Dec.31.2018
ウィリアム・シェークスピアは,
1564年イングランド生まれの
詩人・劇作家です
現代英語の源流とさえ言われています
昔からフランス人とイングランド人は,
何かにつけてお互い
見栄を張り合うことが多いのですが,
その典型が次の様なものです
フランス人
「イングランドには絵画も
オペラも彫刻も, 何の芸術もないね!」
「我国には
シェイクスピアという
世界最高の詩人がいる!」
当時イングランドの文語は,
口語とはかけ離れた
ガチガチののものだったそうですが,
シェイクスピアはそれを
口語調で書き下ろし,
しかも, 誰よりも優れた
人間観察をした上で
内面心理を描写する
という偉業成し遂げ,
一世を風靡したのです
彼の頭の中には全盛期には
常に30人以上の人がいて,
お互いに会話し続けていた
と言われます
同じ人が別の日に彼に会うと,
全く別人のイメージだったとか…
本日はこの, ウィリアム・シェークスピアの
名言のいくつかをご紹介したいと思います
(英文拙訳)
まずは日常生活で,
「確かに」と思わざるを得ない
コメントからです
Listen to many, speak to a few.
多くの人の話に耳を傾け,
少しの人に話しかけよ
ユダヤの諺に,
二聞いて一話せ
というのがあります
人間には耳が2つで口が1つなのだから,
それ相応にコミニケーションすべきだと
話し上手は聞き上手,です
またシェイクスピアは,
次のような鋭い寸言も残しています
Love all, trust a few,
do wrong to none.
万人を愛し,
少しの人を信じ,
誰にも間違ったことをするな
こうしたことばは,
彼の鋭い人間観察眼から
自然と発せられたものだったようです
A fool thinks himself to be wise,
but a wise man knows himself
to be a fool.
愚か者は自分自身が賢いと思っているが,
賢者は自分自身が愚か者だと知っている
「無知の知」
ソクラテスに始まり
通じるこの普遍的な真理を,
現代世界に生きる小生は,
ともすれば全く失念してしまう
ことがあり,このようなメッセージに
出会うたびに
恥ずかしくなってしまいます
続きまして人間心理に関する
ダイレクトなコメントです
It is not in the stars
to hold our destiny
but in ourselves.
運命の鍵は
星々の中ではなく,
自分自身の中にある
すでに彼の時代から,
このような本質をズバリとつく
発想があったのです
There is nothing
either good or bad
but thinking makes it so.
良いものも悪いものもないのだが,
考えるとそれらがあることに
なってしまう
これなどは,
世界は私たちの心のあらわれである
とする,
仏教の唯識論に酷似している気がします
古今東西を問わず,
「普遍」の域に達した人のことばは
どこか共通点を感じます
No legacy is so rich as honesty.
正直ほど豊かな遺産はない
シェイクスピアと言えば,
やはり「恋愛」について
触れざるをえません
実におしゃれな美学を感じる
恋愛論がありました
Love is a smoke
made with the fume of sighs.
恋とはため息のくすぶりで作られる
煙である
「はぁ~」
と何回もため息つく中で,
情熱という炎に生み出された煙,
それこそが恋愛であると…
また…
Love looks not with the eyes,
but with the mind,
And therefore is winged Cupid
painted blind.
恋は目ではなく心で見られるものだ
だから,翼の生えたキューピッドは
目隠しをして描かれているんだ
実に美的な真理です!
より高次で繊細な意識の交流
があってこその「恋」を,
シェイクスピアは論じていたのです
例えば「恋」は時空をも軽々と歪めます
Better three hours too soon
than a minute too late.
あまりにも早く過ぎ去っていく
3時間の方が,
あまりにも遅い1分よりもいい
時間の相対性ついての説明をするのに,
可愛い子といれば,
時間はあっという間にたってしまう
と語りました
先日,
とある脳科学の記事を読んだのですが,
恋愛をしているときに,
その想いを寄せている人のことを
考えるだけで,
ドーパミンが急に放出され,
その間「時間」を忘れて
しまいやすくなるとのことでした…
もちろんシェイクスピアの作品には,
「恋」の儚くも美しい,
比類なき描写も数多くあります
Good night, good night!
Parting is such sweet sorrow,
that I shall say good night
till it be morrow.
おやすみなさい!おやすみなさい!
別れはあまりにも甘い悲しみなので,
明日になるまでおやすみなさい
と言おう
どの一言をとっても,
全てが全て真理へのベクトルを持つ
シェイクスピアのことばは,
時の試練を経ても
劣化する気配はありません
What's in a name?
That which we call a rose
by any other name would smell
as sweet.
名前の中に何があるっていうんだ?
私たちが薔薇と呼んでいるものも,
どんな他の名前で呼んだところで
同じ甘い香りがすることだろう
小生が学生時代に知り合いになった
言語学者が,
「言葉の恣意性」,
つまり「いい加減さ」について,
次のように説明してくれました
パンを「つくえ」と呼んで
同意する2人がいれば,
パンは「つくえ」なんだよ
かの岡本太郎氏も,
「名前なんて,どうだっていい」
と言うのが口癖でした…
無知の知,恋煩い,名前の恣意性…
シェイクスピアのメッセージは,
単純に劇,小説,詩と言ったジャンルを
はるかに超えて,
もはや小生にはれっきとした
「哲学」と思われます
God has given you one face,
and you make yourself another.
神はあなたに一つの顔を与え給うたのに,
あなたは自分の顔を
別人のものにしてしまう
自分の顔…
禅で言います「本来の面目」,
そこに少しでも多く,
目を向け続けられるような
年にできたらな,
と切に思うのです
それでは,このへんで
よいお年を!