tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:邪悪なこの世界に永遠のものはない,私たちの悩みでさえも (チャップリン)

 

f:id:tsuputon7:20190319152802j:plain

 

                                     March 19.2019

 

 

チャールズ・チャップリンは1889年,

英国ロンドンに生まれました

1歳のときに歌手だった両親が離婚

5歳のときに

声の出なくなった母親の代わりに初舞台,

その後,

父が亡くなり

母は精神異常で施設に収容されて,

チャップリンは4歳違いの異父兄と

孤児院や貧民院を転々としながら,

床屋,印刷工,ガラス職人,新聞の売り子,

パントマイム劇などの職に就きます


名門劇団に所属した後,

1913年のアメリカ巡業の際に

映画プロデューサーの目にとまり,

コメディ専門のスタジオに入社,

1914年に映画デビューし,

たちまち人気者となりました

 

ところが,第二次世界大戦後,

東側諸国との冷戦が始まった米国で

チャップリンの作風が

共産主義に理解を示していると非難され,

1952年,

国外追放命令を受け米国を去ります

映画出演も激減しましたが,

スイスに移り住み

幸せな晩年を送りました

 

本日はこの激動の人生の中で,

世界中を笑わせようとし続けた

チャップリン

名言のいくつかをご紹介したいと思います

 (和文拙訳)

f:id:tsuputon7:20190319161045j:plain



tsuputon7.hatenablog.com

 

 

 

まずは,

孤独の効用についてのコメントからです

 

Life could be wonderful

if people would leave you alone.

もし人々があなたを

一人にしてくれたならば,

人生は素晴らしいものとなるのに

 

孤独の効用に関しては,

アインシュタイン岡本太郎氏をはじめ,

様々な偉人たちが口を揃えて

名言を残しています

 

天才が偉業を残すためだけではなく,

孤独には私たちの心身を

シンプルでクリアにしてくれる

作用があります

 

ですが,気がつけば

ありとあらゆるしがらみに捕まり,

あるいは自ら入り込んで行って,

結果,相互依存的関係を構築し,

没個性の快楽に浸ってしまいます

 

 

f:id:tsuputon7:20190319153005j:plain

 

 

チャップリン

その不遇な幼少期のためか,

巨万の富を得た後でも

生涯派手な生活を

好まなかったと言います

 

The saddest thing I can imagine

is to get used to luxury.

私が想像できる最も悲しいことは

贅沢に慣れることだ

贅沢は時々味わえて初めて,

その価値がしみじみとわかります

毎日が毎日,

絵に描いたような贅沢であれば,

私たちの第二の天性「習慣」のために

その贅沢を当たり前と思ってしまい,

何のありがたみもなくなってしまいます

 

多かれ少なかれこれは思い当たる節が

多々あることですが,悲しいかな,

呼吸ができるありがたさや

水が飲めるありがたさを

毎瞬毎秒には感じられない生活を

してしまっています

 

では,チャップリンの欲は

何だったのでしょうか?

 

I remain just one thing,

and one thing only,

and that is a clown.

It places me on a far higher plane

than any politician.

私はただ一つのもの,

それだけでありたい

つまりそれは道化師だ

道化師であることは

どんな政治家よりも私を

より高く飛ぶ飛行機に乗せてくれる

まさに「天職」に恵まれた方の

至言な気がします

そんなチャップリンの創作には,

ほんの少しのものがあれば十分でした

 

All I need to make a comedy is

a park, a policeman and a pretty girl.

私が喜劇を作るのに必要なものは,

公園と警察官とかわいい女の子だけだ

 

そして喜劇の根源は,

一般大衆が日常生活では

無意識になっていることに気づくための,

鋭い視線でした

 

I don't believe that the public knows

what it wants; this is the conclusion

that I have drawn from my career.

私は一般大衆が,

自分たちが何を望んでいるのか

わかっていないんだと思う

これは私が自分の職業から

引き出してきた結論だ

一般大衆は

自分たちの行き場も,

行きたいところさえも自覚がないために,

コメディアンのように「笑い」という

ベクトルを与えてくれる存在を

重宝するのでしょう

 

f:id:tsuputon7:20190319153346j:plain

 

 

Only the unloved hate;

the unloved and the unnatural.

