tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を:時間は岸のない川である(マルク・シャガール)

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マルク・シャガール 『誕生日』

                                                               Jan.26.2018 

 

 

マルク・シャガールは1887年,

ロシア(現ベラルーシ)生まれのフランスの画家です

 

超現実主義,いわゆるシュールレアリズムならぬ,

自然主義,  シュールナチュラリズムの画家として

独特な立場をとりました

本人は「幻想的」と呼ばれるのを好みませんでした

 

日本でも人気が高く,  よく展覧会が行われています

小生も過去5回ぐらいは

東京のどこかで見たと思います

 

実際の作品は意外なほど大きかったものもありました

とにかく,その柔らかなタッチと鮮やかな色合い,

見てるだけでも夢見心地になってきます

 

ふんわりまろやかな浮遊感が

全体に漂い続けています

実際に浮いている人の絵が多いです…

 

本日はこの,  心地よい愛の無重力感を表現し続けた

マルク・シャガールの名言のいくつかを

ご紹介いたします

(英文拙訳)

 

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シャガール

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『ベラ』

 

 

まず,  シャガールにとって芸術とは… 

 

As I see it, art is especially the attitude of my soul;

Everybody's soul is sacred,

and the soul of every two-legged animal

everywhere on the earth is sacred.

芸術はとくに魂のあり方なのだと私には思われる

すべての人の魂は神聖なもので,

地上どこにでもいる

すべての両足動物の魂は神聖だ

 

シャガールは「魂の画家」です

その絵の題材は,

リアルな肉体としての人間よりは,

服は着ていても重力から解き放たれた魂で,

シャガールは延々とその様子を描き続けています

 

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『街の上で』

 

こうした魂の絵を描く心構えを,

シャガールはどのように考えていたのでしょうか

 

When I create something whole-heartedly,

mostly anything goes well.

When I create something after many thoughts,

it is almost useless. 

心を込めて創り出した時は,

たいてい何でもうまく行く

頭を捻ってひねって作り出しても,

おおよそ無駄である

 

心を込めるのであって,  頭をひねるのではない

感性尊重の姿勢が端的に表れている言葉です

 

 

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『私と村』

 

シャガールの作品群の共通項を

あえてキーワードで挙げるとするならば,

「愛」となるでしょう

じっさい,  公私認める「愛の画家」でした

 

    Love is my only interest,

    so I’m concerned

    just with the things surrounding love.

    愛だけが私の興味を引くものだから,

    愛を取り巻くものとしか

    私はかかわりを持たない

 

「愛」至上主義の宣言です…

また,次のようにも述べています

 

    Life has only one color.

    Like the palette of art,

    the color gives us the meaning of life and art;

    that’s love.    

   人生には単一の色がある

   芸術のパレットと同じ様に,

   その色は人生と芸術の意味を与えてくれる

   それは愛だ

 

人生は愛の色

もはや,突っ込みようのない確信です…

 

 

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『フェスティバルのアーティスト』

 

そして何よりも,

「恋人たち」がモチーフの絵の多いこと… 

 

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『恋人たち』

 

こうした恋人たちを描く画家は無数にいますが,

例えばピカソとの決定的な違いは,

ピカソが肉体を解釈して絵にしたのに対し,

やはりシャガールは恋人たちの「魂」の一体感を

描こうとし続けた点にあります

 

ピカソシャガールを敬遠していたのも

なんだかわかりやすい気もします…

 

また,色について,

シャガールはユニークな比喩をしています

 

    As for colors,

    similar ones are friends

    and opposite ones are lovers.

    色は,

    近い色同士が友人で

    反対の色同士が恋人

 

なかなか意味深なことばです

友愛は同色,恋愛は異色…

ちょっと語弊のある解釈でした!

 

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『ヴァンスの恋人たち』

 

 

シャガールのこの無重力空間の背景には

神への感謝がありました 

 

   Only God helps me,

   and I shed my tears of truth

   in front of my picture.

   In my picture,

   my wrinkles and countenance remains

   and there, my forever-flowing soul will stay.

   ただ神のみが手をかして,

   私は自分の絵の前で,

   真実の涙を流すのだ

   私の絵に,

   私の皺,私の蒼白の顔色が残り,

   そこに,永遠に流動する私の魂が止まるだろう

 

永遠に流動する私の魂…

作品と作家の不可分一体感

 

絵のひとつひとつに

その流動的な入魂が見てすぐ取れます

 

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『月光の恋人たち』

 

 

最後に,  時間について,

他に類を見ないレトリックで次のように

表現をしています

 

      Time is a river without shores.

      時間は岸のない川である

 

肉体は空間を宿り,魂は時間に宿ると言われます

 

シャガールにとって魂という時間に住まう存在は

岸のない川,つまり無際限の流れとして

こんこんと続いていく何かだったのでしょう

 

こうした意味でシャガールは,

時空間の液体の中を自由自在に泳ぎ続けた

愛の画家だったと言えるでしょう

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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パリ・オペラの天井画