tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:幸せに欠かせないのは,欲しいものが何か足りないことだ(ラッセル)

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                                                     April.13.2018

 

 

バートランド・ラッセルは,

1872年イギリス生まれの

哲学者・数学者・論理学者です

 

日本では戦前から

大学入試問題でよく英文が採用され,

現在でもその格調高い文体のために「難問」

になることが多々あります

 

ケンブリッジ大学で教鞭をとりましたが,

1916年には平和運動と夫人解放運動に熱中したため,

教職を解任されています

 

1950年には,

「人道的理想や思想の自由を尊重する,

多様で顕著な作文を表彰して」

ノーベル文学賞が授与されています

 

1955年,アインシュタインとともに

ラッセル=アインシュタイン宣言」を発表し,

核廃絶運動の先駆けとなりました 

 

個人的にはあまりにも由緒正しいイギリス貴族出身で,

とても厳格なイメージを持たれやすい方なのですが,

冷静にミクロ・マクロに見ますと,

どこかほほえましくコミカルにさえ感じられる方です

 

 

本日はこのバートランド・ラッセル

名言のいくつかをご紹介したいと思います

バートランド・ラッセル - Wikipedia参照

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まずは,数学者でもあり哲学者でもあった

ラッセルならではの一言です

 

Science is what you know,

philosophy is what you don’t know.

科学は分かってることだが,

哲学は分かっていないことである

 

科学の役割は,現象世界を説明することです

対象となるものが「どうやって」そのようであるのか

を記述することです

一方哲学は,

現象世界が「何故あるのか」「何なのか」

について問います

つまり,

科学は分かっていることを相手にし,

哲学は分かっていないことを相手にするのです

 

この意味では哲学は

「教育」されるものではありません

教育についてラッセルは次のように述べています

 

Men are born ignorant, not stupid.

They are made stupid by education.

人は生まれつき無知だが,愚かなのではない

彼らは教育によって愚かにされる

 

無知の知」は,誰しも生まれつき備えています

ラッセルの言わんとする「愚か」とは

「考えない」という意味合いだと思われます

ラッセルによりますと「教育」は

「考えない人」の育成であり,

ものごとを鵜呑みにしかしない人の育成であり, 

哲学しない人の育成です

tsuputon7.hatenablog.com

 

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Paul Klee: One Who Understands

 

 

さらに痛烈に,ラッセルはこうも言います

 

The whole problem with the world is

that fools and fanatics are always

so certain of themselves,

and wiser people so full of doubts.

世の中の全ての問題は,

愚か者と狂信者たちがいつもあまりにも

自分たちのことを確信しているのに,

より賢い人々はあまりに疑い深いことにある

 

現在の国際情勢を見ていますと

ぐうの音も出ない,当意即妙のコメントです

政治活動家の一面もあったラッセルは,

とりわけ国を動かしたり世界を動かしたりしていると

思い込んでいる人たちには辛辣でした

 

None but a coward dares to boast

that he has never known fear.

臆病者だけが恐怖など覚えたことがないと,

あえて吹聴する

 

この激しい思いは,核廃絶を第一とする

戦争反対の強い立場からのものでした

  

War does not determine who is right;

only who is left.

戦争は誰が正しいのかを決定しない

誰が残されるのかだけを決定する

 

 

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The Man Under the Pear Tree

 

 

ラッセルはいわゆる「大衆政治」に対する

強い懸念を抱いていました

 

 

The fact that an opinion has been widely held 

is no evidence whatever

that it is not utterly absurd.

ある意見が広く支持されているからといって,

それが完全に馬鹿げたものではない

という証拠には,全くならない

 

 

民主政治の最も誤解されやすいとされます

基本的概念に,「多数決原理」が挙げられます

 

「多数」の人たちが支持したことが採用される…

その「多数」が誤った判断をしていたとしても,

それは採用されるわけです

ラッセルの言います「完全に馬鹿げたもの」を

多数が支持し,結果,

最悪な惨禍を招いたことがある事実は,

ナチスドイツなどの歴史を紐解きましても

一目瞭然です

tsuputon7.hatenablog.com

 

 

こうしたラッセルの「幸福論」は,

ブラックユーモアとしてユニークです

 

The the secret to happiness is to face the fact

that the world is horrible.

幸せの秘訣は,

世の中は恐ろしいのだという事実に直面することだ

 

 

 「世の中は恐ろしい」ことを

はっきりと認識して初めて幸せになれる…

 

誰にも騙されず,誰も騙すことなく,

現実に直面する勇気を持ち,

その危険性をつぶさに観察した上で,

自ら選択した生を生きる

 

役に立たない番犬のように人を信じやすい

脳天気な小生にとりましては,

最も無意識になってしまうポイントです…

 

To conquer fear is the beginning of wisdom.

恐れを克服することこそ知恵の始まりである

 

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Paul Klee: Girl in Mourning

 

 

このように舌鋒鋭いラッセルでも,

希望溢れる「ポジティブ」メッセージも残しています

 

Italy, and the spring and first love

all together should suffice

to make the gloomiest person happy.

イタリアと春と初恋は全て,もちろん,

最も陰鬱な人を幸せにするのに十分だ

 

 

さすがイタリア!

春や初恋に並んで「最も陰鬱な人」すら

幸せにできるんです!

とりわけゲルマン系の方々からして,

あの底抜けの明るさは憧れの対象になりやすい

ようです

 

かのゲーテも,その旅路で見聞し感激したことを

「イタリア紀行」として記したほどですから… 

tsuputon7.hatenablog.com

f:id:tsuputon7:20180413112142j:plainPaul Klee: Movement of Vaulted Chambers

 

 

ラッセルは満たされた人生を送るための

不可欠な要素として,愛と知をあげています

 

The good life is one inspired by love

and guided by knowledge.

よき生とは愛に鼓舞され

知に導かれる生である

 

ラッセル自身,アリストテレス以来の論理学者として

学問をし,政治運動関係で二回も投獄され,

 4回も結婚をするという波乱の生涯を送った人でした

 

こうした社会的に大変な苦労人は,

表立っては冗談も通じないようなイメージですが,

その実,端から見ていますとユーモラスで,

どこか憎めないところもあります

 

あの 20世紀最大と言われました天才哲学者,

ウィットゲンシュタインを発掘したのは

ラッセルですが,

ほどなくそのウィットゲンシュタイン自身から,

論文をを巡るやりとりをした上で,

ラッセルは分かっていない」と袂を分かたれる

茶番もありました

 

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Paul Klee: Angel Applicant

 

 

そうしたラッセルのことばとして読むと,

とても感慨深い一言がこちらです

 

The only thing that will redeem mankind

is cooperation.

人類をあがなわせる唯一のものは

協力である

 

そして個人的に,ラッセルの送った人生を踏まえた上で

見ました時に,次のことばが至言だと思われました

 

To be without some of the things you want

is an indispensable part of your happiness.

幸せに欠かせないのは,

欲しいものが何か足りないことだ

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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 Paul Klee: Black Columns in a Landscape