tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:子どもを力や厳しさによって訓練しようとするな(プラトン)

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Paul Klee: Angel Applicant

                  Dec.12.2017

 

ソクラテスは自分自身では文字を書きませんでした

代わりに彼の発言を文字化したのは

一番弟子のプラトンでした

ソクラテス自身は

「書き言葉は話し言葉に劣る」としました

書き言葉によって話し言葉の魂が奪われ

文字となった瞬間に,

翼がついたようにどこかに飛んでいってしまう,

という旨のことを,  『パイドロス』で述べています

 

とは言え,

ともかくプラトンソクラテスのことばを書物の形で

残してくれましたので,その知恵はミームとして

現在に至るまで伝承されることができてきたわけです 

 

プラトンが記したことばには

既に一般になじみのあるものもあります

例えば,このようなフレーズです

 

    The eyes are the windows of the soul.

    目は心の窓である

 

「眼力」ということばがありますが,

確かにその人の目を見れば,その人が何を考えているか,

今から何をしたいのか,  ひいてはこちらに対して

どういう思いを持っているのかが,

ある程度分かるものです

人の目を見て話しなさいとよく言われますが,

個人差が出るところですが,

目は口ほどにものを言います

 

よく見過ぎるとあまりにも不自然ですが…

 

 

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 Paul Klee: Adam and Little Eve

 

 

プラトンは個人的な真理の探求と同時に,

社会における個人のあり方についても

非常に多くを語りました

 

例えば身近なところで行きますと…

 

    Be kind,

    for everyone you meet

    is fighting a harder battle.

    親切にしなさい,

    というのも,あなたが会う人はみんな

    あなたのよりもっと厳しい闘いをしているのだから

 

この「というのも」以降の理由が,

小生にはとても新鮮に思われます

親切にするべき理由が,

相手の普段の「戦い」が,

自分のものよりももっと大変なのだから,

それを思いやって,いたわるべく親切にしなさい

というのです

 

現代日本で生活していますと,

赤の他人に対して果たしてどこまで親切でいられるか,

それどころか,身近な家族や友人に対してでさえ,

親切でいられる心身の余裕があるのか,と自問しますと

なんとも気恥ずかしい思いになってしまいます

 

そうしたときに相手に求めるのではなく,

一寸した親切心によって相手に与える何かがあれば,

そのことで社会が活性化し,自然と

エネルギーが循環しやすくなるはずなのですが…

 

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 Paul Klee: Tomcat's Turf

 

 

次に,プラトンの恋愛観です

 

      The madness of love

      is the greatest of heaven’s blessings.

      恋愛という狂気こそ

      天の恵みのうち最も偉大なるものである

 

プラトンをはじめ

ギリシャ哲学者にとって恋愛というのは

さまざまな含みがあったようですが…

これが「天の恵みのうち最も偉大なるもの」だと

究極な表現をしております

古今東西,恋愛の狂気というものは

無敵で最強の力を発揮するものなのでしょうか?

 

ピカソも次のように言っていますし…

 

    Love is the greatest refreshment in life.

    恋愛こそ人生において最も素晴らしい癒しである

 

もっともピカソの場合には,

とてもとても激しいものがありましたが…

  

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Paul Klee: Lovers

 

 

プラトンは子供の教育に関し,

現代日本社会にも響くことばを残しています

 

   Do not train a child to learn by force or harshness;

   but direct them to it by what amuses their minds,

   so that you may be better able

   to discover with accuracy

   the peculiar bent of the genius of each.

 

   子どもを力や厳しさによって訓練しようとするな

   彼らの精神を楽しませることによって導け,

   各人の天賦の才である独自の好みを

   より正確に発見しやすくなるように

   

 

ここは賛否両論分かれるところかと思いますが,

家庭教師業を二十余年間

させて頂いてきました者としましては,

全く諸手を挙げて同意するところです

 

英語の「教育する」と言う動詞は ‘educate’ です

e-duc-ate 

と分けますと,  順に

外に-引き-出させる,

つまり,

「その子のポテンシャルを外に引き出してあげること」

が「教育すること」だ,という語源になります

 

プラトンのことばは

この発想に沿っていると思われます

ソクラテスの言として

プラトンが書き記した概念の1つに,

アナムネーシス(想起)があります

これは輪廻転生を信じていた

ソクラテスならではの発想ですが,

私たちの魂が天界にいた時には,

全てのものごとを知っていたので,

学問というものはその時の記憶を思い出すことであり,

まあらしいことを知るのでは全くない,

とするものです

プラトンの言う「彼らの精神を楽しませること」とは,

まさにその子の魂が,

天界にいたときの記憶の想起に当たります

 

輪廻転生があるかないかはともかくとしまして,

学生時代,小生はゼミでこの発想を知り,そういえば

時折,自分が子ども時代に気づいていたことのほうが

今の自分よりも数倍鋭どかったんじゃないか,

と思う節もありました

当時,  友人たちにこのことを話しましたところ,

何人かが自分もそうだと言ってくれました

 

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 V.Kandinsky: Small Joy

 

 

とは言え,  やはりプラトンも他者との比較ではなく

まさしく自己研鑽こそが

哲学者の使命だと捉えていたようです

それは次の言葉に端的に表されています

 

    The first and best victory is to conquer self.

   第一で最善の勝利は自分自身を征服することである

 

ブッダも次のように述べています

 

    己に打ち勝つことは,

    戦場で千万の敵に勝つよりもすぐれた勝利である

 

プラトンの場合は哲学の学問的研鑽と観照において,

ブッダの場合は自分の感情と心の動き全てを

呼吸を通じてコントロールすることにおいて,

自分自身に打ち勝つという意味だと小生は考えます

 

何度聞いても,新しい…

 

それでは,  このへんで

ごきげんよう

 

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Paul Klee: Temple Gardens