tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を:あなたの中に,あなたの知らない芸術家がいる(オーギュスト・ロダン)

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                                                          June.30.2018

 

 

オーギュスト・ロダン1840年

フランス生まれの彫刻家です

 

「近代彫刻の父」と称されます

 

代表作としましては,

地獄の門』と,その一部である,

上の写真の『考える人』があります

こちらは

東京上野の国立西洋美術館

前庭で座っておられる方です

 

日本人には何かにつけて馴染み深いですが,

西洋美術館以外でも,

京都府立博物館,静岡県立美術館などでも

座っておられます

 

映画『カミーユ・クローデル』では

ロダンと愛弟子カミーユとの

微妙な関係が,

迫力とテンポのあるタッチで

描かれていました

 

本日はこの,ロダン

名言のいくつかをご紹介したいと思います

和文拙訳)

オーギュスト・ロダン - Wikipedia参照

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まずは,芸術家と「火」についての

コメントからです

 

The artist must create a spark

before he can make a fire

and before art is born,

the artist must be ready

to be consumed by the fire

of his own creation.

芸術家は火を起こす前に

閃光を創り出さなくてはならない

そして作品が生まれる前に,

自分自身が作り出した火によって

燃やし尽くされる覚悟をしなくてはならない

 

芸術家は無から有を作ろうと試みます

火のない所で火を起こすのです

そして自ら起こした火によって,

自分の存在が燃やし尽くされるまで,

情熱の炎に包まれて作品を創る

激しい彫刻家ロダンならではの比喩です

 

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ヘラクレス

 

 

ではロダン自身の創作に対する考え方は

どのようなものだったのでしょうか?

 

I invent nothing, I rediscover.

私は何も発明しない,再発見するだけだ

彫刻は発明ではなく再発見である

 

これは仏師運慶が,

木の中に埋もれている仏様を救い出す,

と言って木彫りを続けたことを

想わせます

 

ただ,ロダンの彫刻の定義は

極めてシンプルなものでした

 

Sculpture is the art

of the hole and the lump.

彫刻は穴とこぶの芸術である

 

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ロダンにとって真の芸術家とは,

どのような存在だったのでしょうか

 

To any artist,

worthy of the name,

all in nature is beautiful,

because his eyes,

fearlessly accepting all exterior truth,

read there, as in an open book,

all the inner truth.

その名に値するどんな芸術家にとってであれ,

自然の中にあるすべてのものは美しい,

というのも,その目は

あらゆる外的事実全てを

怖がることなく受け入れ,

開かれた本のように,そこに

あらゆる内的真実を読み取るからだ

本物の芸術家であれば,自然の中の

特定の綺麗で洒落たものの中だけに

美を見出すのではなく,

一輪の花や雑草にでさえ,

美を見出せる

 

そしてロダン本人は,

私たちにとって最も身近な自然,

人体にその美を見出そうとしました

とりわけ裸体にこだわった理由を,

次のように述べています

 

Man's naked form belongs

to no particular moment in history;

it is eternal, and can be looked upon

with joy

by the people of all ages.

人の裸体は歴史上の

どんな特定の瞬間にも属さない

それは永遠であり,

あらゆる時代の人々に見てもらえるものだ

逆に考えますと,

服装は歴史に属し有限です

それは裸体を制度化する装置です

そうした意味で,

裸体は時空を超越した存在である

その永遠性の中に美を見出そうと,

ロダンは打ち込んでいたのです

 

ですから,『考える人』は,

「永遠に考える人」です…

  

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では,ロダンにとって彫刻は

「仕事」だったのでしょうか?

 

True artists are almost the only men

who do their work for pleasure.

真の芸術家とは楽しみのために

仕事をするほぼ唯一の人だ

ロダンにとって芸術活動は

楽しみのためのものでした

ピカソもそうですが,

超一流レベルの芸術家と呼ばれる方々は,

ほぼ芸術は遊びであり仕事ではない意識で

行われている気がします

 

画一的な社会からの要請に応える

仕事ではないからこそ,

多種多様な個性が発現するのです

 

The modes of expression

of men of genius

differ as much as their souls,

and it is impossible to say

that in some among them,

drawing and color are

better or worse than in others.

天才たちの表現形式は,

彼らの魂と同じくらい様々である

そしてそれらの中には

ドローイングと色が他のものの中でより

良かったり悪かったりする

などと言うことはできない

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地獄の門』: 上部中央に『考える人』が…

 

もちろん,ロダンといえど,

世の中からの批判や誤解に

苦しんだ時期もありました

ですが,

敢えて世間的評価を脇に置いて

自分を貫く強さを持ち,

リスクを犯さなければ,

革新を引き起こすことはできません

 

Nobody does good to men

with impunity.

誰であれ責任を負わないと

人々に益をもたらせない

 

時には失敗したことでしょう

いえ,彫刻などの

素材の扱いの難しい芸術なのですから,

成功することの方が稀だったはずです

ですが,

ロダンの考え方はポジティブなものでした

 

Nothing is a waste of time

if you use the experience wisely.

その経験を賢く使えば

なにごとも時間の無駄ではない

 

ロダンにとって彫刻は,

自分が発火させた情熱によって,

自分を覆っている無駄な部分を削ぎ落とし,

彫って刻んで真の自分に邂逅するための

自己求道の旅でしかなかったのかも

知れません

 

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自分で分かる範囲で自分探しをするか,

自分を全て投げ打って,

無限のポテンシャルに命がけで飛び込んで

リスク承知で開かれていく自己に出会うか…

 

紛れもなくロダン

後者のタイプだったのでしょう

 

Inside you there's an artist

you don't know about.

He's not interested in

how things look different

in moonlight.

あなたの中にあなたの知らない

芸術家がいる

彼はどうやって物が月光の下では

違って見えるかなどには興味がない

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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