July.26.2018
空海は，774年，
現在の香川県生まれの仏教僧で，
真言宗の開祖です
京都の都市計画を依頼され，
今にも残るあの街の原型を
真言密教のマンダラと風水を元に
設計したのは空海です
「空海」という名の由来については，
Wikipedia には，
次のように記述されています
室戸岬の御厨人窟で修行をしているとき、口に明星（虚空蔵菩薩の化身）が飛び込んできたと記されている。このとき空海は悟りを開いたといわれ、当時の御厨人窟は海岸線が今よりも上にあり、洞窟の中で空海が目にしていたのは空と海だけであったため、空海と名乗ったと伝わっている。
いわゆる「弘法大師」は，
空海没後86年の921年に，
醍醐天皇によって与えられた称号です
自ら遣唐使となり，
中国から真言密教を輸入し，
北海道を除く日本各地に
5000以上の伝説を残しています
寺院建立，仏像彫刻，聖水，岩石，
動植物，井戸や池，温泉などに
まつわるその伝説の多様性から，
空海の超人性がうかがえます
より日常的なものとしましては，
ひらがな，いろは歌，灸，
曜日，水銀鉱脈の発見なども
空海に由来するとされています
本日はこの，空海の
名言のいくつかをご紹介したいと思います
（英文拙訳）
まずは，結局のところ，
現代心理学や「マインドフルネス」でも
同じ趣旨のことを言っている
と思われます，
心と環境についてのコメントです
周りの環境は心の状態によって変わる。
心が暗いと何を見ても楽しくない。
静かで落ち着いた環境にいれば、
心も自然と穏やかになる。
The surroundings of yours change
depending on your state of mind.
If your mind is dark,
you cannot enjoy anything.
In the calm, composed surroundings,
your mind becomes quiet naturally.
ですから…
気持ちが落ち込んでいる時や
悪いことを考えているときは、
すること全てがわざわいを招く。
When you are disappointed
or thinking something bad,
all you do will invite curses.
知っていたら，もっと苦しまずに
深層心理学を基礎付けられた
のではないかとさえ思えます
また，「嫉妬」についても
鋭く深層をえぐっておられます
嫉妬は自分とそれ以外の人とは
別々の存在だと思う心から生じる。
もし自分と自分以外の人を別ではなく、
同じ存在だと見ることが出来れば、
嫉妬することがなくなり、
公平な心になり、
全ての人の善行を心から賞賛できる。
Envy comes about from the mind
that thinks you and the others are
different existences;
if you can regard you and the others
as not different and the same existences,
then you can’t envy them,
have a fair mind,
and can praise the goodness
of all the people heartily.
嫉妬は最も複雑な感情だと言います
その複雑性を，空海は見事に
解きほぐしています
自分を他人とを分け，
別の存在とみなし比較してしまうので，
あれやこれやの
コンプレックスが発動し，
果ては嫉妬してしまいます
真言密教哲学の極意とも
言われますマンダラは，
宇宙を構成するありとあらゆる存在が，
壮大な有機的組織体であり，
部分的には対立関係と見えるものですら，
トータルには絶妙なバランスを
保ち続けている様子を表すもの
とされています
そのマンダラ的解釈をしますと，
空海にとって自他の区別など
妄想でしかなかったのでしょう
続きまして，「バランス」の大切さを
分かりやすく解説されているコメントです
片手だけでは拍手できない。
片足だけでは歩けない。
右手と左手が感応して拍手になり、
右足と左足が感応して歩く。
だから相手が感応するまで祈り続けなさい。
You cannot clap only by your one hand.
You cannot walk only by your one foot.
Corresponding of your right
and left hand will become clapping,
and that of your right and left foot
will become walking;
So do continue to pray
until the other corresponds to you.
ここから演繹しますと，
あらゆる二項対立は
バランスが保たれて初めて，
有意義なものとなると解釈できます
しかも空海は人と人の関係でさえ，
感応し合うことが大事であると
指摘されています
続きまして，
1200年ほど前にも
こんな方がいらっしゃったのかと，
思わず微笑んでしまうフレーズです
他人の病気のことを
とやかく言う前に、
まず自分の病気を治すことを
心がけなさい。
Before you say this and that
about the illness of others,
first you should try
to cure your own illness.
人のことはわかっても
自分のことはわからない…
空海の頃から変わらぬ
世の常なのでしょうか…
大工の喩えによる
深遠なメッセージがありました
優れた大工が木材を使うとき、
真っすぐな木は曲げずに、
真っすぐな特徴を活かして
その木が必要な場所に使う。
曲がった木は、無理に伸ばさずに、
そのままその特徴をいかして
その木が必要な場所に使って
大きな家を建てる。
When a good carpenter uses timbers,
he will use the woods
where they are needed,
not the bending the straight one,
and keeping the straight trait alive;
he will also use the woods
where they are needed,
and build a large house,
not extending the bending one forcefully,
and keeping the trait as it is.
これぞマンダラ的発想です
どんなに素材にバラツキがあるとしても，
名工の手にかかればまさしく「適材適所」，
見事に全体をバランスよく
あしらえるのだ，と…
これは現代の「リーダー論」でも
当てはまりうることでしょう
空海は「決心」について
こう語っています
道理に迷って苦しむのも、
自分の中にある仏に
目覚めて正しく励むのも、
みな自分の決心次第である。
Whether you are suffering
from being annoyed
by the truth, or make right efforts,
realizing the buddha within you,
depends on your decision.
苦しむのも自分の決心，
修行に励むのも自分の決心…
自分の行動は自分で選んで
やっているのだと
坂本龍一さんのコメントを思い出しました
さらに，善悪と決心について…
善行をなそうとする人も、
悪行をなそうとする人も、
まず心の中でそれをなそうと決めてから、
その行動をするものである。
仏が悟った安らかな心を求めるのも、
また同様にそうなると
決めることから始まる。
Both those who try to do good
and those bad will perform,
after they have decided to do that
in their minds.
Like this, a buddha first begins to
seek for the peaceful mind,
just after they have decided to.
決心は自力です
環境は他力です
空海はこの両者のバランスを，
一見巨大なカオスの様に見える
マンダラの中心におわす大日如来の視座で，
超然と観察し続けておられたのでしょう
そしてその宇宙のマンダラの一部である
私たちの存在が，実は
わたしはあなたであり，
あなたはわたしである
という真実から，みな，
仏になりうる可能性を秘めた，
きらめく宝石の原石であると宣言されます
人間は誰しも，
こころに宝石となる石を持っている。
一生懸命磨いて、美しく光り輝く玉になる。
Every person has a stone
which will be a jewel within the heart,
which will be a beautiful shining ball
by being polished hard.
それでは，このへんで
