tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:この世に存在することから最大の充実感と最大の喜びを得る秘訣は,危険に生きることである(ニーチェ)

f:id:tsuputon7:20180113105339j:plain

 

                                                       Jan.13.2018 

 

 

フリードリヒ・ニーチェは1844年,

ドイツのザクセンに生まれた哲学者です

父親は牧師で家庭環境は裕福でした

 

早熟で,24歳の時には

ギリシャ古典文献学の教授としてバーゼル大学で

教鞭をとりました

その時, プロイセンの国籍を捨て,

生涯無国籍者として生きました

 

実存主義の先駆者とされ,

今でも根強い人気と影響力があります

 

科学技術がキリスト教文化を圧倒する様を

「神は死んだ」

という鮮烈なコメントで表したことでも有名です

 

個人的には,   彼の代表作である

ツァラトゥストラはこういった』に

傾倒した時期もありました

ウルトラマン」の語源になった著作です

実は「ウルトラマン」(超人)はドイツ語の発音です

英語ですと「アルトラマン」となってしまいます…

 

密かに仏教文献にも触れていて,

「空」の思想などを近代西洋哲学に

忍び込ませようとした先駆的業績は,

ユニーク極まりないものです

ブッダは偉大な生理学者だ」

とコメントさえしています

 

とりあえずそのデモーニッシュな引力ゆえに

自我形成途中の青少年が読むことを

疑問視する哲学者も多いです

 

本日はこの怪しげな魅力に溢れる

ニーチェの名言をいくつか

ご紹介したいと思います

 

f:id:tsuputon7:20180113104151j:plain

フリードリヒ・ニーチェ

f:id:tsuputon7:20180113104300j:plain

 

 

まずは,  孤独な人と笑いについてです

 

    Perhaps I know best

    why it is man alone who laughs;

    he alone suffers so deeply

    that he had to invent laughter.

    孤独な人間がよく笑うのは一体何故なのかを

    たぶん私はもっともよく知っている

    孤独な人はあまりに深く苦しむために

    笑いを発明しなくてはならなかったのだ

 

きっと彼は孤独な人だったのでしょう…

 

実際その笑い声は異様に大きかったと言われています

自分の孤独から来る深い苦しみに対処するべく,

その解毒剤として笑いを「発明」しなくてはならない…

 

これは心理学で言う「補償」にあたるものと思われます

電車の踏み切りで遮断機がかんかんかんと鳴って,

閉じかけているのに,

猛ダッシュで走り込んでくるマダムは

顔が何故か一人でにやけているとかも「補償」です

 

文字通り,

心理的欠落を他の行為で「補い償う」わけです

 

ニーチェは「超人とは記憶力である」と述べています

記憶力があればあるほど,

いいことも悪いことも覚えていくわけですから,

その内面たるや,常に怒涛のごとくざわめく心境に

なってしまうことでしょう

 

逆に,  そうでない人たちに対して… 

 

  Blessed are the forgetful:

  for they get the better even of their blunders

 忘れっぽい人は祝福されている

 というのも彼らは自分の大失敗にさえ打ち勝つからだ

 

フロイトは,「人間の最大の能力は忘却である」として,

無意識の概念を確立しました

どんな大失敗をしても,

次の日になったらけろっと忘れてしまっている…

確かにそういった人たちの方が,

世間的には成功しているケースが多いような気がします

 

忘却力はケースバイケースで活用したいものです…

 

 

f:id:tsuputon7:20180113104813j:plain

ウィーンの街並み

 

 

ニーチェの人間観察力の鋭さには定評があります

例えば… 

  

   One often contradicts an opinion

   when what is uncongenial is really the tone

   in which it was conveyed.

    人が意見に反対するのはだいたい

    実際それが伝えられている口調が

    気に入らない時だ

 

お店の店員さんとかで,とかく気になるものですが,

とりわけ初めて会う人では,

会話の意味内容よりも,その伝え方が

80%以上,その人の印象を決めるとも言われています

 

非常に心地よく自然な形で

おかしなメッセージを言われる場合は,

確かにとても混乱しますが…

 

f:id:tsuputon7:20180113110111j:plain

 

 

 

ニーチェはまた

「権力」についても様々なコメントを残しています

その中でも,  秀逸な指摘がこちらです…

 

    Insanity in individuals is something rare –

    but in groups, parties, nations, and epochs

    it is the rule.

    個人的な狂気は稀なものである

    しかし、集団・政党・国家・時代においては

    それは日常茶飯事だ

 

善かれ悪しかれ,  人間が集団社会を作り,

その集団がまとまって行動しようとしたときに

なぜかしら狂気がうごめいてしまいます

その集団の利益のためには

他を排除することをいとわない

 

この狂気は,

芸術家の狂気とは全くベクトルが違います

集団の狂気には目的がありますが,

芸術家の狂気には目的がありません

遊びだからです

 

小生は個人的に,  こうした意味で

「芸術は狂気の発動である」と考えています

そして,  そのためには

オスカー・ワイルドが言ったように

子供の魂を持ち続けていない限りは,

芸術的天才はありえないと思います

tsuputon7.hatenablog.com

 

ニーチェも精神的成熟について次のように述べています

 

    Maturity consists in having rediscovered

    the seriousness one had

    as a child at play.

    成熟は子どもの頃遊んでいた時の

    あの真剣さを再び見出することにある

 

ピカソしかり, 岡本太郎氏しかり,

晩年にこぞって「子ども」であろうとした理由も

ここにあるような気がします 

 

 

f:id:tsuputon7:20180113105008j:plain

 Pablo Picasso: Cat (Original Etching)

 

 

ニーチェは作曲家ワーグナーと親交があったものの,

ワーグナーの妻コジマに片思いをし,

それを告白して見事に振られてしまったことが,

晩年彼を精神衰弱に追い込んだものとされています

 

    That which is done out of love

    always takes place beyond good and evil.

    愛の終わりは

    いつも善悪を越えたところで起こる

 

彼の晩年の代表作に『善悪の彼岸』がありますが…

 

 

その独自の哲学思想もそうですが,  恋愛においても

なぜか危険な方へと進んでいったニーチェ

その哲学と生き方には賛否両論がつきませんが,

個人的には,誤解を恐れず述べさせて頂くなら,

超ド真面目なコメディアンのようにすら思えてきます

 

今となりましては好き嫌いを超えた哲学者ですが,

若かりし頃,少なからずエネルギーと

懐疑するトレーニングはさせて頂けたので,

その時の御恩に感謝を込めて,最後の一言を…

 

   The secret for harvesting from existence

    the greatest fruitfulness

    and the greatest enjoyment is:

    to live dangerously!

   この世に存在することから

   最大の充実感と

   最大の喜びを得る秘訣は,

   危険に生きることである

 

 

それでは,  このへんで

ごきげんよう

 

f:id:tsuputon7:20180113111437j:plain