tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を:女をば法の御蔵と云うぞ実に 釈迦も達磨も ひょいひょいと生む(一休禅師)

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    龍安寺石庭

                                                   Jan.23.2018

 

 

一休宗純は1387年,室町時代後期に

京都に生まれた臨済禅の僧です

後小松天皇の私生児と言われています

 

風狂の破戒僧,

おきて破りの自由奔放なお坊さんとして

一休さん」アニメでも世界的に知られています

 

イチローの柴犬の愛犬の名も「一休」です

 

いまどきの言い方をしてよろしければ,

超過激でとてつもなくブッとんだ方です 

後世は当時の日本仏教界と世相を断罪するべく

生きていたと言っても過言ではないでしょう

 

たとえば,

悟りの証明書である「印可状」を火で燃やしたり,

 

杖の頭にドクロをしつらえ,

「ご用心,ご用心」と叫びながら練り歩きました

 

また,自他共に認める女好きでもありました

77歳の時に大阪住吉の薬師堂で出会った

盲目の森女に

「その気があればそばに来い」と声をかけて,

そのまま余生を共に暮らしました

ドンファンです…

 

このように戒律や形式に囚われない

こてこての生き方で民衆の共感を呼びました

 

江戸時代には一休さんの頓知咄(とんちばなし)が

全国的に大流行しました

現代のアニメはこれをマンガ仕立てにしたものです

 

本日はこの一休禅師の名言のいくつかを

ご紹介したいと思います

(英文拙訳)

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一休宗純

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諸悪莫作衆善奉行

(しょあくまくさしゅぜんほうこう)

「悪いことはせず善いことをしなさい」

一休直筆の弟子に宛てた手紙

筆跡,ど迫力です…

 

 

まずは,  キレキレの仏教界批判から…

 

  世の中に

  我れぞ悟ると自慢して

  名利求むる人の多さよ

   How many people seek

   for their own honors and interests,

   saying proudly, “I have just realized.”  

   in the world 

 

世の中にはなんと,  

私こそ悟った者だと自慢しつつ,

名声と利益を得ようとするものが多いことか…

 

昔も今も,「似非」にもかかわらず,

世間的な「成功」を収める方々が後を絶たないです… 

 

また,とても身近なところでは…

 

   今日ほめて   

   明日わるく言う人の口

   泣くも笑うも嘘の世の中

    The lips of the person who admires me today

    will criticize me tomorrow;

    whether I cry or laugh, the world is a lie.

 

世の中はハッタリである,  この主張こそ

風狂者の唯一の哲学と言っても良いでしょう

自分の喜怒哀楽も,

他人の言動不一致に振り回される…

一休さんはそうした体験や見聞を

嫌と言うほどしていたのでしょう

 

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一休さんは男色,  女犯,  酒肉全てに関わったことを,

『狂雲集』で告白しています

破戒僧の極みです

 

ただ,  女性に対しては

なみなみならぬリスペクトも感じられます

 

  女をば法の御蔵と云うぞ実に

  釈迦も達磨も

  ひょいひょいと生む

   I hear women are the storage of the truth;

   really, they give birth even to Buddha and Dharma

   quite easily.

 

「法」 とは,  仏法,つまり仏教的真理のことです

どんな偉い坊さんも女性に勝てっこない,

お釈迦様も達磨大師

いとも簡単に「ひょいひょい」と産んだんだから… 

 

なんだかこのエスプリの効いた擬態語は,

チャップリンを連想してしまいそうです…

 

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続きまして,  まるでラップのような一句を… 

 

    南無釈迦じゃ

    娑婆じゃ地獄じゃ

    苦じゃ楽じゃ

    どうじゃこうじゃというが愚かじゃ

    Oh, Namo Buddha,

    Oh, the World, Oh, the Hell,

    Oh, the suffering, Oh, the ease; 

    Oh, it’s ridiculous to say Oh, this and Oh, that!

 

どうでしょう,  この8発の「じゃ」の韻の踏みかたは!

きっとラッパーのように

左右に踊りながら書かれたのでは!

一休さん,イケてます!

 

アントニオ猪木さんが一休さん好きなのは有名です

あの,

      迷わず進め

も,一休さんのことばです

 

仏陀?シャバ?地獄?苦楽?

つべこべ言いなさんな,阿呆らしい! 

 

そのまんま,  渋谷のラッパーさんが歌いそうです… 

 

ここまで言えた境地や,いかに… 

 

 悟りなどなきことを悟れり

 I have realized that there is no realization whatever.

   

これはすぐさま,

岡本太郎氏のおことばを連想してしまいます

 

    人は悟るために生きるのではありません

    生きるんです

    動物ですから

 

このご心境こそが悟りなのでは… 

 

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ともかく, 一休さんにとっては,

お寺で威厳たっぷりに語り続ける坊主たちは

悟りとは縁遠い存在としか思えなかったのでしょう

と言いますのも,

 

    自心すなわち仏たることを悟らば

    阿弥陀願うに及ばず

    自心の外に浄土なし

    If you realize that just your heart is a Buddha,

    you don’t need to plead to Amitabha;

    there is no Paradise outside your heart.

 

自分の心こそが仏そのものであると分かれば,

阿弥陀如来に願う必要などない

自分の心の外には極楽浄土なんかないんだから…

 

こう考える一休さん独自の

美学があふれた名言がこちらです

 

    大空の月

    もろもろの水に宿りたまうといえども,

    濁れる水には宿りたまわず,

    澄める水のみ宿りたまうがごとし

    The moon in the great sky

    stays on all the waters,

    but she doesn’t on the dirty water;

    just does only on the clear water. 

 

月は悟りを表します

その悟りは諸々の水,

つまりあらゆる人々に宿っているのですが,

濁った心の人にはわからず,

澄んだ心の人にだけわかるようなものだ

 

聖と俗の二元論を突き破り,

民衆に混じって,その中で「悟りとはなんぞや」を

言動一致のままに人々に訴え続けた一休さん

 

天皇の隠し子として生まれながらも,

世のありとあらゆる人々と交流し,

喜怒哀楽もろとも比類のないメッセージを残した御方

 

僭越ながら感想を一言で述べさせていただくならば,

極上のカブける詩人

です

 

それでは,このへんで

ごきげんよう!

 

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