tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:私はスプーンで人生を計り分けてきた(T.S.エリオット)

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                                                June.17.2018

 

 

T.S.エリオットは,1888年アメリカ生まれの

イギリス人詩人・劇作家です

 

代表作には『荒地』『カクテル・パーティ』

『詩と劇』などがあります

また,あのミュージカル『キャッツ』の

原作となった児童向けの詩

『キャッツーポッサムおじさんの

猫とつきあう方法』の作者でもあります

 

1948年には,

当時の詩文学への卓越した貢献に対して,

ノーベル文学賞が授与されています

 

本日はこの,T.S.エリオットの

名言のいくつかをご紹介したいと思います

和文拙訳)

T・S・エリオット - Wikipedia参照

※ちなみに,

女性作家ジョージ・エリオットさんとは

関係ない方のようです

tsuputon7.hatenablog.com

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イギリスではよく,

詩は芸術の最高形態だと言われます

シェークスピアを頂点に,

ウィリアム・ブレイクバイロンなど,

世界文学史上に不動の地位を

築いてきた詩人がたくさんいます

 

その中で,20世紀最高の詩人と言われました,

エリオットにとって「詩」とは… 

 

Poetry is not a turning loose of emotion,

but an escape from emotion;

it is not the expression of personality,

but an escape from personality.

詩とは感情を緩めさせるものではなく,

感情からの逃避である

詩は個性の表現ではなく,

個性からの逃避である

 

これは詩に対する一般論を

見事に破壊するコメントです

 

エリオットにとって詩は,

感情や個性の次元で回収されるものではなく,

その両者からの逃避だったのです

 

But, of course, only those

who have personality and emotions

know what it means to want to escape

from these things.

だがもちろん,

個性と感情を持つ人だけが

これらからの逃避を望むとはどういうことか,

分かる

つまり,

エリオットにとって詩人の大前提は,

個性と感情を持つことです

これは現実には困難なことでもあります

私たちの日常は他者との関わりであり,

その交差する日々の中で,

本当の自分オリジナルの感情や個性は,

考えれば考えるほど,

見当たらないからです

 

だからこそエリオットは,

この両者からの逃避が真の詩であり,

読者にオリジナルの自分自身に

気づかせてくれるきっかけとなる

と考えていたのです

 

そして辛辣な一言も…

 

The bad poet is usually unconscious

where he ought to be conscious,

and conscious

where he ought to be unconscious.

下手な詩人は大抵

意識すべきところに無意識であり,

無意識であるべきところに意識する

 

いわゆる「ツボ」を外してしまうのです…

これはどの世界でも言い得ることかも知れません

 

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続きまして,

「現実と理想」についてのコメントです

 

There is no absolute point of view

from which real and ideal can be finally

separated and labelled.

現実と理想を最終的に分けたり

レッテルを貼ることのできる

絶対的視点などない

詩が現実のものだとか,

理想のものだとかいう議論は

古今東西枚挙にいとまがないですが,

エリオットにしますと,

そうした議論は不毛なものでしかありません

そもそも,

何が現実で何が理想か,

考えだすと見えてくるのは,

それらの「無境界性」ばかりだからです

 

芸術の存在価値は

この無境界性に気づかせてくれることだ

と思われます

 

現実世界の情報過多の中,

何が自分にとって一番大切なのか…

 

We know too much,

and are convinced of too little.

私たちはあまりにも知りすぎているのに,

あまりにも確信がない

 

tsuputon7.hatenablog.com

 

こうして現実と理想の無境界地帯に

生き続けたエリオットは,

自身に次のように諭しかけます

 

I said to my soul,

be still, and wait without hope.

For hope would be hope

for the wrong thing.

So the darkness shall be the light,

and the stillness the dancing.

私は自分の魂に言った,

じっとして,希望を持たずに待て

というのも,希望が

間違ったものを求める希望になることだって

あるからだ

だから,暗闇が光となることもあるはずだし,

じっとしていることが踊りになることも

あるはずだ

 

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エリオットの意識の広大さのうかがえる

フレーズがありました

 

What we call the beginning is often the end.

And to make an end is to make a beginning.

The end is where we start from.

私たちが始まりと呼ぶものが

終わりであることがよくある

だから,終わらせることは始まらせることだ

終わりはスタート地点だ

時間が直線を描く

西欧近代合理主義の世界にあって,

この発言は,

時間が円環を描く東洋的ヴィジョンを

思わせます

 

出会いは別れの始まりであり,

別れは出会いの始まりである…

 

We shall not cease from exploration,

and the end of all our exploring

will be to arrive where we started

and know the place for the first time.

私たちは探検をやめるべきではない,

そうすれば探検の終わりが

スタート地点に到着することであり,

初めてその場所だと分かることだろう

生と死にも言い得ることでしょう

そして…

 

Only those who will risk going too far

can possibly find out

how far one can go.

あまりにも遠くまで行こうとする

リスクを冒すものだけが,

おそらくどれだけ遠くまで行けるのか,

分かり得る

 

 

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最後に,エリオットのポエジー

詩性溢れる端的なフレーズをいくつか…

 

Business today consists in persuading crowds.

今日のビジネスは群衆を説得することにある

 

資本主義社会の本質をズバリ言い当てています

 

Humankind cannot bear very much reality.

人類はあまり多くの現実には耐えられない

歴史を紐解けば一目瞭然です…

 

You are the music while the music lasts.

音楽が鳴っている間はあなたはその音楽だ

美的体験とは作品との一体化です

 

It is only in the world of objects

that we have time and space and selves.

私たちが時間や空間や自分自身を

持っているのは,物質界でしかない

五次元宇宙を直感していたのでしょうか…

 

I have measured out my life

with coffee spoons.

私はスプーンで

人生を計り分けてきた

繊細の精神の極みです

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

  

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