tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:笑いは消化を助ける。胃散よりはるかに効く。(イマヌエル・カント)

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 イマヌエル・カント

 

                                                           Feb.11.2018 

 

 

イマヌエル・カントは1724年,ドイツの

ケーニヒスベルク生まれの哲学者です

 

西洋哲学研究者が最も研究したくなる哲学者

と言われます

 

カントは大学でライプニッツニュートンの自然学を

研究しました

ですが,父親の早逝により

家庭教師をして生計を立てながら,

長らく在野の哲学者でした

 

ケーニヒスベルク大学から

哲学教授として招かれたのは

46歳の時でした

以降,

純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判

の三批判書を執筆,哲学史上に名を残す

大哲学者となりました

 

カントは規則正しい生活習慣で知られていました

毎日午後3時半に,決まった道筋を散歩したため,

人々はカントの姿を見て時計の狂いを

直したと言われています

 

本日はこの,近代哲学界屈指の巨人カントの

生活感溢れる意外な名言のいくつかを中心に

ご紹介したいと思います

 

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まずは,お酒についてです

 

The alcohol makes our tongues lightly rhythmical,

but it also reveals our minds;

thus, it is the substance

that brings us one moral character,

or the frankness of our minds.

酒は口を軽快なリズムにする。

だが、酒はさらに心を打ち明けさせる。

こうして酒はひとつの道徳的性質、

つまり心の率直さを運ぶ物質である。

 

お酒は前頭葉のコントロール力をほぐし,

人を饒舌にさせ心を開かせるものです

その状態が,「心の率直さ」という

道徳的性質をもたらしてくれるというのです

 

裏を返しますと,「飲まないと言えない」,

素直になれない社会状況は

カントの時代にも多々あって,

それをお酒が劇的に変えてくれることもあって

よっぽど嬉しかったのでしょう

 

むしろカントの純粋さが伺えます

 

そしてカントの「愉しみ」とは…

 

   The pleasure in the greatest harmony

   with the true humanity

   is the pleasant meal with good fellows.

   真人間性

   最もよく調和する愉しみは、

   よき仲間との愉しい食事である。

 

愉しい食事,たしかにそれは

人の人間性を知るために最も馴染む行為です

 

ある心理学では,一緒に食事をすると何故

仲良くなりやすいかの理由の1つに,

ものを食べるときの崩れた顔を

相手に見られる,つまり素の自分を互いに同時に

見合うことがある,

と言います

 

カントも人間だったんだなぁ…

と実感するなごみのコメントです

 そういう意味で,カントの友情論は端的です

 

   Friendship is the equal relationship.

   友情関係は同等関係である。

 

 

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続きまして,恋する男とは…

 

   A man in a serious love will be

   confused, awkward, and little amiable

   before his lover.

   真面目に恋をする男は、

   恋人の前では困惑したり拙劣であり、

   愛嬌もろくにないものである。

 

この切なさ!

カント自身の告白でしょうか…?

 

恥じらいもなく器用で饒舌で,

愛嬌たっぷりの男子は不真面目かどうかは

さておき…

 

そして笑いについてのコメントです

 

   Laughter is the emotion that happens

   by the tensed anticipation

   changing into nothing suddenly.

   笑いとは張り詰められていた予期が

   突如として無に変わることから

   起こる情緒である。

 

緊張を突如破る笑い…

予測できる笑いは笑いづらいものです

 

世界共通の笑いに「コケ」がありますが,

誰もが疑わない瞬間にコケるからこそ,

お腹の底から笑えるのでしょう

チャップリンを筆頭に…

 

   Laughter helps digestion.

   It is much more effective

   than the stomach medicine.

   笑いは消化を助ける。

   胃散よりはるかに効く。

 

その通りです!

必然的に笑いは私たちの内臓を活性化し,

消化を促してくれます

胃腸薬なんかより効いて当然です

 

笑う門には福来ると言います

敢えてカント流にスローモーションで考えますと,

 

笑う→緊張がほぐれる→消化に良い→胃腸が安定

→心身の好調→幸福になりやすい

 

となるでしょうか…

tsuputon7.hatenablog.com

 

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こうしたコメントも残していたカントですが,

美学の世界でも「カント美学」とされ,

美学研究者にとってその原書購読は登竜門です

 

   There is no objective principle of beauty.

   美には客観的な原理はない。

 

小生の師事しました美学教授は

「私には美がなんなのかわかりません」

が口癖でした

逆に謎だからこそ,探りたくなる,

その思いを「世間からなんと言われようと」

継続して持ち続けるものが

美学者と呼ばれるのでしょう,

ともおっしゃってました

 

美とは何かを客観的に定義できたら,

それは三次元以下の何かであり,

物質化してしまいます

たとえば,次のような想いに浸ることができません

 

   The supreme makes us moved

   and the beatiful attracted us.

   The forest is supreme at night

   and beautiful in a day.

   崇高なものは我々を感動させ、

   美しいものは我々を魅了する。

   森は、夜崇高であり

   昼美しい。

 

ああ,素晴らしい…とため息の出てしまう崇高感,

そこに見る側と見られる側の二項対立は滅び,

ただただ感動の余韻のみが鳴り続く…

 

そこに客観的原理の入り込む余地はありません

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

 

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