tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

引き算の美学:老子に学ぶメンタルデトックス

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                                                         Dec.6.2017

 

とかく毎日,

デジタルデバイスのお世話になり続けていますと

ほぼ全ての論理が足し算と掛け算です

たまに割り算もありますが,引き算は滅多にありません

いえ,基本的にありません

 

私たちは資本主義国家の中で

民主主義的生活を行っており

そこでの根本原理が足し算と掛け算だからでしょう

 

その脅迫観念たるや幼少期の頃からの教育を始め

社会全体の主なベクトルがそれで成り立っている以上,

何がしかの形で自分の中に取り入れ,

やっていくしかありません

 

たまに必要があって,

たまった情報などを仕分けするのが割り算,

でもそこから引き算をするという行為を

本当にやらないなと個人的には思います

 

断捨離ということばが今流行っています

自分の所有物を仕分けし

いらないものはどんどん捨てていく

という考え方ですが,

こと自分の持つ情報については,それこそ

一文字でも多い方がいいと,どこかで思いがちです

 

ですが気付けばいらない情報だらけで

身動きできない自分が…

 

なんていうことが最近ある気がして,

これは引き算をするしかないと思い立ち,

愛読書の1つである『老子』をひもときました

老子』は陰陽道や日本の禅宗の源流である

老荘思想のはじまりの書と言われています

 

 

 

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老子』は短いお話がいっぱい入っている形なので

このように行き詰まり感を感じた時に

占い本のように適当なところを開いて

そこを読み込むと必ず何かヒント与えてくれます

 

い昨夜,そういう思いで開けましたところ

目からウロコのフレーズがありました

それがこちらです

原文・英訳・小生の和訳の順です

 

    企者不立,  跨者不行

    自見不明, 自是者不彰

    自伐者無効,自誇者不長

 

    Those who stand on tiptoes cannot be steady.

    Those who stride cannot walk far.

    Those who try to shine themselves are not clear.

    Those who are self-righteous are not respected.

    Those who praise themselves achieve nothing. 

    Those who brag can’t last long.

 

    つま先立ちするものはじっとできない

    大股で歩くものは遠くまで行けない

    自分をみせびらかそうとするものははっきりとしない

    自分が正しいと思うものは尊敬されない

    自分をほめるものは何も達成しない

    おごれるものは長続きできない

 

つまり「余計なことはするな!」と言うことです

等身大の自分で生活していくべきだ,と

 

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気づけば情報化社会の中では,

等身大であり続けることが

非常に難しいように思われます

というのも,未知の情報しか価値がないかのように

脅迫観念をしきりに植え付けられてしまうからです

 

ところがそれらの情報の大半が,

一旦インプットし使ってみたりすると

もうそれ以上何の用もないものだったりもします

つまり,無駄です

 

そういう意味で,情報というものを

消費すべき情報と保存すべき情報

に,常々目を光らせて区別しておくことは

非常に大事かと思います

 

食事で言うと,油が濃すぎて

胃もたれしてしまっている状態にならないよう

その油を未然にそぎ落とす工夫が必要かと…

 

老子』の言葉はほぼ全てが日常言語で

言われれば「なるほど」っと,

すべてストンと腑に落ちるものばかりですが,

少しこの本から離れていると,

全くそういうことを実践できていない自分に気付かされ

毎回紐解くごとに,自分の忘却力に愕然といたします

無意識に沈潜してしまうんです… 

 

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つま先だってはぐらついてしまいます

大股で歩くと足が疲れ遠くまで行けない

自己顕示欲が強すぎると無視されかえって目立たない

自分で自分が正しいと言う人は

誰もついてかないでしょうし,

自分をほめるのに忙しい人は

たいした仕事はできないはずです

「おごれる者は久からず」は,平家物語でも言います…

 

このようにすべて端的に,

極めてシンプルに述べられていきます

 

こうした引き算の美学,

逆説の論理が,

デジタルデバイスを使い続けている時などには

非常に新鮮味を帯びてきます

 

自分の身体がある限り

アナログ性は拭いされないと思いますが,

そうした

アナログ回帰と言うよりは,アナログである自分に

やさしくスムーズに再度気づかせてくれる本,

それが『老子』です

 

それでは、この辺で

ごきげんよう

 

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龍安寺石庭