愛されてない人たちだけが憎しむ

愛されてない人と不自然な人

地球上が自分は愛されているのだと

心底思える人々ばかりなら,

そもそも戦争はあり得ません

大政治家たちによくあることですが,

「自分は愛せ」と,

間接的に周囲に命令を下し続ける存在が,

ひょんなことから

「偉いセンセイ」になってしまい,

結果,その人たちの利害関係が交錯して,

大小様々な紛争が起き,

ついには戦争に至ってしまいます

 

 

個人的に,

チャップリンのことばに触れて

率直に感じますのは,

その独自性が自然発光するかのように

哲学性を放っていることです

 

たとえば…

 

The hate of men will pass,

and dictators die, and the power

they took from the people will

return to the people.

And so long as men die,

liberty will never perish.

人々の憎しみは通り過ぎていき,

独裁者たちは死に,

彼らが人々から奪い取った権力は

その人々に戻されるものだ

だから,人々が死ぬ限りは,

自由は決して滅びることはないだろう

なんと深い洞察でしょう!

どれだけ憎悪が深い人でも,

死んでしまえばその憎悪は消え失せます

独裁者もいずれは死にます

そして人々から搾取したものは,

人々に返還される…

つまり

人々も独裁者も無常であるが故に,

「自由」は永遠に存在する…

ぞっとするような真実です

 

流石,

第二次世界大戦の最中,

ヒトラーを喜劇のネタにした

スケールの方です…

 

 

チャップリン

自分史にも正直な人でした

 

I went into the business

for the money,

and the art grew out of it.

If people are disillusioned

by that remark,

I can't help it. It's the truth.

私はお金を求めて

ビジネスの世界に入っていった

そして芸術はそこから芽生えていった

もしその意見に人々が幻滅するとしても,

私はどうしようもできない

それが真実だからだ

不遇な親子関係を乗り越えて,

文字通り生きるために,

言わば「なりゆき」で

コメディアンになってしまったものの,

気づけば世界史上に

名を残す存在となってしまっていた…

 

超一流と呼ばれる 人たちでも

ほとんど最初は自分が好きで

やってたことじゃなかったんだよ,

坂本龍一氏が若い人々に

メッセージを送っていたことを

思い出しました

 

tsuputon7.hatenablog.com

 

f:id:tsuputon7:20190319153458j:plain

 

 

I suppose

that's one of the ironies of life

doing the wrong thing

at the right moment.

ちょうどいい時に間違ってしまうのは,

人生の皮肉の一つだと思う

ここに実はチャップリン喜劇の

美学が垣間見られる気がします

あの絶妙なタイミングでの

「コケ」とか…

 

喜劇は悲劇です

悲劇は喜劇です

 

要は同一の現象を

どのように

どの距離で

どの角度から見るか,

それによってものごとは

違って判断されるものです

 

チャップリンはまた,

笑いとナンセンスとの関わりを

熟知していた人でした

  

Why should poetry

have to make sense?

なんで詩が意味なんか

持たなきゃいけないんだ

 

笑いそれじたいに意味はありません

笑いは遊びの真骨頂であり,

遊びに意味はないからです

チャップリンにとって,

きっと笑いは詩だったのでしょう

 

芸術に意味はない

 

大芸術家が口を揃えて

芸術の無意味性について語ってきましたが,

ピカソの以下のことばが

至言に思えてなりません

 

   People want to find a meaning

   in everything and everyone.

   That’s the disease of our age…

    人はあらゆる物や人に

    意味を見出そうとする

    これは我々の時代にはびこる病気だ…

 

意味→価値→お金→もの→欲望→意味…

このベクトルが

資本主義のセキツイだからでしょうか,

気づけば,

このループに疑問なく適応することが,

資本主義社会で生きること

になっています

 

f:id:tsuputon7:20190319153646j:plain

 

 

チャップリン喜劇王としてある種,

現代世界の普遍的無意識にまで

達しているかのような作品を

作り続けていた理由は

一体何だったのでしょうか

 

Nothing is permanent

in this wicked world -

not even our troubles.

邪悪なこの世界に

永遠のものなんかない,

私たちの悩みでさえも

 

明けない夜はない,

と言います

 

諸行無常

千変万化,

全てのものごとは変化する,

なのに気づけば永遠に変化しない,

「絶対的」不幸がある気に

なってしまっている…

 

作品を通して,チャップリン

いつしか西洋と東洋を通り越して,

地球の笑いのツボを

得ていたのかもしれません

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

tsuputon7.hatenablog.com

f:id:tsuputon7:20190319153937j:plain