tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:砂漠が美しいのは,どこかに井戸をかくしているからだよ(サン=テグジュペリ)

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                                                             Jan.28.2018 

 

 

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリは,

1900年,フランスリヨン生まれの小説家です

星の王子さま』の作者として,

世界的に知られています

ニックネームは「サンテックス」です


また彼は,飛行機のパイロットでもありました 

1935年,フランス-ベトナム間最短時間飛行記録に

挑戦しましたが,

機体トラブルでサハラ砂漠に不時着したものの,

3日後に徒歩でカイロに到着し,

一命を取り留めました

後に,この体験をもとに

星の王子さま』を書きました

 

作家として国際的に名を馳せてからも,

フランス軍関係のパイロットなどとして

飛行し続けました

 

敵となったドイツ空軍にも信奉者がいて,

サン=テグジュペリが所属する部隊とは

戦いたくないと語った兵士もいたそうです

 

また,  最期は,

自由フランス軍偵察機に乗っている時,

地中海上で撃墜され消息を断ったのですが,

彼の飛行機を撃ったパイロットが,  

「彼だと知っていたら撃たなかった」

と述べています

 

本日は,  この国境を越え

敵からも愛された小説家であり,

終生パイロットであり続けた,

サン=テグジュペリの名言のいくつかを

ご紹介したいと思います

 

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サン=テグジュペリ 

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まずは,  単刀直入な一言から…

 

    It is only with the heart

    that one can see rightly;

    what is essential is invisible to the eye.

    心でしか,

    ものごとはちゃんと見えないんだよ

    肝心なことは目に見えないんだよ

 

パイロットという職業は,

目の前の青空や,雲海や,眼下の景色を見ながらも,

最終的には到着地に無事着くことがミッションです

目に見えることだけではなく,

心の中で想像力をフル活動させて,

進んでいく必要があります

 

作家・サン=テグジュペリのこのことばに,

パイロット・サン=テグジュペリ

そうした経験が隠されている,

と読み込むのは深読みでしょうか… 

 

また,  次のことばも,

空を飛びながら思ったのではないかと…

 

    In the face of an overpowering mystery,

    you don’t dare disobey.

    不思議なことが多すぎると,

    あえて逆らおうなんて気がしないものだ

 

上空の天候は非常に複雑な要素が絡み合って,

パイロットにとって

「不思議」なことが多すぎるはずです

地上で,例えば車や自転車の運転などでは

2次元平面で済むわけですが,

飛行機は3次元空間ですから…

今更に理解できない状況に「逆らおう」

などとした日には,

機体がぶれるのは目に見えています

 

サンテックスはそうした経験から,

地上に降りて人間社会にいる時も,

「不思議なこと」がありすぎて,

今更逆らえない,という気分になったのでは… 

 

私たちの卑近なところでは,

たとえば ABESEIKEN とか…

 

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続きまして,

約80年ほど前のことばとは思えぬフレーズです

 

  Men have no more time to understand anything.

  They buy things all ready made at the shops.

  But there is no shop anywhere

  where one can buy friendship,

  and so men have no friends any more.

   人間たちは時間がなさすぎて何も分かっていない

   ぜんぶできあがったものを店で買う

   でも友だちを売ってる店なんてないから,

   人間たちにはもう友だちがいない

 

資本主義社会がますます加速する20世紀初頭に,

サンテックスは「既製品」に対する違和感を

禁じえなかったのでしょう

また「時間」がなくなっていく感覚が,

ミヒャエル・エンデ の言う「時間泥棒」に

通じるものがあります

 

そして,友だちですら買おうとする始末

 

でも,  そんな店はありませんので,

人間にはもう友達がいない…

 

資本主義社会が大転換点を迎えている昨今,

これからの私たちの人間関係は,

何に価値をおき,何に価値をおかないのか,

「既製品」ではない人はどこにいるのだろう… 

端的にそのような意識が即,

反映されていくものと思います

 

 

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では,  サンテックスにとって

「希望」とは何だったのでしょうか?

 

    What saves a man is to take a step.

    Then another step.

    It is always the same step,

    but you have to take it.

    人を救うのは一歩踏み出すことだ

    次にもう一歩

    いっつも,同じ一歩

    だけれど,歩き続けなければいけない

 

歩くしかない

歩き続けるしかない

一歩,そしてまた一歩,

同じ一歩だけれども,  それを続けることだけが

救いとなる

 

サハラ砂漠で不時着した機体から1人降り立ち,

灼熱の絶望の中で,唯一希望につながることと言えば,

ただ,ただ,ただ,ただ,

一歩一歩,歩くことでしかなかったことでしょう

まさに老子の言う「千里の道も一歩から」の気持ちで

 

ですが,最後には救われた…

 

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こうした一歩一歩の可能性を信じるには,

シンプルなマインドが必須です

 

All grown-ups were once children…

but only few of them remember it. 

おとなもみんな,昔は子どもだった…

でもそのことを忘れずにいるおとなはほとんどいない

 

サンテックスも賢治同様,

「永遠の子ども」の大切さを訴えていました!

tsuputon7.hatenablog.com

 

 

この姿勢はまた,

彼の未来に対する考え方にも表れています

 

   As for the future,

   your task is not to foresee it,

   but to make it possible .

   未来に関していうと,

   するべきことは予知することじゃなくて,

   それを可能にすることだ

 

未来を可能にすることが仕事である,

その理由は… 

 

  You do not inherit the earth from your ancestors;

  you borrow it from your children.

  地球は先祖から受け継いでいるのではない,

  子どもたちから借りたものだ

 

この,時間を超えて俯瞰する視座,

これも,重力の束縛にあらがって空を飛び続けた

稀有な小説家ならではの感性ではないでしょうか

 

未来に借りた地球

私たちの支払い方法や,いかに…

リボ払いではダメでしょう

 

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今後,  宇宙ビジネスがますます現実に

民間人をいともカジュアルに

無重力空間に連れて行くようになって,

果ては月に移住する人まで出てきたときには,

どんな小説家が生まれるのでしょう…

 

サンテックスのことばに宿る空間的広がりは

パイロット経験が背景にあったことを理由とするのは,

あくまで小生の想像の域を出ません

 

ですが,無重力空間で思い浮かぶ詩や童話や小説は,

どんなものだろうと想いを馳せますと,

不思議な気持ちになってきました… 

音楽で言うとバッハの「無文脈感」のようでしょうか

 

    What makes the desert beautiful is

    that somewhere it hides a well.

    砂漠が美しいのは,

    どこかに井戸をかくしているからだよ

 

火星が美しいのは,

どこかに水脈をかくしているからだよ

 

いえいえ,   サンテックスが言わんとしているのは

心の砂漠でも美しいのは,  

どこかに救いの水が蓄えられているから

という,  実体験に基づいたメッセージです

 

絶望の砂漠にも井戸があると,一縷の希望を託し,

3日間歩き続けた,そして救われた時の美的感動は,

身体レベルであり同時に心的レベルでもあったに

違いありません

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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