tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:朝考え,昼行動し,晩食べ,夜眠れ(ウィリアム・ブレイク)

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                                         Dec.5.2018


 

ウィリアム・ブレイクは1757年,

イギリス・ロンドン生まれの

詩人・画家・銅版画職人です

 

現在のイングランド国歌とされます

エルサレム』の作詞者です

 シェークスピアと並び称される詩人で,

英語圏最高の幻想詩人とも言われます

 

日本では柳宗悦大江健三郎

多大な影響を与えました

 

ブレイクが残しました詩の美しさは,

「大きいことも小さいこともない」

とする,

繊細の精神に貫かれている所に

あると思います

 

本日はこの,

ウィリアム・ブレイクの名言のいくつかを,

彼の代表的詩集

『無垢と経験の歌』の挿絵と共に

ご紹介したいと思います

和文拙訳)

ウィリアム・ブレイク - Wikipedia参照

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まずは,

ミクロコスモスとマクロコスモスの

照応関係を,

極めて美的に表現した一言からです

 

To see a world in a grain of sand.

And a heaven in a wild flower,

Hoid infinity in the palm of your hand.

And eternity in an hour.

一粒の砂に世界を見 

一輪の野の花に天国を見 

掌に無限を乗せ 

一時のうちに永遠を感じる

 

平和とは万人が万事に丁寧であること

 

小生の学生時代の恩師で

美学教授だった先生が,

ことあるごとに仰っていました

 

ブレイクのこのフレーズは

時空にあまねく丁寧さの極みです

 

科学技術は速度・簡略化・有用性を

価値とするために,

丁寧さを排除してしまいがちです

 

すでに300年以上前に,

パスカルが嘆いていたように,得てして

幾何学の精神は繊細の精神を蝕みます

 

パスカルはとある数学者と話をした時,

自己主張ばかりに一所懸命で,

周りの人の心の機微に

鈍感でい続ける様子に,

とてつもなく幻滅しました

彼は数学を理解するための

幾何学の精神」は持っていても,

人の気持ちを汲み取る

「繊細の精神」がない

 

超一流の科学者たちが

口を揃えて言うことですが,

理系が文系を蔑む風潮を,

パスカルは憂いていたのです

 

科学至上主義が生み出してきた功罪を

積極的に吟味し対処していくことが,

現代世界に生かされているものの

責務なのかも知れません

 

tsuputon7.hatenablog.com 

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続きまして,

ブレイクの端的明瞭さが輝く句です

 

Think in the morning.

Act in the noon.

Eat in the evening.

Sleep in the night.

朝考え,

昼行動し,

晩食べ,

夜眠れ

習慣は第二の才能,と言います

 

「やる気」は一時的なものですが,

「習慣」は継続的です

 

なんらかの「こと」を成し遂げた

人たちは,

一気呵成に偉業を仕上げたのではなく,

長期に渡って,

他者の追随を許さぬほどに反復し,

その結果,超人的業績を

上げるものです

 

習慣は,

ひいては呼吸や鼓動,

季節の移ろいや

天体の自転・公転のように,

実は「自然」な営みなのかも知れません

 

ブレイクはまた,

よりマクロな視点から

こうも語っています

 

In seed time learn,

in harvest teach,

in winter enjoy.

種まきの時には学び,

収穫の時には教え,

冬は楽しみなさい

 

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では,偉業はどういうタイミングで

達成されるのでしょうか?

 

Great things are done

when men and mountains meet.

人々と山々が出会う時,

偉大なものごとがなされる

これはブレイク流のキリスト教的解釈で,

山々=人間以外の被造物すべての象徴,

と取ったものかと思われます

 

人間は他の被造物とどう関係するべきか

 

これは古来,

数々あるキリスト教諸派の中でも

意見が実に多様な点です

 

人間が被造物中で最高位だから,

他の被造物は好きに利用してよい,

という解釈さえあります

ある意味で,

東洋哲学で一般に語られます,

自然との「共生」関係の

正反対の原理です

 

人間対環境という二元論が

大前提である以上,

こうした原理の所産は

両者の対立図式を生まざるを得ません

 

 ですが,ブレイクはそこに

「感謝」のモーメントをはさみます

 

The thankful receiver bears

a plentiful harvest.

感謝して受け取る人は

豊かな収穫を得る

この点は,私たちが

食事の前に無意識に言っています,

「頂きます」=「お命頂戴いたします」

 という,仏教的発想に通じます

 

生きているのではなく,

生かされているという感謝

 

心の美の源泉かとも思います

 

tsuputon7.hatenablog.com

 

ブレイクは稀代の幻想詩人だけあって,

内面世界の描写を数あまた残しています

ですが,そのどれもが,

まるで月光のように受動的で

シンプルな輝きを持っています 

 

If the doors of perception

were cleansed

everything would appear to man

as it is, infinite.

知覚の扉が浄化されれば,

すべてのものはあるがままに,

無限に思われる

 

The weak in courage is

strong in cunning.  

勇気がないとずる賢くなる

 

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まるで人間心理を透徹した眼差しで

見据えつつも,何とかして

自分には見えている真理を

読む人に伝えようとするかの如くです

 

一般的な無意識をはるかに突破する

姿勢が垣間見られる

フレーズがありました

 

You never know what is enough

unless you know

what is more than enough.

十分以上のものを知らなければ,

十分なものを決して知れない

何か一つの目標に取り組んでいる際,

「もうこのくらいで十分かな」

という思いは,

得てして生まれるものです

 

しかしながら,

登頂した人にしか山の本当の高さは

計り知れないように,

「十分」を語れる人は,

「十分以上」を知っている人だけです

 

逆に,「十分以上」を知らないが故に,

感情は理性ではコントロールしかねる

レベルにまで至ってしまいがちです

 

たとえば,

喜怒哀楽を取ってみましても…

 

Excessive sorrow laughs.

Excessive joy weeps.

悲しみすぎると,笑う

喜びすぎると,泣く

 

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詩人とは,

最も離れた語と語を

結びつけるものである

 

ドイツ人詩人のパウル・ツェラン

こう言いました

 

ことばの極北に行き当たった時でも,

それに恐れを抱かず孤独にも挑み続け,

自らの精神エネルギーと引き替えに

新たな語と語の組み合わせを創造する

 

ブレイクも当然の如く,

二項対立間の往復運動の軌跡を

ことばにしていました

 

It is easier to forgive an enemy

then to forgive a friend.

敵を許すほうが

友だちを許すよりは容易である

 

こんなに短いのに,

ドキッとさせられる寸言です

 

For Mercy has a human heart,

Pity a human face,

And Love, the human form divine,

And Peace, the human dress.

慈悲は人間の心を持ち、

憐憫は人間の顔を持つ。

そして愛は人間の聖なる姿であり、

そして平和は人間の衣装である。

 

自らの魂を

重力との戦いの中で

飛翔させ解放しようとした

ブレイクの営みは,

何回読んでも新鮮です

 

No bird soars too high

if he soars with his own wings.

どんな鳥も,

自分の翼で舞い上がるなら,

高く舞い上がりすぎることはない

 

それでは,このへんで

ごきげんよう! 

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ウィリアム・ブレイクヤコブの夢』