tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:自分がいるどんな鳥かごからも飛び出せ(ジョン・ケージ)

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樋田哲仙『モズ』

  

                                             April.14.2018 

 

 

ジョン・ケージは,1912年アメリカ生まれの

楽家・作曲家・詩人・キノコ研究家です

 

現代音楽,特に実験音楽のカリスマ的存在です

あの坂本龍一氏も,

学生時代にジョン・ケージを聞いて衝撃を受けた

と仰っています

 

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グランドピアノの弦に,ゴム・木片・ボルトなどの

異物を挟んで打楽器的に改造した,

プリペアドピアノを考案されました

 

シュールレアリスム(超現実主義派)の画家

マックス・エルンストや,

思想家バックミンスター・フラーとの

交流もありました

 

1945年からの2年間,

コロンビア大学鈴木大拙から禅を学びました

そして易経などの東洋思想にも興味を持ち,

それを自らの作曲活動に活かした偶然性の音楽,

「チャンスオペレーション」を開発しました

従来の西洋音楽の価値観を覆すもので,

その極みが「4分33秒」と言う,

センセーショナルなものです

 

この「演奏」を初めて見た方は,多かれ少なかれ,

感情を揺さぶられずにはいられないと思います

 

そうした意味で【閲覧注意】ですが,

あえて貼らせていただきます…

m.youtube.com

 

本日はこの,現代前衛音楽の父,

ジョン・ケージの名言のいくつかを

ご紹介したいと思います

ジョン・ケージ - Wikipedia参照

 

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第5回京都賞を受賞したジョン・ケージ

 

ジョン・ケージ | 第5回(1989年)受賞者 | 京都賞

 

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まずは先程の,「4分33秒」を「演奏」として

提出した時の,ケージが述べた理由です

 

Everything we do is music.

我々がする全てのことは音楽だ

 

この発想自体が,従来の西洋音楽の既成概念を

根底から破壊するものでした

 

I can't understand

why people are frightened of new ideas.

I'm frightened of the old ones.

私には人々がなぜ新しいアイデアを怖がるのか,

理解できない

私は古いアイデアが怖い

 

とりわけ禅を知ってから,ケージの音楽は

「東洋的なるもの」を西洋的音楽環境の中に

積極的に取り入れたものとなりました

 

If you develop an ear for sounds that are musical

it is like developing an ego.

You begin to refuse sounds that are not musical

and that way cut yourself off

from a good deal of experience.

もし音楽的な音に対する耳を開発すれば,

それはエゴを開発するようなものだ

あなたは音楽的でない音を拒み始め,

そうして,たくさんの経験から

自身を切り離してしまうのだ

 

「人工対自然」という二項対立を考えました時に,

西洋文化は「人間中心主義」のキリスト教文化を

根幹としてきましたから,

どうしても人工依存になります

自然環境は被造物の長である人類が,

自らの利益のために活用すべきものである…

 

それに対しまして,東洋思想,

例えば老子に見られます「無為自然」の思想では,

人類は自然の一部であり,

その自然力に生かされているのだという

発想になります

 

ケージは「音楽的なもの」=「人工的なもの」にのみ

関心を持ち,それ以外の音は排除するしようとする

西洋的風潮に真っ向から意義を唱えたのでした

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自宅でキノコ栽培するなど,

ケージは主食が「キノコ」と答えるほどの方でした

その心は,東洋思想,とりわけ日本の文化を尊重し

実践する姿勢にありました

 

I was sure that haiku poems, Japanese,

would to have to do with mushrooms,

because hikes are related to seasons.

私は日本の俳句が

キノコと関係があるに違いないと確信した,

というのも俳句は季節と関係があるからだ

 

なぜかキノコと俳句を結びつける所に,

新鮮さを感じてしまいます…

 

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ケージの「脱西洋」の姿勢は一貫していました

 

If something is boring after two minutes,

try it for four.

If still boring, then eight. 

Then sixteen. Then thirty-two.

