tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:毎日新しい考えが生まれ,心は天気とともに移り変わる(モンテーニュ)

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                                                 March.27.2018

 

 

ミシェル・エケム・ド・モンテーニュは,

1533年フランス生まれの哲学者です

モラリスト懐疑論者・人文主義者とも言われます

 

主著『エセー』は,現実の人間社会を

モンテーニュ独自の視点で観察し綴った随筆で,

フランスをはじめ,各国に影響を与えました

 

昨日,  日ごろ大変お世話になっております,

大変な読書家でおられ人文学にも造詣のお深い

目上の方とご子息に久し振りにお会いし,

お茶をご馳走して頂きました

その席でその方が,

高校時代に夏休みの唯一の課題で

「自分の興味のある哲学者について1冊本を読み,

    それについてまとめる」

というものがあった際,

モンテーニュを選ばれたとのことでした

 

 

倫理の先生が,普段の授業でまんべんなく

いろいろな哲学者の考え方を端的に紹介されていて,

その多様な思想の中から気になるものを一つ

自由に選んでいいというものだったそうです

夏休みの課題はそれ以外一切出なかったとのこと,

なんと素晴らしい教育でしょう! 

 

このご経験がきっかけで,ご本人もご家族も

バリバリの化学系の理系エキスパートで

おられるにもかかわらず,

今でも哲学にご興味がおありとのことです

  

 

小生は以前,以下の記事で

モンテーニュの名言についてご紹介いたしました

 

本日は,  昨日のディスカッションで盛り上がりました

ポイントをヒントに,  第二弾としまして,

モンテーニュの名言のいくつかを

ご紹介したいと思います

ミシェル・ド・モンテーニュ - Wikipedia参照

tsuputon7.hatenablog.com

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 まずは,「恐れ」についてのコメントです

 

The thing I fear most is fear.

私が最も恐れるものは,恐れである

 

恐れの対象は未知のものです

既知のものは恐れることが出来ません

よくわかっているからです

 

モンテーニュは,その恐怖そのものを最も恐れると,  

自分を俯瞰する目線を持ってメタ認知しています

大役者が,

演じている自分を見ている自分がいると感じる,

あの視座です

そう客観視することで,  モンテーニュ自身は

恐怖に自分の全てを奪いさられることを

避けていたのでしょう

 

A man who fears suffering is

already suffering from what he fears.

苦しみを恐れる者は,

その恐怖だけですでに苦しんでいる

 

苦しみがあるのは当然のことです

ですが,その当然のことを被害妄想的に捉え,

不安から派生し恐れを抱いてしまった瞬間に,

それは別の文脈となってしまいます

つまり,根源的な苦しみに

さらに恐怖という苦しみを追加しているのです

 

悪循環とはこのことを言うのでしょう

ですが,もちろん個人的にもこうした,

苦しいからこそ恐怖感を覚えてしまった経験は,

数知れません

 

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続きまして,  人の「発言」についてです

 

Let no man be ashamed to speak

what he is not ashamed to think.

誰でも恥ずかしいと思わないことは,

恥ずかしがらずに言うべきだ

 

恥ずかしいと思うことは恥ずかしがっても,

恥ずかしいと思わないことは,

恥ずかしく思わずに発言するべきだ

一般的に私たち日本人が不得手とする,

最も西欧諸国の方々から疑問視される

ポイントの一つです

 

この点につきましては賛否両論いろいろありますが,

アメリカ人の方々には,クリアに自分の意見を

素直に言う場が,社会の様々なシーンであります

そもそも,  幼稚園児の頃から

ディベートの時間が設けられています国ですから,

実は日本と直接比較しても仕方がないかも知れません

ですが,  やはり今後の真の国際化を考えたときには,

避けて通れないことだと思います

 

かく言うモンテーニュも,

聞く耳を持つな,と言っているわけではありません

むしろ自分の意見を,頑として曲げない人は

愚かの極みだとしています

 

Stubborn and ardent clinging to one’s opinion

is the best proof of stupidity.

