tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:難問はそれぞれ解くのにほどよく必要なところまで分けよ(デカルト)

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                                                        Feb.13.2018

 

 

 

ルネ・デカルトは,1596年フランス生まれの

哲学者・数学者です

近代科学の父と称されます

 

それまでの中世カトリック教会主導だった学問を

宗教から分離して発展させよう,

そのために数学を理系諸学問の基礎に置こう,

と提案,実行し始めた人です

 

よくある疑問ですが,義務教育の段階からの

「なんで将来使わないのに数学なんかやるの?」

の答えは,デカルトのこの提案のためです

 

たとえば,

「座標」を標準装備した学問が

「理系」と呼ばれますが,

この常識を作ったのはデカルトです

 

また,

方程式の定数をa, b, c,  未知数をx, y, z「と置く」や,

Xの三乗を表すのに右肩に小さく3と書く

ルールを作ったのもデカルトです

 

 

 

小生が思いますに,デカルトが後世に残した

最大の提案は「エポケー」です

これはギリシャ語で「判断中止」を表し,

古代ギリシャの哲学者ピュロンが提唱したことですが,

デカルトはこのエポケーする精神を

学問に取り入れることの重要性を強く説きました

 

たとえば人の話を聞いたり読んだりする時に,

すぐさま

正しい,正しくないを「判断」してしまったら,

決して客観性を持った認識はできません

こうした判断は後々するべきで,

まずは相手の主張を丸ごと受け入れようとしなければ,

我田引水的解釈をして終わります

 

自分の得た情報に対し,感情・判断を交えず向き合い,

吟味した上でその利用法を考える

 

今のスマホなどを通じたSNSの一般的利用状況を

デカルトが見ましたら,なんと人類は非科学的方向に

全員で向かおうとしているんだと,

呆然とすることでしょう

 

本日はこの,現代の私たちの科学の「基礎」 を

築きましたデカルトの名言のいくつかを

ご紹介したいと思います

 

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 ルネ・デカルト

 

 

まずは,最も知られています一言から…

 

I think, therefore I am (Cogito ergo sum)

我思う、ゆえに我あり

 

デカルトにとってものごとを「疑う」のは

学問上必須のあり方でした

 

Doubt is the origin of wisdom.

疑いは知のはじまりである。

 

そしてこの「疑う」自分の存在は

どんなに疑っても消えない

思考する自分はそういう意味で自己の中心である

だから,考えるからこそ私は存在する…

思考の重要性を,

デカルトは次のようにも表現しています

 

Except our own thoughts,

there is nothing absolutely in our power

思考を除いて、

我々の力の中で絶対的なものなど存在しない

 

デカルトは生涯,敬虔なクリスチャンでした

ですからこのことばで言う「我々」は

学問する主体であって,信仰主体ではありません

 

私たちは思考するとき,

あたかも座標系の原点から自分を取り巻く

全宇宙を観察します

デカルトは,そこから全てを見ようとしている

思考の営為は絶対だとしたのです

 

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続きまして,主著『方法序説』の冒頭文です

 

Good sense is of all things in the world

the most equally distributed

良識はこの世で最も公平に

配分されているものである

 

これは「思想の領域における人権宣言」

とも言われます

 

当時まだブルジョワ階級による支配体制下にあった

フランスでは,富の分配は不公平だらけでした

そうした中で,

学問する人間の基本スタンスであるべき「良識」は

最も公平に分けられている

また,そうあらなければならないと

デカルトはは考えていました

 

そして,良識を持つ人間が適切に学問する方法の

四段階を,このように定めました

 

1. 明証的に真であると認めたもの以外、

    決して受け入れないこと。(明証)

2. 考える問題を出来るだけ

    小さい部分にわけること。(分析)

3. 最も単純なものから始めて

    複雑なものに達すること。(総合)

4. 何も見落とさなかったか、

    全てを見直すこと。(枚挙 / 吟味)

 

とりわけ2番目の「分析」で

「分ければ,分かる」という精神こそ

近代科学を推進してきた原動力でもあります

 

Divide each difficulty into as many parts

as is feasible and necessary to resolve it.

難問はそれぞれ解くのに

ほどよく必要なところまで分けよ

 

 

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デカルトの哲学は別名「内省哲学」と言われます

自己認識と他者認識を比べますと,

実は前者の方に言及していたものの方が

多いと言います

 

Conquer yourself rather than the world.

世界ではなくむしろ自分自身を征服せよ

 

自分と向き合いたくない人ほど

世界を征服したがります

端的に未熟な自我がなせる技でしょうか…

 

The chief cause of human errors is to be found

in the prejudices picked up in childhood.

人間の誤りの主な原因は

幼少期に身に付いた偏見に見出されうる

 

デカルトはすでに当時から

幼児教育の重要性に気づいていたようです

良くも悪くも,三つ子の魂百まで…

そういう偏見をほぐしていくためにも,

読書はうってつけです

 

The reading of all good books is like conversation

with the finest men of past centuries.

良き書物を読むことは過去の最も優れた人達と

会話をかわすようなものである

  

メディアがこれだけ発達した今も

デカルトの言うこの「会話」感覚は

時空を超えて真だと言い得るものです

 

 

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あくまで間違ってはいけないのは,

デカルトはへそ曲がりであれ,と言っているのではなく,

考えよ=疑え

と言っていたということです

 

If you would be a real seeker after truth,

it is necessary that at least once in your life

you doubt, as far as possible, all things.

真理を探究するのであれば、

人生において一度は、

あらゆる物事をできる限り深く疑ってみる必要がある

 

信じるというのは思考停止を意味します

 

ブッダは「私は疑え」と仰いました

疑って疑って,それでも

その疑いの炎でも溶けない何かがあれば,

その教えを信じよ,と

 

情報爆発の現代は,

デカルトの言わんとした科学的ベクトルとは

まるで違う状況になっています

 

人々は真偽不明の小さな情報にすら

一喜一憂,阿鼻叫喚し,果ては

自身のみならず他者をも不幸にしてしまっている

 

こうした状況下にいて,

「私たちは科学的生活をしている」

と本気で思っているのだとすると,

本末転倒も甚だしいでしょう

それではまさに「ナントカの壁」に…

 

透明な鳥かごを破るには考え続けるしかありません

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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