tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

理想と可能性との永遠の妥協

f:id:tsuputon7:20171106093122j:plain

  ラファエロアテナイの学堂』

 

 

                  Nov.6.2017

 

師のプラトンは天を指さし,

弟子のアリストテレスは大地に手のひらを向ける

プラトンは「肉体など仮の姿だ」と言い,

アリストテレスは「現実を見ましょう」と言う

 

絵の中央に立っている左側の赤い衣がプラトン,

右の青い衣がアリストテレスです

古代ギリシア哲学が, その後の西洋哲学に

決定的な影響を及ぼしたのは

 この2人の存在があってこそだと言われます

 

f:id:tsuputon7:20171106093303j:plain

(このプラトンは, レオナルド・ダ・ヴィンチ

モデルだそうです)

 

あえて端的に言わせて頂きますと, 主に

プラトンは「見えない世界(イデア)」について,

アリストテレスは.「見える世界(エイドス)」について,

哲学しました

 

ちなみに, 彼ら各々のギリシア語キーワードである

イデア」は

英語の idea「アイデア」や ideal「理想」の語源で,

「エイドス」は

idol「偶像」=「アイドル」の語源です

プラトンはアイドルを追いかけず,

アリストテレスは2次元に恋はしなかったのでしょう...

(あ, 怒られる!)

 

つまるところ, 彼らはそれぞれ,

「あの世的」と「この世的」と言ってもいいと思います

 

f:id:tsuputon7:20171106115115j:plain

ラファエロ『ガラティアの勝利』

 

実はこうした2タイプは,

彼らがいた頃から約2,500年も経った今に到るまで,

脈々と続く西洋哲学史の中の原型となってきたもので,

もはや, 「いい」「悪い」を超えた二項対立です

 

この2タイプの方々というのは

何も哲学者だけに限りません

科学者, 政治家, 企業家, 投資家,

いえ,

身近な友人知人, 家族, 一期ー会のすれ違う人でさえ,

日々気づけばタイプ分けしてしまっている気がします

 

「それって, 理想論だよね」

「あの人, 現実的だなあ」

って言う時,

「それって, プラトン的だよね」

「あの人, アリストテレス的だなあ」

 とパラフレーズ出来るのです

(「~的」って, 論文では怒られポイントですが,

会話とかだと, ゆるっとして, とっても便利ですね)

 

スポーツでもこの二元論は言えます

古くは長嶋さんと王さんとか,

今ですとメッシとクリロナとか,

チーム単位でも,

阪神と巨人とか,

バルサとレアルとか…

 

 

f:id:tsuputon7:20171106115337j:plain

 

 

プラトンアリストテレスの考え方の違いが

如実に分かる英訳名言を, 気ままにゆるっと

それぞれひとつずつ挙げさせて頂きますと…

 

まず, プラトンから :

 

   The first and best victory is to conquer self.

    最初で最高の勝利は自分に勝つことである

 

肉体(見えるもの)に打ち勝って

イデア(見えないもの)に向かおうとするわけですから...

 

一方, アリストテレスのエイドス(見えるもの)志向が

よく出ている名言は…

 

   One swallow does not make a summer,

   nor does one day;

   and so too one day, or a short time,

   does not make a man blessed and happy.

   ツバメが一羽やって来ても夏にはならないし,

    一日で夏になることもない 

   同じように, 一日とか短い時間で

   人は恵みを受けることも幸せになることもない

 

ひえ一!厳しい!

「天恵」「神の御加護」って, ないんですかね…

流石に西洋の「学問の祖」!

「分類・整理する」という,

私たちにはごくあたり前なことをはっきり言って

学問の方法を確立したのもアリストテレスですから...

彼以前の「哲学者」って,

大半は「神の声」を聞いてたみたいですからね…

 

いや~,二元論というのは分かりやすい反面,

日本人だからでしょうか,

ずっとその思考回路に合わせていると, なんだか,

じわじわ違和感を感じます 

 

f:id:tsuputon7:20171106121542j:plain

 

そこで, 小生の「お気に入り」哲学者,

バートランド・ラッセル

次の名言で中和(?)したいと思います

  

  Real life is, to most men, a long second-best,

  a perpetual compromise

  between the ideal and the possible.

 現実の人生というのは, 大抵の人にとっては,

 長く二番目に良いもの,  

 つまり, 理想と可能性との永遠の妥協である

 

「理想と可能性の永遠の妥協」!

何とみごとな指摘でしょう!

「現実の人生」って・・・

 

先日, イーロン・マスク

「現実はヴァーチュアルだ」

と言って話題になりました

 

「もの=カネ」中心だった20世紀の資本主義が

「こと=情報」中心の21世紀の情報主義へと

加速度を上げ激変しています

 

固体が液化するかのように

 

バブル期に読んだ本で

貨幣の次に来る人類共通の価値概念は, アイデア

と, 

とある未来予測学者が言っていたのを思い出しました

 

いよいよ,

アリストテレス的だったものが

プラトン的になってきている

のでしょうか…?

 

それでは, このへんで

ごきげんよう!

 

f:id:tsuputon7:20171106122527j:plain

 WILLⅠAM BLAKE : Jacob's Ladder