July.7.2018
矢野顕子さんは，1955年
東京生まれのシンガーソングライターです
独特の感性と強烈な個性で，
テレビなどにはめったに出演されないものの，
「天才シンガー・ピアニスト」として
日本の内外で知られています
ドラマやCMなどでも
知らず知らずに耳にしている歌が多いですが，
記憶に新しいところですと，
2014年までTBS系列で放送されていました
情報生活番組「はなまるマーケット」の
ワンコーナー，「はなまるカフェ」の
オープニングテーマのフレーズソング，
♪ようこそ ようこそ はなまるカフェへ♪
があります
実は，かの坂本龍一さんと24年間，
ご夫婦でいらっしゃいました
「龍一はピアノが下手だから…」
という名言を残されていますが，
世界のサカモトに
こんなこと言える方は，
世界中で矢野さんだけでしょう
本日はこの，矢野顕子さんの
名言のいくつかを，
(@yanoakiko_bot)から
ご紹介したいと思います
（英文拙訳）
まずは，せつない乙女心から…
間に合わなかった あなたの笑顔に
走ってきたのに
息はずませて はだしの心で
I wasn’t able to be in time for your smile,
though I’d come running
out of the breath with a bare heart.
「はだしの心」が意味の次元を超えて
乙女の歯がゆい想いをむき出しにしています
また…
つくってね わたしのために
たいせつな気持ち 受けとるポケット
Do make me a pocket
to receive my important heart.
四次元ポケットは取り出し専用ですが，
このポケットは自分の気持ちをそっと
ずっと受け入れ続けてもらえるための
ポケットでしょう
そういう顕子さんも，
相手を受けとめるポケットは大きいです
強くかがやいてる あなたが好きよ
小さく丸まってる あなたがもっと好きよ
I love you shining brilliantly;
I love you shrinking yourself like a ball.
恥ずかしいかな，
これはなかなか殿方には至難の技でして…
出会いがあれば，
別れもあります
季節はそれぞれ二人の上を
あくびしながら過ぎてった
湖のふもとで
ねこと暮らしている
The season passed yawning
above each of us two;
I’m living at the foot of a lake
with my cat.
季節があくびしながら
二人の上を過ぎてった…
気づけばそばには，
猫と湖
やがて旅立つ 愛をまとって
世界中の暗闇の中で灯をともす
その手で
Wearing the love leaving in due course,
I’ll light in the darkness
all over the world by the hand.
やがて旅立つ愛
最初から分かってたのでしょうか…
ひとりぼっち さびしい時
思い出すの あなた
いつの日か むかえにきて
両手を広げて
When alone, lonely,
I remember you;
some day, do come to meet me,
with your arms open.
あの「きっと君は来ない」の
クリスマスソングで有名な山下達郎さんが，
矢野さんの歌を評して
「歌詞に最も食べ物が出てくる歌手である」
と仰っています
「ラーメン食べたい」がその代表作です
実は失恋ソングなのですが…
顕子さんに関して
言われ尽くした形容詞ですが…
天才的感情表現です！
この生活感覚からほとばしる魂の叫び，
これこそ矢野顕子の真骨頂です
食べたものがあなたになる
美しくたくましく
食べたものが私になる
愛したり愛されたり
What you’ve eaten becomes you,
beautifully and vigorously;
what I’ve eaten becomes me,
loving or being loved.
ですが，その生活感覚が
気づけば地球規模に…
おかあさんの論理は
水平線を 越えてゆく
おとうさんの思いやりは
地平線で 輝いてる
The theory of Mam
goes beyond the horizon;
the consideration of Dad
is shining on the horizon.
お母さんが月で
お父さんが太陽，
なのでしょうか…
論理と思いやりのポジションが
スイッチしているところも，
深みを感じます
顕子さんにかかれば，
感情も天体の彼方に問われます
君がかくしているものはなんだ?
どこまでも沈んでく 悲しみの記憶
What are you hiding?
That’s your memory of sorrow
sinking deeper and deeper.
時間も超えます
すてたもの もらったもの
若さが邪魔していたもの
つらいこと くやしいこと でもそれが
わたしたちの笑顔をつくるもの
What I threw away, what I was given,
what youth prevented me,
what is suffering, what is regrettable;
all make our smiles.
善悪も超えます
いい人の上にも 悪い人の上にも
静かに夜は来る みんなの上に来る
Both above the good and the bad,
night comes quietly above all of us
喜怒哀楽さえ…
楽しかったよ きょうも
うれしかったんだ きょうも
ちょっぴり泣いたけど こんなに元気さ
Today I was also pleasant,
today I was also delighted;
a little bit wet, but I’m so fine.
顕子さんの「いま・ここ」の表現は，
小さいようで，
とてつもなく大きいのです
ここに生きるよろこび
わたしたちの中 ふくらんでゆく
The delight of living here,
within us, it’s swelling.
永遠の今，永遠の子どもが，
永遠の歓喜のうちに遊び続ける…
万人が万人，そうであれば，
すぐさまこの地上は
千年王国と化すでしょう
「いま・ここ」にしかないと断言した，
あの王国です
ただ，顕子さんの違うところは，
あくまで，
わたしとあなた，あなたとわたしの，
一人称・二人称の関係で
「いま・ここ」が歌い続けられる点です
考えてみましたら，
「リアル」って，
個対個の無数の組み合わせであり，
実は「わたし」と「あなた」以外の森羅万象，
つまり三人称の世界は「こと」であり
概念的な架空の幻想空間であって，
「もの」としての私たちの身体は，
永遠に目前の，今もっとも近くの存在との，
たゆまぬ戯れに興じる他ないのかも
知れません
「いま・ここ」に五感を研ぎ澄まして，
可能な限り
丁寧極まりない意識であれたなら，
自分の周りのありとあらゆる現象が
ひとであれ，ものであれ，ことであれ，
一人称と二人称のことがらに溶けゆく
のではないでしょうか
今宵，
織姫は彦星にこう尋ねてるのでしょうか…
あなたのすきな花おしえて
わたしもすきになりたいから
Let me know your favorite flower,
because I would like to love it, too.
薔薇です
それでは，このへんで
