Joan Miro: Poteto
Nov.8.2018
ジョアン・ミロは,1983年,
カタルーニャ地方の
バルセロナ生まれの画家です
バルセロナは,
建築家ガウディや,
画家ダリの生まれた街で,
ピカソも活動拠点としていました
ミロはしばしば
「シュールレアリズム画家」
と称されますが,
その独自で自由奔放な絵画世界は
そうした分類は不可能だ
とも言われます
本人は「画家」というレッテルを
貼られることにさえ抵抗を感じる,
ひたすらに自由を希求する芸術家でした
1970年には大阪万博のガス館に,
陶板壁画『無垢の笑い』を
製作するため来日しており,
以降日本での彼の絵画の知名度は
かなり高い状態を保っています
本日はこの,ジョアン・ミロの
名言のいくつかをご紹介したいと思います
(和文拙訳)
Vines and Olive Trees, Tarragona
まずは,色についての
コメントからです
I try to apply colors
like words that shape poems,
like notes that shape music.
私は色を,
詩を形作る単語のように,
音楽を形作る音符のように
使おうとしている
「色彩の魔術師」の異名を持つミロ
ならではの,
芸術的横断を直感できる一言です
ですが,ミロはとても思慮深い性格で,
盟友ピカソも一目置くほどでした
The works must be conceived
with fire in the soul
but executed with clinical coolness.
作品は魂の炎と共に
考えられなくてはならないが,
巧みな冷静さで
裁かれなくてはならない
感性と理性のあくなきせめぎ合い,
これこそピュアな芸術家ほど
永遠の課題として直面しなければならない
宿命なのでしょうか
Animated Landscape
続きまして,
ミロの作品哲学がうかがえます
コメントです
Throughout the time
in which I am working on a canvas
I can feel how I am beginning
to love it, with that love
which is born of slow comprehension.
私がキャンバスに向かっている間中,
まったりとした理解から生まれ出る
愛と共に,
どうやってそれを愛するように
なり始めているのか感じられる
「いま・ここ」に生きている芸術家の,
リアルな告白です
油絵画家にとって,
キャンバスとの一対一の対峙は,
まさに瞬間瞬間のぶつかり合いであり,
その関係だけが全て,
という時の連続です
そのプロセスにおいて,
新たな発見が相次ぎ,
作品として結晶化されていく…
魔術師ミロにあって,
その愛のエネルギーは色に注がれました
I feel the need of attaining
the maximum of intensity
with the minimum of means.
It is this which has led me
to give my painting a character
of even greater bareness.
私は最小の手段で最大の色の彩度を
得る必要性を感じる
これこそが,私の絵に
一層素晴らしい赤裸々さを
加味させてくれているものだ
Constellation: Toward the Rainbow
ミロは自身の性格を省みて,
色との関係でこう述べています
My characters have undergone
the same process of simplification
as the colors.
Now that they have been simplified,
they appear more human
and alive than if they had been
represented in all their details.
私の性格は色と同じ
純化のプロセスを経てきた
今ではもう純化されているので,
あらゆる細部に至るまで
表現された時よりも,
もっと人間的なようだ
鮮やかに純化されていった色に
比例するかのように,
ミロの性格も純化されていった…
18歳でうつ病にかかったことが
きっかけで絵の世界に目覚めた
ミロにとって,
絵画制作はそのまま,
最上のセラピーだったのでしょう
その喜びは,ついには
無生物に対する愛にまで及びました
For me an object is something living.
This cigarette or this box
of matches contains a secret life
much more intense than
that of certain human beings.
私にとって,物体は生き物だ
このタバコやこのマッチ箱でさえ,
とある人間たちなどより
ずっと鮮やかな秘められた生を
内包している
Constellation: Women on the Beach
そして,ミロは次のような
不思議なコメントを残しています
What I am looking for...
is an immobile movement,
something which would be
the equivalent of what is called
the eloquence of silence,
or what St. John of the Cross,
I think it was,
described with the term 'mute music'.
私が探し求めているのは…
動かぬ動きだ
それは,沈黙の雄弁さと呼ばれるものと
等しいだろうものだ
もしくは,私が思うに,
十字架のヨハネが「無音の音楽」
ということばで描写されたものだ
まるで禅の公案の『隻手(せきしゅ)の音声』,
「片手で拍手したらどんな音がするか」
を彷彿とさせます
Women and Bird in the Night
「はじめに,ことばありき」
があらゆることの大前提と言っても良い
西欧世界にあって,
ミロのこの,
意味と無意味の境界面を直視し,
ことばによる二元論を
超克していこうとする実験は,
とてつもない精神力が必要だったに
違いありません
そうした意味で,
誤解を恐れず申し上げるならば,
ミロの絵画作成は,禅僧の瞑想に
酷似したものだったのでしょう
以下に掲げます,
国立西洋美術館所蔵の『絵画』が,
色こそついてはいますものの,
禅で悟りを象徴します「円相」と
共通点が多々あるのではないかとさえ
思えてきます
それでは,このへんで
禅の円相