tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

自分の中のミルフィーユに気づいた小春日和

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                                                                   Dec.20.2017

 

 

この間の日曜日の午後,

十数年来の友人であるフランス人ミッシェルくんと

会食しました

フランス家庭料理のお店で,サラダをシェアしたあと,

小生はヒラメのムニエル,

ミッシェルはジビエのイノシシ,

を堪能しました

ガトーはサンプルを見せてもらった瞬間,

二人揃って「ミルフィーユ!」とハモり,

注文しました

 

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ミッシェルは小生が大学院で知り合った,

お父さんがフランス人でお母さんが日本人の

日系フランス人で,

現在某大学のフランス文学教授です

半年に一回くらい,

港区のとても日当たりもコスパもいい

フレンチレストランで

普通は2人だけで会って,

最近読んだ面白い本だとか,ブログ記事だとか,

思いつきで,学際的になりゆき意見交換をします

 

あちらはガチガチの仏文教授,

こちらはゆるゆる美学者ですので,

会話の端々が「互いに素」になることも

多々あるのですが,

ミッシェルの一見神経質ながら実は寛容な性格と,

小生の見かけゆるゆるで

中身もゆるゆるな豆腐キャラとが

非対称なマリアージュ(結婚)だよねって,

ワインに酔うと必ず意見が会って笑いあえます

 

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そんなミッシェルに,  素敵な料理を堪能した後,

小さなエスプレッソをすすりながら,

こんな質問をしました

 

あのね,最近偉人の名言にすごく興味があって,

いろいろ調べながらまとめたりしてるんだけども,

時々,こんなこと無理だよとか,

ピカソだからでしょとか,

そういう思いが出つつ,逆に,

ものすごく納得して,そのことば,

自分の中に深く刻んで,

もう自分のものにしてしまえと思ったりする

気持ちになることが良くあるんだけども,

ミッシェルはそういう場合どう考える? 

 

すると,  ガトーをほおばっていた途中のミッシェルが

微笑みながらこう答えました

 

うんとね,  

自分って一人じゃないんだよ

自分って,いっぱいいるんだから

特にことばの次元だといくらだっていられる

なぜだかわからないけど,

朝考えていたことが,昼に疑問になって,夜否定する,

てことなんて,  僕はしょっちゅうだよ

 

でもね,  そんな自分はいっぱいいて,

層になってるんだと,

その第一層の自分が朝理解して納得したことでも,

第二層の自分が昼に「あれ?」思い,

第三層の自分が夜に「だめだよ,これ…」,って思う

 

そんな位,自分ていっぱいいると思うと

でもそれをトータルまとめているというか,

磁場のように取り仕切っている,

超越した自分もいる

 

その自分は変わらないけれど,

層になってる自分は変えられるし,

その中でお互いいろんな矛盾があっても

平然としていられる,

それが人間なんじゃないかな

 

例えばこのミルフィーユみたいに…

矛盾する自分同士がこうやっていっぱい重なってるけど,

困ったら食べちゃえばいいよ!

 

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Auguste Renoir: Eugène Murer

 

 

自分はミルフィーユ…

 

小春日和の昼下がりに,

フランス人でしか言えないおしゃれな比喩だなあ,

っと,ゆるゆる感心しつつ,

えっ!この人,手でつかんで食べてる!と気づき,

なんでフォーク使わないの?

と聞きましたら,

 

美味しく食べれば何でもいいんだよ!

僕の家ではどんどん手で食べていいよ

って教えられたよ

おいしいっていう思いで食べるかどうかが,

作った人に対する感謝の気持ちを表すんで,

パリジェンヌみたいなおすましした礼儀作法なんて,

ブルターニュの僕には関係ないよ! 

 

ブルターニュはパリとは違い,

農業・漁業・酪農の全てが揃っている酪農地帯です

ミッシェルの海沿いの家からは海岸にすぐ出られ,

子どもの頃からオマール貝などを普通に取ってきて

その夜自宅で焼いて食べるとか,

親戚がカタツムリをいっぱい持ってきて

みんなでワイン蒸しにして食べるとか,

ブルターニュ産のバターを自家製フランスパンに

たっぷり塗って好きなだけ食べるとかが,

日常だったとのことです

もちろん,  フランス人の常ですが,

幼少期から大人と一緒に薄めたワインを飲みながら… 

 

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Auguste Renoir:  Figures on the Beach

 

 

サンデーブランチをミッシェルと共にして,

夜,家に帰ってからぼんやりと思いました

 

最近,  偉人の名言を始め,

いろいろな方の発言・価値観に触れることが

急激に増え,  自分の中でそれがバラバラに

空中分解している感があったのですが,

そんな空中分解自体は「多層な自分」を認めれば,

それはそれで「あり」なんだ,と

 

例えば,自分が7階建てのビルだとして

他の人たちもそれぞれ7階建てのビルで,

みんながみんな思い思いの階で

思い思いの情報の発信・受信をしていて,

様々なネットワークの多様性を楽しんでいる,

それを,自分が4階から発信したことが

相手が7階で受信してくれないからといって,

目くじら立てる必要は何もない

むしろ相手がそれを7階でキャッチしてくれれば,

こちらもフィードバックで

新鮮な発見をするかもしれない,

そのプロセスを楽しめばいい

お互いミルフィーユなんだから

 

また,  自分のビルの中だけでも

3階と4階の人たちは和気あいあいであっても,

4階と5階の人たちが一切交流しないとか…

いわゆる葛藤とか自己嫌悪…

日常,  あるあるな事態です

 

でもそのビルのオーナーは

全てを把握し超越している全く無比較の自分であって,

最終決定はそのオーナーがすればいい

 

そう思うと,なんだかとても腑に落ちて,

本格的な真冬の寒さになったこともあり,

ぐっすりと眠れるようになりました

シェイクスピアのこのことばを想いながら… 

 

    All the world’s a stage,

    And all the men and women merely players:

    They have their exits and their entrances;

    And one man in his time plays many parts,

    His acts being seven ages.

 

   全世界は一つの舞台であって,

   すべての男女はその役者にすぎない

   彼らは舞台に登場し退場していく

   そして人はその時々にいろいろな役を演じる

   舞台は年齢によって七幕に分かれている

 

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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