自説に固執し,頑なに夢中になることは,

愚鈍さの最たる証拠である

 

相手とのディスカッションの中で,

自説の間違いに気づきそれを修正すること,

それは何ら恥ずかしいことではないはずです

お互い人間であり,  お互い様ですから… 

なのに,  聞く耳を持たず,「自分は正しい」の

一点張りの方は,  最も愚かである

モンテーニュは言います

 

プラトンも次のように語っています

 

賢者は,話すべきことがあるから口を開く

愚者は,話さずにはいられないから口を開く

 

ジャーナリズムの大半の情報は後者に当たるのでは…

と,  昨日お茶をしたときにお相手の方が

しみじみ仰っておられました

 

その方がある時,  数学者ピーター・フランクル氏の

講演会に行かれた時のことを話してくださいました

そこでフランクル氏は,

新聞は1週間に1回しか読まないと仰っていたそうです

その理由は,

無駄な情報は消えてなくなる,

大事な情報は残っていく,

だから,  1週間たっても残っている情報が

大事な情報なので,それで十分なんだと…

素晴らしく合理的な発想だと,感動いたしました

時のフィルターにかけた,引き算の美学です

売文は読むには能わずです

 

こうした考えのフランクル氏は

賢者の部類に入る方だと思います

モンテーニュもこう言っています

 

A wise man never loses anything, if he has himself.

自分を持っていれば,賢者は何も失わない

 

 

tsuputon7.hatenablog.com

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次に,「旅」についてのコメントです

 

Whenever someone asks me

why I go on a trip,

I usually answer to it as follows;

 “I know what I will avoid very well,

   but don’t know what I’m seeking for.”

私は旅行に出る理由を尋ねる人があると,

いつもこう答えるようにしている

「自分が何を避けようとするのかはよくわかるのだが,

何を求めているのかはよくわからない」と

 

消去法の旅!

とても斬新な発想だと思います

避けるべきところを押さえておいて,

そうでない所のどこかに行く…

自分でも自分が何を求めているかもわからない…

これは旅の話に収まらず,

モンテーニュの人生観をも,そのままに

表しているのではないでしょうか

 

それは「自分探し」の旅ではなく,

避ける所を除いたあてどない旅…

まるで蝶々の軌跡の様なイメージが思い浮かびます

 

とは言いましても,

船に関しては別だったようです

 

No wind serves him

who addresses his voyage to no certain port.

目指す港がないような航海をしていたら,

どんな風が吹いても助けにならない

 

ビジョン・アンド・ハードワークです!

 

航海をするからには,

後悔しないよう,  

目指す港がはっきりしていなければなりません

そうであってこそ,初めて風を利用できます

 

もっとも,

マーフィーも言いましたように,

いい風が吹いても心の帆がちゃんとしていなければ

なりませんが…

 

tsuputon7.hatenablog.com

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モンテーニュは人との関係について

次のように述べています

 

Lend yourself to others,

but give yourself to yourself.

自分を他人に貸しなさい,

しかし自分だけにしか自分を与えてはならない

 

手ですとか,価値ですとか,お金ですとか, 

自分の持っているものを「貸す」のはいいけれども,

自分自身を「与える」のは良くない…

それでは自分の自由意志を奪われ,

その人の奴隷になってしまうからでしょう

 

モンテーニュは実に柔軟な発想の人でした

 

The commonest nature of the opinions

of us human beings is its diversity.

我々人間の意見の最も普遍の性質は

多種多様ということである

 

今を去ること約500年前のフランスで,

すでに意見の多様性について言及していたのです!

中世カトリック教会の呪縛から解放され始めた

ルネッサンス期にあって,  

モンテーニュの「人間性復活」の思いは,

各人の個性を認めることでした

 

こうした見解がかなり新鮮に思えてしまうのは,

小生だけでしょうか…

いいえ,そうではありません

昨日ディスカッションさせて頂きました方は,

モンテーニュの『エセー』の印象を,端的に

「人は変化していいんだ」

というメッセージだったと思う,

と,端的明瞭に仰っておられました

 

それが集約されたフレーズを見つけました

 

As we have new ideas every day,

our minds change along with weather.

毎日新しい考えが生まれ,

心は天気とともに移り変わる

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

 

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