取れた

言動一致の人格を鍛えられるはずです

 

また,ベルクソンは虚栄心と笑いについても

同様の相補性を指摘しています

 

  The specific medicine for vanity is a laugh

  and the fault that I should laugh at essentially

  is vanity.

   虚栄心の特効薬は笑いであり、

   そして本質的に笑うべき欠点は

   虚栄心である。

 

tsuputon7.hatenablog.com

 

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ベルクソンの美学の一端が垣間見られる

ことばがありました

 

Beautiful is that I don’t worry about a lost thing,

not that I abandon it nor that it’s taken away.

美しいのは、捨てることでも奪われることでもなく、

失うことを気にしないことである。

 

これは仏教で言います

「三輪清浄布施」を想わせます

何かを人に与えるとき,

与える人,与えられる人,与えたれるもの(三輪)の

三つ全てが透明で清らかで

忘れ去られるほどでなくてはならない,

とする考え方です

そこに私利私欲はなく,美しかありません

ベルクソンはフランス人でありながら,

くしくも仏教美学的思考をしていました

 

 

 彼はまた,運命についてこのように述べています

 

We can’t somehow realize

that we carve out our own fortune by ourselves.

自分の運命は自分で刻み出すものだということとを

人間はなかなか悟れないものである。

 

これなども,芥川のことばに酷似しています

 

tsuputon7.hatenablog.com

 

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「哲学は死の準備である」とソクラテスは言いました

一方でベルクソンは「生の跳躍」を説きます

 

同じ山を登るにもいくつも道があります

 

真理という一つの頂上を目指した

過去のさまざまな哲学者たちの言動を,

いとも簡単に知ることのできる

現代文明の豊かさに感謝しつつも,

自分の中に揺れるアイデンティティを感じる時,

情報飽食の時代に生きざるを得ない我が身が

いささか不憫にすら思われます

 

ですが,この豊かさの悲しみが

いつしか幸せへと昇華されますようにとの祈りだけは

忘れずに行こうと思い続けたいです

 

    The only way to make sure where I can go is:

    to begin to leave and walk just immediately.

   どこまで行けるか、確かめる方法は唯一つ。

   すぐにでも出発して、歩き始めることだ。

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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