Nov.18.2018
西洋哲学の父と称されます
彼は自ら字を書くことは
なかったと言われています
現在,ソクラテスのことばとして
伝えられていますものは,
主に一番弟子のプラトンが
書き留めたものだとされます
書きことばは
話しことばから魂を抜き去り,
翼を生やして飛んでいってしまう
ソクラテスはこう考えました
話しことばはいついかなる時も
発信者のものですが,
書きことばは読む人の解釈や
噂などにより,
発信者の意図を超えて
どこかに飛んでいく…
日本的に言いますと,
言霊(ことだま)が抜ける,
といった所でしょうか
こうして,ソクラテスは
書きことばは話しことばより
劣っているとしたのです
文字無くしては不可能な現代社会に
否が応でも生きている
身としましては,
今一度,
ソクラテスの本意のかけらでも
理解出来たならば,ひとときであっても
「デジタルデトックス」
になるかも知れない…
こう安直に考え,
ソクラテスの話しことばの
「書きことば」を少し探りたくなりました
本日はこの,ソクラテスの
名言のいくつかをご紹介したいと思います
(和文拙訳)
まずは,あえてソクラテスの
スタンスの「確認」からです
The only true wisdom is
in knowing you know nothing.
唯一正しい知恵は,
何も知らないと知る時にある
いわゆる,「無知の知」です
アインシュタインは,
知れば知るほど,
知らないことが増える
と言いました
老子は
知る者は言わない
言う者は知らない
と言いました
時折思うのですが,
「無知の知」は、
小生の日々関わっています
社会の中で,
果たしてどこにあるのでしょうか
こうした意味合いで
「無知」のソクラテスにとって,
真の学びは「驚き」でした
Wisdom begins in wonder.
知は驚きから始まる
そして,彼は自負します
I know that I am intelligent,
because I know
that I know nothing.
私は自分が知的だと知っている,
というのも,自分が何も知らないと
知っているからだ
さらに具体的には…
True wisdom comes to each of us
when we realize
how little we understand about life,
ourselves, and the world around us.
正しい知恵が私たち各々に至るのは,
私たちが人生,自分自身,
そして自分たちを取り巻く世界について
いかに知っていることが少ないか
を悟る時だ
続きまして,
美についてのコメントです
Beauty is a short-lived tyranny.
美は儚い専制だ
はかなくも,
私たちは美に心奪われます
その時,感動か持続している間は,
好もうと好まざると,
美のしもべとなります
時に,美は…
Beauty is the bait which with delight
allures man to enlarge his kind.
美は喜びとともに人をそそのかして,
その人のタイプの人を
大きく見せるエサだ
ちなみにソクラテスは
ユーモア混じりにこう断言しています
By all means, marry.
If you get a good wife,
you'll become happy;
if you get a bad one,
you'll become a philosopher.
是非,結婚しなさい
もしいい妻をめとったら,
あなたは幸せになるだろう
もし悪い妻をめとったら,
あなたは哲学者になるだろう
いわゆる「ソクラテスの妻」
にまつわる至言です…
ソクラテスは,
老子の「足るを知る」を
連想せずにはいられない
コメントを残しています
He is richest
who is content with the least,
for content is the wealth of nature.
最少のもので満足する人は
最も豊かだ,
というのも,満足はそもそも富だからだ
満足している人は戦争しません
戦争する人は不満がある人です
そうした満足に
少しでも近づくためには…?
Be as you wish to seem.
そうありたいと願うようにありなさい
もはやイメージトレーニングの極みです
こうした想いは,むしろ
幼少期には誰しも自然に持つものでは
ないでしょうか?
「天才」と称される存在で,
こうしたイメージの
効果を否定する方は,
ほぼいないのではないか
と思われるほどに,
数々の名言でも心当たりがある表現です
ですから,
逆説的にこうも言い得ます…
An honest man is always a child.
正直な人は常に子どもだ
俗世の世渡り指南をして頂くと,
どうなるのでしょうか?
The greatest way to live with honor
in this world is
to be what we pretend to be.
この世で名誉とともに生きるための
最善の方法は,
何者かになりすますことだ
あまりにも
本質を突いている気がして,
二の句が告げません
「世を忍ぶ仮の姿」 に
積極的価値を見出すこと,
それが「名誉」と共に生きる
最善の方法だと…
もっとも,ソクラテスは貴族であり,
働く必要などなかった方でしたので,
およそこの句は皮肉なのですが…
哲学は死の準備である
とし,
物質世界の根源である
超感覚的イデア界の光のみを
直視しようとし続けた
The unexamined life
is not worth living.
試されない人生など
生きるに値しない
その人生哲学は,
次に要約されています
It is not living that matters,
but living rightly.
ただ生きるのではなく,
正しく生きることが重要だ
それでは,このへんで