tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:世間が必要としているものと,自分の才能が交わっているところに天職がある(アリストテレス)

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                                                             Dec.17.2017 

 

アリストテレスは,

西洋の学問体系を基礎づけたとされる

古代ギリシャの哲学者です

 

「分類・整理する」という,今でも私たちの生活で

ごくごく当然の情報整理術の必要性を初めて

はっきりと宣言したと言われる方です

ソクラテスの弟子プラトンの弟子であり,

そのプラトンと学問の方向性に関して意見が合わず,

現実世界に応用可能な哲学を目指すべきだとして,

独自の論を展開しました

 

アレクサンダー大王の家庭教師をしていたことでも

知られています

 

本日は,  私たちがもはや日常生活の中で

当然と思っているほどに普遍的な理性の「使い方」を

体系化した,このアリストテレスの名言のいくつかを

ご紹介したいと思います

 

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ラファエロアテナイの学堂』に描かれた

プラトン(左)とアリストテレス(右)

 

天を指差すプラトンに対し,  

まあまあと,手のひらで諭すかのように

大地を指すアリストテレスの様子が,

彼ら2人の哲学の方向性の違いを

明確に表しているとして,知られてきた絵です

 

その後の西洋哲学の歴史は

プラトン的」か「アリストテレス的」かの

二元論でしかないと言う哲学者も多いです

 

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まず始めに,習慣について…

 

   A person is the total collection of

   what the person repeats.

   So, excellence is not the behavior but the habits.

   人は繰り返し行うことの

   集大成である

   だから,優秀さとは行為でなく習慣である

 

アリストテレスは,

繰り返し=習慣こそが人を作る

という考え方をしています

 

天界の見えないイデアの世界との垂直的交通を求めた

プラトンとは違って,

日常生活の中での習慣こそが

その人の優秀さを形作るとする姿勢,

そこに現実世界の中での気づきを求めた

アリストテレスの視線が多分に感じられます

 

習慣は人間の行動の基礎です

その習慣も含めて, アリストテレスは,

人間の行動には7つの原因があるとしています

 

    Human behavior has one or more

    of the following seven causes:

    opportunity, nature, compulsion,

    habit, sacrifice, passion, and hope.

 

    人間の行動にはすべて

    次の七つの原因の一つ以上のものがある

    機会・本性・強制・

    習慣・犠牲・情熱・希望である

 

① まず人間が行動するには「いつどこで」,

     つまり「機会」が必須条件です

② そして,そんな人間の元来持ち合わせている性質,

     すなわち「本性」が行動の基本となります

③ その個人が家庭に始まる社会と関わった時に

     さまざまな「強制」をされます

④ その人は日々生活をする中で同じことを繰り返す,

     すなわち「習慣」を何らかしらの形で身に付けます

⑤  時に,自分のことだけではなくて他人のために

      自ら,あるいは意に反してでも,

       行動しなければなりません

      それが「犠牲

⑥  また,どんな行動をとるにしても

      心的エネルギー= 意志力が必要です

      つまり,「情熱」です      

⑦ そして行動している際に,

     未来はこうあって欲しいとする「希望」も,

      当然人の心によぎります

 

これら7つの要素のうち1つ以上のものの組み合わせで

私たちは行動している

2,500年前にすでにここまで人間観察をし,

それを文字化して残していたこの賢人メッセージには,

やはり驚嘆してしまいます

いわゆる,  自己啓発系の教えの大半が,

このアリストテレスの7つの要素のどれかには

かぶらざるを得ないのではないでしょうか?

 

逆に,これら7つの要素以外についての啓発本は

説得性を欠いた不毛なものでしょう 

 

そう考えますと,小生がこれまで触れてきました

人間論に関する書物は,ことごとく

アリストテレスの原液を希釈して,

気がつけばあちらこちらでちびちびと小鳥のように

それを飲んできただけの気も,

ゆるゆるとしてきました

 

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 ハチドリ

 

 

続きまして,  友人関係についての素敵な比喩が…

 

 Friendship is the one soul that stays in two bodies.

 友情とは二つの肉体に宿る一つの魂のことである

 

たしかに!

魂の一体感を感じられませんと,

真の友人ではなくて,

単なる情報交換相手になってしまいかねません…

そういえば,

 

    The person who has many friends has no friend. 

    多くの友人がいる人には友人はいない

 

と言いましたのも,  アリストテレスでした! 

 

さらに,天才につきましては…

 

   There is no genius

   that isn’t contacted with a little mania.

   わずかな狂気も交じらない

   天才はいない

 

「芸術は狂気の発動である」

と信じて止まない小生といたしましては,

実に心強い,端的明瞭な名言です

 

ここで用いられています ‘mania’ という語は,

いわゆるカタカナ語の「マニア」なのですが,

語源的にはギリシャ語で「神に触れられること」

を表すそうです

現実志向のアリストテレスですが,

やはり天才は神と人との垂直的交通があってこそ,

あり得ると考えてはいたようです

 

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最後に,  一般の人々に向けたと思われます,

アリストテレスの優しくかつ大胆なメッセージを…

 

    Where what the world needs

    is crossed by your talent,

    there is a calling.

    世間が必要としているものと,

    自分の才能が交わっているところに

    天職がある

 

なぜ,天職=calling かと申しますと,

所謂「お呼びがかかる」,

神からの「あなたはこれをしなさい」

とのメッセージが天職だと考えられたからのようです

天職を表す他の話に ‘vocation’ がありますが,

こちらの voc も vocal と同じ語源で,

「声」を表します

 

このフレーズには

非常に壮大なヴィジョンが込められています

「世間が必要としているもの」=社会性・外向性と,

「自分の才能」=個人性・内向性とが重なった交点,

そこに垂直的に神から命じられる天職があるとする

 

現在から考えますと恐ろしくアナログだったはずの

古代ギリシャ世界において,

これほどまで透徹した,繊細かつ大胆なヴィジョンを

持っていたアリストテレスには,

畏敬の念を感じざるをえません

その視点はすでに大地を上から俯瞰している,

それこそ知の力で神の目線に近づいた人間でしか

発せられない至言だと思います

 

それでは,  このへんで

ごきげんよう

 

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ラファエロアテナイの学堂』