tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:どんな経験も成功や失敗の原因ではない(アドラー)

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                                             Oct.25.2018 

 

ルフレッド・アドラーは,

1870年オーストリア生まれの

精神科医・心理学者です

 

西洋ではフロイトユングと並んで,

現代心理学の3大巨頭と称されています

 

ただ,アドラーの理論がフロイトユング

心理学理論と決定的に違うところは,

過去志向ではなく徹底した未来志向で,

たとえ今の今まで何があったとしても, 

たった今から自分が思い描く未来を

作っていけるはずだと考える点です

 

個人的・社会的に

過去がどれだけ暗くても,

この瞬間から新しく明るい未来を

創造していかれる,

あるいはそうしていきたいという

切なる思いこそ,

アドラー心理学がこれほどの人々の

支持を得ている理由なのかも知れません

 

本日はこの,アルフレッド・アドラー

名言のいくつかをご紹介したいと思います

 (和文拙訳)

tsuputon7.hatenablog.com

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まずは,

トラウマについてのコメントからです

 

No experience is a cause

of success or failure.

We do not suffer

from the shock of our experiences,

so-called trauma -

but we make out of them

just what suits our purposes.

どんな経験も

成功や失敗の原因ではない

私たちはトラウマと呼ばれる

自分自身の経験のショックで

苦しむのではない

私たちは私たちの目的にただ合うものを

トラウマから作り出すのだ

 

ある意味でこの発言は,

フロイトユングと根本的に違う立場

であることを示す,

分水嶺のようなことばだと思われます

 

アドラーは心の傷=トラウマの存在を

否定したのではありません

それに影響されるかどうかは,

その人次第だ,と考えたのです

 

誰でも精神的に

「傷つく」ことはあり得ます

ですが,その事象に対して

どういった解釈をしていくかで,

その人のその後の言動が決定される

とします

 

その人が未来に向かって

どのような「目的」をもっているか

によって,その「トラウマ」が

変形されるというのです

 

つまり私たちは,

経験があって結果があるのではなく

目的に合わせて経験を結果に変える,

ということになります

 

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アドラーはまた,人間であることについて

次のように述べています

 

To be a human being means

to possess a feeling of inferiority

which constantly presses

towards its own conquest.

The greater the feeling of inferiority

that has been experienced,

the more powerful is the urge

for conquest and the more violent

the emotional agitation.

人間であるとは

絶えず自分自身の征服に

はやる劣等感を

所有することである

経験されてきた劣等感が

大きければ大きいほど,

征服へのせき立てが大きくなり,

感情的な煽りが

より暴力的なものとなる

 

劣等感が衝動となり,

それを刺激するものを排除しようと,

感情が揺さぶられる,

アドラーは言います

そしてその言動が暴力化すると,

妬み,いじめ,紛争,

果ては戦争を引き起こします

 

ですから,

その劣等感を想起させる対象に対しては,

鋭敏にならざるを得ません

 

Exaggerated sensitiveness is

an expression of the feeling of inferiority.

誇張された敏感さは

劣等感の表現である

 

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このように考えますので,

アドラーの患者に対する接し方は,

本人の劣等感を吟味し見越したものでした

 

We must never neglect

the patient's own use of his symptoms.

私たちは患者自身が

自分の症状を利用していることを

決して無視してはならない

 

精神医学では今,

自分が何らかの病気にかかっていないと

気が済まない,

という心理的強迫観念に

突き動かされている状態を,

「心気症」

と呼ぶそうです

 

孤独に苛まれるが余り,

お医者さん通いが日常化し,

病名をもらうまで色々な病院を渡り歩く…

 

これは端的に言って宜しければ,

自作自演

ということになります

「人に心配かけたい」あまりに

仮病でも使ってしまいたい誘惑は,

個人的にも幼児期などに

心当たりがありますが…

 

例えば,機嫌の悪い人について,

アドラーは次の様に指摘しています

 

We must interpret a bad temper

as a sign of inferiority.

私たちは不機嫌を

劣等感の表れと解釈しなければならない

 

学校の先生や会社の上司とかでも,

なぜか朝一番から不機嫌な方はいます

アドラー流の解釈ですと,両者とも,

クラスの生徒や管轄の部下を

上手くコントロール出来ない劣等感に

苛まれているのだということになります

 

機嫌の良し悪しには,

体調そのものの要因も

大きく関係があるとは思いますが,

一考に値するアイデアだと思います

 

ですが,この様な目線で

毎日同じ人と接していくには

大変な労力が必要とされます

ですから,

私たちは身近な人には無意識になります

 

The only normal people are

the ones you don't know very well.

唯一まともな人々とは,

あなたがあまりよく知らない人々だ

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アドラーの透徹した視線は,

嘘で出来た社会のリアルさを

浮き彫りにしました

 

The truth is often a terrible weapon

of aggression.

It is possible to lie,

and even to murder, with the truth.

真実はしばしば攻撃のための

恐ろしい武器となる

真実を持って嘘をつくことも,

人をあやめることすらも可能だ

ユング心理学者の河合隼雄先生は,

「嘘は毒薬、真実は劇薬」と題するコラムを

『心の処方箋』の中で書いておられます

詩人の谷川俊太郎

「日本うそつきクラブ」を作ろう

とさえされておられました

tsuputon7.hatenablog.com

 

改めて考えますと,

芸術は嘘です

ですが,感動という副産物によって,

鑑賞者に元気や勇気を与えます

 

嘘は,優しい

真実は残酷です

 

どのくらい残酷かと言うと…

 

My difficulties belong to me!

私の様々な問題は全部自分のものだ!

 
それでは,このへんで
劣等感を超えて,ご機嫌よう!
 
 

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