July.18.2018
吉本ばななさんは,1964年,
東京都生まれの小説家です
1987年,
『キッチン』で商業誌デヴューされ,
その後この作品が『TSUGUMI』と共に
単行本で出版されて以降,
次々と名作を出され注目されました
この世の秘密を予知夢などに絡めて
描き出されたの作品が多いです
個人的なイメージとしましては,
ばななさんは
あまりにも自然すぎて,
一旦通り過ぎてしまうけれど,
「ん?」
と思い返して読み返してしまう,
数少ない「ことだま」を持つ作家
というものです
お父様は「社会は共同幻想である」
という思想を唱えられた吉本隆明氏で,
戦後日本を代表する哲学者でした
隆明氏が,とある講演会の際,
「吉本ばななさんのお父さんです」
と紹介されて,苦笑された
というエピソードがあります
本日はこの,吉本ばななさんの
名言のいくつかをご紹介したいと思います
(英文拙訳)
まずは,ばななさんが,
ご自身の本について
述べられたことばからです
永い間、読んでもらえるとありがたい。
一度読んで、
もしたいして面白くないな、
と横に置いても、5年後とかに
「もう一回、読んでみようかな」
と思ってもらえる本になるといいなと。
I appreciate it if you read it
for a long time from now on;
I hope this book will be the one,
even if you put it aside,
reading it once to feel it
not very interesting,
some five years later,
“I’d like to read it once more.”
先述しましたように,
役者さんの世界で言う
「二度見」してしまうような引力を,
ばななさんのことばからは感じます
『キッチン』はまさしく
小生にとってそういった小説でした
一度読んで閉じたのですが,
本棚と頭の片隅には
どこかずっと残っていて,
数年後手に取ってしまったのです
続きまして,ばななさんの人生観が
うかがえるコメントからです
人生には、いろんな時期があるけれど、
誰もがその人の本来の性質を
取り戻すことはできるのだと思う。
年齢に関係なく。
In our lives, we have various periods;
as I see it, everyone can retrieve
the person’s nature,
regardless of the age.
ばななさんの小説に出てくる主人公は
「最終的に」ポジティブ思考のセリフを
何か語られます
自分も含めて
いろんな人の人生を見てみると、
全部がダメ
っていう状況ってない。
Seeing various lives of people,
including mine,
there is no situation
where everything is wrong.
ものごとがうまくいかない場合,
「全部がダメ」という思いは,
どうしても抱いてしまうものです
ですがそれは,
何か失敗したり挫折した点に関し,
まるで顕微鏡で覗き込むかのように
拡大解釈してしまうからということが
ほとんどです
小生も自分が苦手とするタイプの人に
出会った時に,過剰にあれこれと
思いあぐねてしまいがちなのですが,
その人との関係が世の中のすべてでは無い
という単純な事実を,その瞬間は
忘れてしまっています
このことに気づければ,
たちまちにその感情は色あせていきます
ばななさんの
セルフコントロール方法についての
フレーズです
今日あったいやなことは、
とりあえずみんななかったことにしよう。
Anyway, I’ll make nothing all of
what happened disgusting me today.
こう思えたら!
どのような形であれ,こう思えたら
どんなに救われることでしょう…
つらい状況であっても、
新しいことは起きている。
そして、その状況は、
個人の人生にとって、ほぼ関係ない。
Under tough circumstances,
something new is happening,
which has next to nothing
to do with the life of a person.
川の流れの喩えのようです
この「自分を見る自分」をいつでも持てたら,
どの道でも達人になれることでしょう
何かひとつ嫌なことがあったところで,
それ以外の周囲のものごとは
淡々と新しく進んでいきます
その進む力に助けを借りて,
新たな視点を得ることができれば,
その嫌だったことがなんと
ちっぽけに見えることでしょう!
では,ばななさんは,
嫌いな人に出会ったときに
どうなさるのでしょう?
嫌いな人がいたら、
好きになるところまで
離れればいいのよ。
When you encounter a person
you don’t like,
you have only to leave the person
as far as you can like the person.
これぞ,
とても理性的で具体的な
「隣人愛」ではないでしょうか?
こうすることができ続ければ,
ずっと万人を好きでいられるのですから…
ばななさんは「勇気」の必要性を
こうことばを替えて述べておられます
こわがっていたら、
なにも進まない、なにも起きない。
誰も愛せない。
なにも動くことがなくなってしまう。
If you’re afraid,
nothing will go ahead,
and nothing will happen;
you can’t love anybody,
and you can’t move at all.
確かに恐怖心は,
全ての行動のブレーキでしかありません
やりたいと思ったときに、
ぱっと手を出さないと
届かなくなることがあるんだ。
Sometimes, I can’t reach,
if I failed to when I was inclined to.
様々なものごとに
適切なタイミングというのは
欠かせません
その時と場合を逃してしまったが故に,
後悔してしまうことも多々あるものです
仏教で言います「縁」を感じた
その瞬間には,
ちょっとした「勇気」を
振り絞って手を伸ばしてみるのは,
とても良いことかと思います
もちろん,
人に迷惑をかけてはなりませんが…
とりあえず小生の場合は本屋さんでです
最後に,ばななさんの時間論です
止めることのできない時間は
惜しむためだけでなく、
美しい瞬間を
次々に手に入れるために
流れていく。
The time I cannot stop keeps flowing
for me not only to regret
but to get beautiful moments
one after another.
なんと流れるような
ポジティブ思考でしょう…
時の流れは止められません
そのことをただただ後悔し
執着することもできますが,
新たな流れがやってくるからこそ,
美しい瞬間を体験できます
それを私たちが手に入れるために,
時は流れてくれている…
バナナさんの詩性,ポエジーに,
猛暑が少し和らいで感じられました
それでは,このへんで!