tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:僕たちは朝起きるのが待てなかった(ライト兄弟)

f:id:tsuputon7:20180527162050j:plain

  

                                                      May.27.2018

 

 

ライト兄弟は,

世界初の有人動力飛行を成功させた,

アメリカ人の兄弟です

兄のウィルバーが1867年,

弟のオーヴィルが1871年生まれです

 

トップ画像はライト兄弟によって

1903年12月17日,

アメリカ・ノースカロライナ州

キティホーク町キルデヴィルヒルズの砂丘で行われた

人類初の有人動力飛行の様子です

操縦はオーヴィル,

右で見守るのはウィルバーです

見ていた観客は5人だけでした

 

当時は蒸気機関車,蒸気船,車が交通手段の主流で,

航空関係としましては,

モンゴルフィエ兄弟の熱気球と,

そこから派生した飛行船くらいでした

 

ウィルバーとオーヴィルは

自転車屋さんを営みながら,

大学にもいかず,

二人で「空気より重い飛行機」の

動力飛行実現の夢に向かって邁進しました

 

研究資金は自転車屋経営でまかない,

何年も何度も実験・改良を重ね,

飛行機の操縦も自分たちで行いました

 

そして,本人たちも無理だと思っていた夢を

実現するに至ったのです

 

成功後も世間的に認知されるのに時間がかかったり,

後発の飛行機との比較や

さまざまな批判点・利権争いなどにもめげず,

最終的に功績が認められるに至りました

 

本日はこの,ライト兄弟二人の

名言のいくつかを御紹介したいと思います

和文拙訳)

※各英文末の(W)はウィルバーの,

   (O)はオーヴィルのことばです

ライト兄弟 - Wikipedia参照

f:id:tsuputon7:20180527155722j:plain

 (左)兄ウィルバー,(右)弟オーヴィル

 

 

まずは,人類にとって「飛行」とは…

 

The desire to fly is an idea

handed down to us by our ancestors who...

looked enviously on the birds

soaring freely through space...

on the infinite highway of the air.(W)

飛びたいという欲望は,

空という無限の高速道路で

空間を自由に飛翔する鳥たちを

うらやましげに見ていた私たちの先祖たちによって,

受け継がれてきたものなんだ

 

鳥の様に飛べたらな…

 

子どもの頃,何度となく思うことです

明らかに不可能かつ不自然なこの想いを

兄弟は現実化してしまったのですから,

「イメージは実現する」

ものです

 

ビジョンの広い兄ウィルバーに比べて,

弟オーヴィルは現実主義的でした

 

The airplane stays up

because it doesn't have the time to fall.(O)

飛行機は落ちる時がないから,飛んだままだよ

 

何だか対照的な性格がうかがえます

 

 

ウィルバーは航空の将来的可能性にむけ,

次のように述べていました

 

I wish to avail myself of all that is already known

and then, if possible, add my mite to help

on the future worker

who will attain final success.(W)

私はすでに知られている全てのことを活用し,

そのあと,できることなら,

最終的に成功を果たす未来のエンジニアの

役に立つよう,私のダニを付け加えたい

 

「私のダニ」…

自身の空前絶後の業績に対し,

実に謙虚過ぎる表現です

人類を二次元的平面移動から,

三次元的立体移動を可能にする原理の発明という,

途方も無い革命を起こした方のこの発言は,

ニュートンの知的謙虚さを想わせます

 

私がより遠くを見られてきたのは、

巨人たちの肩に乗っているからだ。

tsuputon7.hatenablog.co

f:id:tsuputon7:20180527164105j:plain

 

 

過去の先祖たちにも,未来の子孫たちにも,

等しく敬意を払う兄の一方,

オーヴィルは進歩への気概を隠しません

 

If we all worked on the assumption

that what is accepted as true is really true,

there would be little hope of advance. (O)

もし私たち全員が真実だと受け入れられていることを

本当に真実だとする仮定に基づいて働くなら,

進歩の望みはほとんどないだろう

破壊なくして,再生はありません

既成のもの,既得権益などに固執している限りは,

「古き良き伝統」ですら,

生きて伝承されることはおぼつかなくなります

 

