July.17.2018
中村桂子さんは,1936年東京生まれの
生命誌研究者です
東京大学理学部化学科,
同大学院生物化学科を修了された
理学博士です
遺伝子工学の最も基本となります
「ゲノム」ということばを,
いち早く日本で一般に広められた方です
国立予防衛生研究所を皮切りに,
大阪大学などに所属されたのち,
2002からJT生命誌研究館館長
を務められ,現在に至ります
時折国営放送などにもお出になられますが,
個人的には「元祖リケジョ」の
イメージで,しなやかな語り口のうちに
鋭い稲妻も落とされるバランス感覚に
長けた方として,
永らく一ファンのつもりで
御著者その他に触れさせて
頂いてきました
本日は,この中村桂子さんが
以下のホームページ上で
月に二回のペースで何年も
更新されておられますコラムの
本年度の記事から,小生が刺激されました
名言のいくつかをご紹介したいと思います
(英文拙訳)
まずは,中村さんが「生命誌」を
学問として創始された際の想いについて
語られたコメントからです
最初は、機械論の中で生きものを捉え、
産業・経済に役立つことを最重要とする
という気持で始めたことであり、
学問として新しいものを求めました。
Firstly, I started this,
thinking of biohistory
as opposed to bioscience,
which regards creatures
within the mechanism
and thinks it the most important
to be useful to industry and economy,
and sought for something new
as a discipline.
そして,次の様に要約されています
「人間は生きものであり、
自然の一部である」ということを
基本にした知を創ろうと願い、
社会づくりの始まりもここにある
と考えている「生命誌」
The ‘biohistory’ that wishes to create
the intelligence based on the fact,
“Human beings are creatures
and a part of nature.”,
and thinks the beginning
of creating society is here.
端的に,
人は機械ではなく生きものであり,
自然の一部である,
というお考えです
資本主義の最大の罪過は
人間の機械化にありました
「社会の歯車」になることが
美化されてきたことに典型的に
見て取れますように,
共通価値として,社会という巨大な機械の
「いかに素晴らしい部品となるか」
があり続けてきました
中村さんは
こうした既存の価値観に対し,
舌鋒鋭く,こうご心配です
社会が「人間は生きものであり
自然の一部である」という
あたりまえのことをすっかり忘れた
政治家、企業経営者、官僚によって
動かされていることが
心配になってきました。
I’ve got to worry that our society is
handled by the politicians, employers,
and bureaucrats who have totally
forgotten the natural fact
that “Human beings are creatures
and a part of nature.”
さらに…
権力とお金だけで動く社会を
これ以上許していたら、
生きる意味などなくなる
という危機感です。
I do feel the danger that,
if we forgive the society more
which is handled
only by powers and money,
we will have to lose
the meaning of living.
中村さんのヴィジョンは,
途方も無いスケールのものです
38億年という長い歴史と
数千万種とも言われる
多様な生きものたちとの関係を知り、
私たち人間も
生きものの一つであることに気づき、
生きているってどういうことだろう
と考えるとたくさんのことが見えてきます。
You’ll get to see many things,
if you know the relationship
with the creatures that have
as many as 3.8 billion-year history
and so-called tens of million sorts,
and notice we human beings are
one of them and think what it is to live.
その説明として,
次のような図解をされておられます
つまりこれで
言わんとされておられますのは…
宇宙の中に生れた
地球という星に誕生した
生命体の一つとしての人間
という位置づけをする
We place human beings on the one
which is one of the creatures
born on the planet earth
born in the universe.
中村さんは,
医師の多田富雄さん,
解剖学者の養老孟司さんと
お話しされた際,
お二人とも今の自分は子どもの頃の
自分とは違うと仰ったのに対し,
「ずーっと私は私ですよ」と述べられた所,
お二人とも納得されないご様子だったため,
次の様に返されたそうです
女の人は存在で、
男は現象ということですかね
women are beings,
while mea are phenomena, aren’t they?
ああ,
男子代表・宮澤賢治は
わたくしといふ現象
と言ってました!
中村さんは
多数派のマジョリティによる一極集中に
強い懸念を持たれています
少数派のマイノリティが
じわじわ広く浸透されることを
望まれています
私の中にはどうも
マイノリティでいるのが
暮らしやすいと思う気持があるようです。
I’m afraid I do somehow have the feeling
that it will be easier to live
being as a minority.
たとえば次のような感性も,
改めて考えてみますと,
マイノリティならではのものです…
それにしても
美味しいものをいただきながら
ゆったりした時間を持つのは
よいことですね。
Anyway, it’s good
to have a peaceful time,
having something fine, isn’t it?
小生も諸手を挙げて賛成です!
どう拝見しましてもお優しい佇まいと
淡々とした語り口とはパラドキシカルに,
人類の今後を真に
ご心配されておられます
今の社会は「いのちを大切に」
という基本を忘れて動いており、
これからもよくない方向へと
向いそうな気がします。
Society today is moving,
forgetting the basis of ‘cherishing life’,
and, as I see it,
also from now on,
is going to go toward the wrong.
個人・法人の既得権益「のみ」を
死守することが第一の権力者は,
動物以下です
そうした動物以下の存在たちに
牛耳られている現状に,
中村さんは黙っていられないのです
その理由はただ一つです
あやしい雰囲気が
あちこちにあると感じ、
これを次の世代に
渡したくない
I feel there are
so many dangerous moods
so I don’t want to hand this over
to the next generation.
坂本龍一氏が,今起こってることを見て
何もしないのは野蛮だと仰っていたことを
思い出します
それでは,このへんで