Eventually one discovers that it is not boring at all.

もし何かが 2分経っても退屈なら,

4分試してみることだ

でもまだ退屈なら,その時は 8分,

16分,32分

最終的にそれは全く退屈なものではないことに

気づくものだ

 

ここにははっきりと「速度」を追求する一方の

西洋資本主義文明に対する,

痛烈なアンチテーゼがあります

 

「待つこと」

 

それにより最初は退屈に思えたことも,

徐々に自分の心身が変化し,

結果,実は全く退屈でないものだと

気づきさえすると…

 

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The first question I ask myself

when something doesn't seem to be beautiful

is why do I think it's not beautiful.

And very shortly you discover

that there is no reason.

何かが美しいと思えない時,

私がまず自問するのは,

なぜそれが美しくないと思うのかだ

すると,すぐさま,

理由などないことが分かる

 

何かを「美しい」と思う瞬間は,

それが自分の趣味であったり,既成概念であったり,

先入観などとそもそも合致し,

「良い」印象をもたらすからでしょう

そしてそうでないものは,

そうしたものに合致しないからでしょう

 

ですが,その対象に出会う前の自分を変化させ,

よくよく見れば,

そこに新たな「美」を発見する機会が

生まれるかもしれません

現象に対するこの徹底的な謙虚さこそ,

ケージが追求した美学でした

 

自分「がする」ことからでなく,

自分「である」こと,

自分「がいる」ことから,

出発すべきだとケージは考えました

 

It is not irritating

to be where one is.

It is only irritating to think

one would like to be somewhere else.

自分がいるところにいることは

イライラするものではない

自分がどこか他に行きたいと思うことが

ただイライラするんだ

 

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音作りに対するケージの姿勢も,

ドレミファソラシドの音階に束縛されることなく,

「無」からの創造でした

 

There is no such thing

as an empty space or an empty time.

There is always something to see,

something to hear.

In fact, try as we may to make a silence,

we cannot.

うつろな空間やうつろな時間

ほどのものはない

常に見るべきもの,

聞くべきものがあるからだ

現に,いくら沈黙を作ろうとしたって,

私たちには作れない

 

「沈黙」は作れない!

 

ケージはある時,ハーバード大学の無響音室に入り,

そこでは自分の体内の音しか聞こえないことに気づき,

衝撃を受けました

 

生きている限り私たちは「沈黙」を作れない

 

ということに気づいたのです

自らブラックホールを作れないように… 

 

このような姿勢ですから,ケージもピカソらと同様,

「永遠の子ども」だったに違いありません

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Value judgments are destructive

to our proper business,

which is curiosity and awareness.

価値判断は

私たちが適切に仕事するには破壊的だ,

というのもそれは好奇心と気づきだからだ

 

価値判断には前提となる基準があり,

それに満たないものは切り捨てられます

ですがケージは,既に見ましたように,

何かが切り捨てられるっていうことに対する

根源的な疑問を,

音楽を通して訴え続けたのです

 

ここで言う「適切に仕事する」とは,

ケージにとっては「好奇心と気づき」そのものであり,

それを貫く存在は過去にでも未来にでもなく,

ただただ現在にのみ生き続け「永遠の子ども」

でしかあり得ません

 

Why do you not do as I do?

Letting go of your thoughts

as though they were the cold ashes

of a long dead fire?

なぜ私がしているようにしないんだ?

まるでとっくに消えた炎で

冷たくなった灰であるかのように,

自分の考えを手放すんだ

 

禅で言います「今・ここに生きる」を,

全身全霊で実現しようとし続けた,

稀有なアメリカ人音楽家

ジョン・ケージ

 

彼にとっての音楽は,ピカソのとっての作品同様,

室内を飾るためだけの心地よいものではなく,

物質至上主義的社会の中を戦い生き延びるための

「武器」だったのかもしれません

 

Get yourself out of whatever cage

you find yourself in.

自分がいる

どんな鳥かごからも飛び出せ

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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