かの狂言師野村萬斎さんが,

日本の伝統を熟知しつつ,

かつての狂言界の

頑ななまでに保守的な「空気」を破壊して,

シェークスピア作品などの要素も取り入れた

実験精神も持ち合わせて,

前人未到の境地に踊り込まれている様に…

tsuputon7.hatenablog.com

f:id:tsuputon7:20180527164033j:plain

 

 

ウィルバーは堅実に,

過去の積み重ねによってこそ,

人類の知恵は深まって行くと考えていました

 

Men become wise just as they become rich,

more by what they save

than by what they receive.(W)

人類は,ちょうど裕福になる時の様に,

受け取るものによってよりは貯めたものによって,

もっと賢くなる

 

兄弟は初飛行に成功する数年前までは,

上手くいくなどとは

全く想像だにしていなかったようです

 

I confess that in 1901 I said to my brother Orville

that man would not fly for fifty years.(W)

1901年に,私は弟オーヴィルに,

人類は今後50年間は空を飛ぶことなど

出来ないだろうと言ってしまってたのです

 

ところが,

なんと2年後に実現してしまったのです!

 

あの山中伸弥教授が,

iPS細胞の研究を始めた時には

理論上は可能かもしれなけれど,

周りからは何十年かかっても出来るかどうか

分からないのでは,

山中はおかしくなってしまったんじゃないか,

と疑問視しかされなかったと仰っています

 

当のご本人もそれを百も承知で,

たとえ全くなんの成果も出ず終わったとしても,

そんなクレージーなことをした研究者がいたなぁ,

と思ってもらえたらそれでいい,

くらいに考えて始められたそうです

 

誰もやったことがないことを続ける勇気で…

 

ですが約2年後に,

世紀のブレークスルーを「偶然」実現されたのです

tsuputon7.hatenablog.com

f:id:tsuputon7:20180527164223j:plain

 

 

基礎研究というものは,一度成功すれば,それこそ,

まるで鳥の様に羽ばたき,研究者本人の予想を

はるかに凌駕していくものです

 

たとえば,オーヴィルはこう言っていました

 

No flying machine will ever fly

from New York to Paris.(O)

どんな飛行機械も,

ニューヨークからパリまで飛ぶことなど,

絶対にありえないだろう

 

ありえたどころか,

100年経たずに人類は宇宙に飛び出しました…

もはや火星移住まで

真剣に計画されているほどです

 

今ではこんなものまで作り出し,

悠々と飛ばしてしまってます…

 

f:id:tsuputon7:20180527160226j:plain

世界最大の旅客機・エアバスA380

乗客544人,航続距離約15,000キロ以上

f:id:tsuputon7:20180527160641j:plain

1981年から2011年まで,

135回打ち上げられたNASAスペースシャトル

 

 

オーヴィルは言います

 

Isn't it astonishing

that all these secrets have been preserved

for so many years

just so we could discover them!(O)

これらの秘密全てが,こんなにも長い間,

僕たちが発見できるためだけに

隠されてきていたなんて,

驚きだとしか言いようがないよ!

 

まるで旧約聖書の『創世記』で,

天地創造七日目に全てを作り終えた神が,

自身の作品を見て,

なんと美しい!と驚かれた,

とするくだりのようです

 

不可能でしかないと思われたことに,

世間の目など一切気にせず

勇気を振り絞って,

文字通り「狂気の沙汰」で果敢に挑む人,

そこまで命懸けで没入できる何かを

持つ人の存在そのものは,

美的エネルギーで自然発光します

 

もはやその突き動かされるような衝動は,

人智を超えたものなのかも知れません

ウィルバーはしみじみと呟きます

 

We could hardly wait to get up in the morning.(W)

僕たちは朝起きるのが待てなかった

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

tsuputon7.hatenablog.com

f:id:tsuputon7:20180527165053j:plain