tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を:もし真実をみたというのであれば、それは真実ではない。(鈴木大拙)


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                                             April.22.201

 

 

鈴木大拙は,

1870年石川県金沢市生まれの

仏教学者です

 

スティーブ・ジョブズが心の師と仰ぎ,

大拙の著作から,

主体と客体の二項対立を超克を試みる

iPhoneiPadのアイデア

得たのではないかと言われています

 

アメリカをはじめ世界に日本の禅文化を

広く知らしめた方です

いわゆる「ヒッピー」たちに

瞑想の素晴らしさを伝えたことでも

知られています

 

コロンビア大学客員教授時代には,

ニューヨークを拠点とし,

アメリカの上流階級に

日本禅の思想を広めました

さらに東西哲学者会議などにも参加し,

ユングハイデッガーとも

交流がありました

1949年には文化勲章を授与されました

1963年にはノーベル賞候補になりました

 

自らも参禅され,

96歳の生涯を終えられるまで,

机上の学問で終わることのない

実践哲学者でもあられました 

あの,頓智一休さんを生んだ

臨済禅です

鈴木大拙 - Wikipedia参照

 

本日はこの,

鈴木大拙のクリスタルクリアな

名言をいくつかご紹介したいと思います

(英文拙訳)

tsuputon7.hatenablog.com

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 『日本的霊性』の中で,大拙

日本人の「心のありよう」について,

 

①大地性(自然に根付いていること),

②莫妄想(妄想なくものごとを見ること),

③無分別智(言語的分別によらない直覚)

 

の三点を強調しています

各点について大拙が触れていると

思われますコメントがありました

 

①大地性

 

東洋の心は無心になる事。

どこまでいっても

無限で天地の分かれがない。

西洋は二次元の世界。

底には対立があり、

一方は他を力で支配しようとする。

The Eastern mind is mindlessness;

no matter where you go,

you can’t find out the division

between the heaven and the earth,

because there is infinity.

The West is the world of dualism;

at the bottom, there is a conflict,

and one tries to control the other

with power.

 

善悪二元論に根本的に依拠する

西洋的思考とは違い,

東洋的思考は自己と自然との

一体感を基盤とする一元論に

基づきます

 

大拙は東洋的思考の極みとして

日本的霊性を捉えていました

 

そうした天地一体の発想から,

たとえ渡来思想が中国や韓国から

流入してきたとしても,

日本人の精神風土である大地性が

独特の反応をしてきたと

大拙は言うのです

 

日本人は、

どんな教えが現われたとしても、

それを始めからむやみやたらと

高いところへ持っていったり

しなかったのです。

We Japanese haven’t enhanced

any teaching at any rate,

however great it was.

  

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②莫妄想(まくもうそう)

 

真実は無い、

もし真実をみたというのであれば、

それは真実ではない。

There is no truth;

if you say you saw it,

that isn’t the truth.

 

「真実を見た」というのであれば,

それは妄想であり思い込みである

 

「見ることのできる真実」が

存在するということは,

「見る自分」と「見られる真実」が

別個にあることになり,

つまり自分は真実ではないことになる

 

茶の湯の世界でもよく語られます,

主客一体の論理を,

大拙は強調しています

 

 

 ③無分別智

 

偉大な仕事は、

人が打算的になっておらず、

思考していないときになされる。

The great work is done,

when one isn’t cunning and thinking.

 

思考は「考えるもの」と

「考えられるもの」を分けます

考えれば考えるほどその分割は進み,

じつは「考えるもの」を

がんじがらめにしかねません

 

考えるな,見よ!

 

禅独自の「喝」は,

無分別智へと誘うための気合です

 

よく言われることですが,

ノーベル賞受賞者が発見をする時,

偶然の幸運=セレンディピティ

作用するとされます

 

たとえば,iPS細胞を発見された

山中伸弥教授は,お風呂の中で

イデアが頻繁に湧くと仰っています

 

tsuputon7.hatenablog.com

 

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大拙は浄土宗の

妙好人」(みょうこうにん) を

日本的霊性の極みだと指摘します

妙好人とは,

絶対他力の信心において,

阿弥陀如来がその人自身を通して

具現しているかとさえ思われる,

究極の念仏信者のことです

 

その好例として,

下駄職人浅原才市を挙げています

 

真理というのは、

下駄の鼻緒を治したり、

着物を縫ったりする

日常のつまらない動作の中に

現われている。

The truth expresses itself

in the everyday trivial behavior

like mending the strings

of a slipper, or sewing the clothes.

 

日常のすべての行為が念仏である

特別荘厳な何かではなく,

当たり前の中に

当たり前でないものを見い出し,

その輝きを体現する

 

そのありようこそが,

日本的霊性の理想的典型だというのです

 

ある意味日本の「お家芸」ともいえます

職人の世界には,

「祈り」に近い仕事の仕方を

実践されている方々が

多いのではないでしょうか

 

「毎日同じことをする」ことの

重要性を説いたイチロー選手の如く…

 

私たちのあたりまえの

日常行動のひとつひとつに輝きだしている、

それが仏というものなんだというのが

この国の仏教の考え方なのです。

It is the Japanese Buddhist way

of thinking that says Buddha is

something shining in each of

our everyday common behavior.

 

 

tsuputon7.hatenablog.com

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浅原才市

 

 

かく言う大拙も,出家僧ではなく,

アメリカ人と日本人の女性それぞれと

二度結婚した方でした

 

愛は、自我をして

その愛する対象の中に

みずからを失わしめる。

しかも同時にまた、

その対象を自分のものにしようとする。

これは矛盾であり、

また人生の一大悲劇である。

Love makes us lose ourselves

in the loved object,

and at the same time,

try to own it; this is a contradiction,

and yet a great tragedy of our life.

 

個人として人間として,

様々な経験があってこその

鈴木大拙ワールドだったのでしょう

 

大地性,莫妄想,無分別智

 

日本的霊性

この3つのキーワードにシンプルに

収斂させたような美学は,

小生の拙い知識の中では

他に類がありません

 

「いま・ここに生きる」ことからくる

実践哲学を,

鈴木大拙の書物を読み返すことで

改めて実感した気になっています

 

美は過去も未来もなく、

唯、現在あるが故に、

いつも生きているのだ。

Beauty is ever alive,

because for it there is no past,

no future, but the present.

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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