tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を: 目を閉じても、ものごとはちっとも良くならない。(村上春樹)

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                                                 Aug.4.2018

 

 

村上春樹氏は,1949年,

京都府生まれ兵庫県育ちの小説家です

 

現代日本の小説家で,

国内外で最もよく知られている作家

と言われています

何年も連続でノーベル文学賞候補に

なっておられ,毎年10月になると

「今年こそは…」と切に念じておられる

熱狂的ファン=ハルキストの方々が

「ハルキバー」に集まって,

発表の瞬間を待っておられる姿の

生中継が,もはや年中行事の如しです

 

個人的な思い出で言わせて頂きますと,

学生時代に『ノルウェーの森』が

あまりに話題となり,

あまのじゃくの小生は

大のベストセラー苦手なので,

延々と無視し続けていたのですが,

当時の悪友Mが,

一気に読んでしまって,

眠れなかったくらい衝撃的だった,

と言うので,

自分は大丈夫だと思いつつ,

発売から約一年後に

上下巻買って読み始めましたら,

あれよあれよという間に吸い込まれ,

読み終わった後,床には着きましたが,

そのまま眠れませんでした…

 

本日はこの,村上春樹氏の

数多くの著作の中から,

長い間春樹さんの作品の

ファンである知人の,

ハルキワールドについての熱弁に

触発されましたので,

ノルウェーの森』と『海辺のカフカ

より,

名言のいくつかをご紹介したいと思います

村上春樹 - Wikipedia参照

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まずは,『ノルウェーの森』からです

  

自分に同情するな、

自分に同情するのは

下劣な人間のすることだ

Don’t feel sorry for yourself,

only assholes do that.

 

自分に同情する,

自分の中に自分がいるという離人感は,

現代社会生活をしていると

必然的に持たざるを得ないものです

ですが,その離人感は,

ひいては卑屈な精神を生み出します

 

村上氏はこうした精神を,

キャラクターに「下劣な人間のすること」

と言わしめています

 

続きまして,

孤独と友だちについてのコメントです

 

孤独が好きな人間なんていないさ。

無理に友だちを作らないだけだよ。

そんなことしたって

がっかりするだけだもの

Nobody likes being alone that much.

I don’t go out of my way

to make friends, that’s all.

It just leads to disappointment.

 

無理に友だちを作った挙げ句に

残念な結果に終わってしまう…

心当たりのあることです

 

そして村上氏は主人公のパートナーに

こう呟かせます

 

私たちがまともな点は、

自分たちがまともじゃない

ってわかっていることよね

What makes us normal

is knowing that we’re not normal.

 

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ノルウェーの森』で,村上氏は

読書論や文章論にも触れておられます

 

他人と同じものを読んでいれば

他人と同じ考え方しかできなくなる

If you only read the books

that everyone else is reading,

you can only think

what everyone else is thinking.

 

得てして,そういうものかも知れません

とりわけ文学作品で,小説なり詩なりを

感情移入して読んでしまうと,

理性以前に感性が

作者に同調してしまうことになり,

結果的に積極的「催眠」に

かけられてしまいます

 

催眠術の被験者同様,

同じ本の読者は,

真面目に読んでいればいるほど,

似た考え方になるのも無理からぬことです

 

また,村上氏は次のような文章論を

登場人物に語らせています

 

完璧な文章などといったものは

存在しない。

完璧な絶望が存在しないようにね

There’s no such thing as perfect writing,

just like there’s no such thing

as perfect despair.

 

つまり,文章≒絶望

と捉えておられるのです

これに至りましては,

上手くことばでは

言い換えづらいものがあります…

 

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続きまして,『海辺のカフカ』からの

台詞です

 

目を閉じても、

ものごとはちっとも良くならない。

目を閉じて何かが消えるわけじゃないんだ。

それどころか、次に目を開けたときには

ものごとはもっと悪くなっている。

私たちはそういう世界に住んでいるんだよ

Closing your eyes isn’t

going to change anything.

Nothing’s going to disappear

just because you can’t see

what’s going on.

In fact, things will even be worse

the next time you open your eyes.

That’s the kind of world we live in.

 

岡本太郎さんの次のことばが

連想されました

 

人生の目的は悟ることではありません。

 生きるんです。

 人間は動物ですから。

 

「悟り系男子」が激増しています昨今,

村上氏の小説を読んで彼らは

何を考えるのでしょうか…

tsuputon7.hatenablog.com

 

村上氏の幸福論がうかがえる

台詞がありました

 

トルストイが指摘しているようにね。

幸福とは寓話であり、

不幸とは物語である

It’s like Tolstoy said.

Happiness is an allegory,

unhappiness a story.

 

寓話は夢物語であり,非現実です

物語は実際に起こる,現実です

 

幸福は一種類しかないが、

不幸は人それぞれに千差万別だ

There’s only one kind of happiness,

but misfortune comes

in all shapes and sizes.

 

これなどは,水木しげるさんの

地獄と天国についてのコメントに

かなり近いものを感じます…

 

地獄の様子は

場所とか民族とかによって様々異なっていて、

それぞれ迫力と現実感に満ちているのに対し、

天国の方は世界中

ほとんど同じだ

tsuputon7.hatenablog.com

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さらに,自由については…

 

世の中のほとんどの人は

自由なんて求めてはいないんだ。

求めていると思いこんでいるだけだ。

すべては幻想だ

Perhaps most people in the world

aren’t trying to be free.

They just think they are.

It’s all an illusion.

 

社会心理学者のエーリッヒ・フロムが,

『自由からの逃走』で,

「束縛なき自由はない」

というテーゼの下に,

その複雑な人間心理を解説していました

tsuputon7.hatenablog.com

 

当然のことではありますが,

村上氏の作品の中には,

頭から離れ難いことばも

いくつかあります

小生の場合ですと,

海辺のカフカ』では,次の三つでした

 

夢の中から責任は始まる

In dreams begins responsibilities.

 

あなたさえ私のことを

覚えていてくれれば、

ほかのすべての人に

忘れられたってかまわない

If you remember me,

then I don’t care

if everyone else forgets.

 

思い出はあなたの身体を

内側から温めてくれます。

でもそれと同時にあなたの身体を

内側から激しく切り裂いていきます

Memories warm you up

from the inside.

But they also tear you apart.

 

個人的には,

村上氏がノーベル賞を取られるのもいいし,

取られないのもいいと思うのですが,

取られた方が一人でもより多くの人に

作品を読んでもらえるのかと考えると,

あるいは受賞もまんざらではないと言える,

と考えております…

(ハルキ文体で書かせて頂いたつもりです…

ハルキストのみなさま,ごめんなさい!)

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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