July.8.2018
三島由紀夫は,昭和元年1925年,
東京都四谷生まれの小説家です
代表作は多数あり,ノーベル賞候補にもなった
海外にも広く知られた作家です
日本の文壇に与えた影響は大きく,
その交流も多岐に渡りました
とりわけ若い頃から三島氏の才能を認めていた
川端康成氏との濃密な関係は
よく知られています
こちらはノーベル賞受賞が決まった直後の
川端氏を三島氏と評論家・伊藤整が
2人で対話形式のインタビューをした
レアな記録画像です
謙遜する川端氏をフォローする
三島氏の,
細やかで優しい気遣いが伺えます
三島氏の絢爛豪華で詩的な文体の繊細さは,
人間を内外ともに普遍的領域にまで
透徹する眼差しを持っていたためでしょうか,
今でも色あせることなく,
新鮮さを感じさせます
本日はこの,三島由紀夫の
名言のいくつかをご紹介したいと思います
(英文拙訳)
まずは,三島の男女観が見られます
フレーズからです
男が女より強いのは、腕力と知性だけで、
腕力も知性もない男は、
女にまさるところは一つもない。
It is only in muscle powers and intelligence
that men are superior to women;
so, a man without them
has no point superior to a woman.
三島は幼少期から,
母,祖母,妹,
そして年上の遊び友だちの女性と
過ごす時間が多く,
ことばも女ことばを使うようにされるなど,
とても「男の子らしい」子どもではなかった
と言います
体力的にもあまり
恵まれていなかったようです
その原体験もあってでしょうか,
一種の女性崇拝に近い感情を
ここでは吐露しています
とりわけ,女性を月になぞらえた
次のコメントは,
リアルで優しく美的です
女性はそもそも、
いろんな点でお月さまに似てをり、
お月さまの影響を受けてゐるが、
男に比して、
すぐ肥つたりすぐやせたりしやすいところも
お月さまそつくりである。
Women are originally similar to the moon
in various points, and are influenced by her;
in comparison with men,
they are just like her
in that they get obese or thin at once.
感傷的といふことは
愛は断じて理解ではない。
Love is never understanding.
さらに…
嫉妬こそ生きる力だ。
It is jealousy that is the power to live.
…そして…
人間をいちばん残酷にするのは、
愛されてゐるといふ意識だよ。
It is the consciousness of being loved
that makes us most cruel.
ただしこれも,三島流に言いますと,
男女差はあるようです
男性は本質を愛し、女性は習慣を愛する
Men love essence, women habits.
Pablo Picasso: At the Lapin Agile
三島的逆説の論理が光る,
若者に向けたと思われますフレーズが
いくつかありました
ほしいものが手に入らないといふ
最大の理由は、
それを手に入れたいと望んだからだ。
The greatest reason
you can’t get what you want is
the fact you’ve wanted to get it.
老子の無欲の欲,
欲しがるから手に入らない
何も思わなければ手に入る
ないものねだりは,要するに煩悩ですが,
分かってはいても,してしまうものです
そして現代日本の草食系/悟り系男子にも
痛烈な一撃が…
生きることが難しいなどといふことは
何も自慢になどなりはしないのだ。
You can be proud of
saying to live is difficult.
当たり前のことをわざわざ言うことは
自慢になんかなりません
Pablo Picasso: Reading at a Table
ですが,SNS始めネット情報に,
こんなにも人生の「愚痴」が
沸騰し飽和している現状を三島が見たら,
何と言うことでしょうか…
そのほとんどがていの良い
エクスキュースでしかないと,
次のように断罪することでしょう
崇高なものが現代では無力で、
滑稽なものにだけ
野蛮な力がある。
Today, the supreme are helpless,
and only the ridiculous have
the savage power.
三島のいた頃とは
比べ物にならないくらい ,
「野蛮な力」が世界各国が
政権をつかめてしまう御時勢です
メガホンで
福島の後に沈黙しているのは野蛮だ
Keeping silent after Hukushima is barbaric.
と叫ばれたのが思い起こされます
そして三島は
とある女性に言わしめます
何のために生きてゐるか
わからないから生きてゐられるんだわ。
I can keep alive because I don’t know
what purpose I’m living for.
軽く脱力しつつも,
文尾を「だわ。」で締める感性に,
昨今数的にインフレーション気味の
自己啓発本の類ではお目にかかれない,
深く優しい説得力を感じてしまいます
あの最期は小生には理解を超えていますが,
残されたことばの端々にほとばしる
感性きらめきは美と知にあふれた
ものがたくさんありました
それでは,このへんで
Pablo Picasso: Woman in White