June.28.2018
レフ・トルストイは,
1828年ロシア生まれの小説家です
と呼ばれています
ドストエフスキーと並び
ロシア文学を代表する作家と称されます
代表作には『戦争と平和』
『アンナ・カレーニナ』『復活』などが
あります
日本の文学者に与えた影響は
計り知れません
大きく感化されたとされるのは,
そして宮沢賢治らです
トルストイの文学者・宗教者・
社会主義者としての多様な側面が,
明治・大正期の日本の作家たちにも
大きく響くものが多々あったのでしょう
トルストイ本人は,
ルソーの影響を生涯受けていたそうです
本日はこの,レフ・トルストイの
名言のいくつかをご紹介したいと思います
(和文拙訳)
まずは,「自分を変える」ことについてです
Everyone thinks of changing the world,
but no one thinks of changing himself.
誰もが世界を変えるようと思うが,
誰も自分自身を変えようとは思わない
自分に何かマイナスなことがあった時に,
まず取り巻く人や環境に
問題があると見えてしまいます
そしてなんで自分はそんな中に
入ってしまったんだろうと,
被害妄想にさいなまれがちです
さらにその周囲が変わらない限りは,
何も変わらない,と…
これはいわゆる「バッドループ」,
悪循環的思考です
「自分自身が変われば
すべてが変わってくる」
このイメージをトルストイは,
素敵な表現でこう述べています
Truth, like gold, is to be obtained
not by its growth, but by washing away
from it all that is not gold.
真理は金のように,
それが成長するからではなく
金ではないものすべてを洗い流すことによって
得られる
たとえ金であれ,埃まみれでは輝けません
金そのものが変わる必要もなく,
ただその埃を洗い流せばいいのです
ではトルストイは,どの方向に
「変わる」ことを勧めているのでしょうか
The sole meaning of life is
to serve humanity.
人生の唯一の意味は
人々の役に立つことである
『アンナ・カレーニナ』執筆中に
トルストイは人生の無意味さに苦しみ,
自殺を考えるまでになりました
様々な精神的葛藤の末,
民衆の素朴な生き方や宗教に惹かれました
そして『山上の垂訓』を中心とする
原始キリスト教的な独自の教義を確立し,
それを広める「トルストイ運動」
と呼ばれる活動をしました
それは同時に,国家,私有財産,
搾取を否定する
非暴力の反政府運動でもありました
文字通り「隣人愛」を実践しよう
として,農業にも従事し,
農民たちと共に働き,
そこから収穫を得ることに
シンプルな喜びを感じる
簡素な生活を営みました
そうすることにより,
自らのアイデンティティーが広がり,
結果自然ともつながって,
心身ともに幸せを感じられると…
One of the first conditions of happiness
is that the link between Man and Nature
shall not be broken.
幸せの第一条件の一つは
人類と自然の間のつながりが壊されることは
ないということだ
そしてトルストイ流のその道は,
自力本願です
If you want to be happy, be.
幸せになりたいなら,なりなさい
厳しい農業生活にも進んで入っていった
トルストイは,仏教で言います
「自業自得」に近い発想していました
We lost
because we told ourselves we lost.
私たちは自分たちで負けたと言ったから
負けたんだ
決してあきらめないこと,そして何よりも
自分で自分に負けないことこそが,
ものごとに勝利する根本原理であるとは,
様々な偉人たちがことばを変えて
発してきたメッセージです
The two most powerful warriors
are patience and time.
最も強力な二人の戦士とは
忍耐と時間である
ブッダも,
人の最大の能力は忍耐力である
と仰っていました
原始仏典ではよく,
自らの過去世を引き合いに出す時に,
「私が忍辱(にんにく)仙人だった時…」
というフレーズを繰り返し使われました
自分に不利な状況に遭遇したとしても,
それをじっと耐え忍び,
時が解決してくれることを待つ…
それができる人は,
ある意味で「無敵」なのかも知れません
こうした思いは,
彼が生きた帝政ロシア下での
過酷な生活の中だったからこそかも
知れません
The greater the state,
the more wrong and cruel its patriotism,
and the greater is the sum of suffering
upon which its power is founded.
国家が大きくなればなるほど
その愛国主義はより間違って残酷なものとなる,
そしてその権力の土台となる
苦しみ全体も大きくなる
その後ロシアが
無政府主義へと展開したのは,
トルストイの影響が大きいと言われています
またあのレーニンでさえ,
トルストイの愛読者でした
農業を通じ人間と大自然との共生関係を
模索した一方で,
緻密な登場人物の心理描写をした
トルストイは,
ミクロレベルでの目線を重要視した人でした
True life is lived
when tiny changes occur.
真の生活は
小さな変化が起こる時に生きられる
自分の生活で大きな変化があった時のことを
改めて振り返りますと,
実はきっかけは小さな小さなものだったことが
多々あります
2017年ノーベル経済学賞受賞者,
セイラー氏の言う「ナッジ(軽い肘打ち)」です
小さいことがきちんとできない人は
大物にはなれない
個人的には小中学校時代に
お世話になりました塾の塾長先生が,
小生に対し,
時折大真面目な顔で諭してくれました
その真意を痛感できましたのは
数年後でしたが…
粘菌
小さいことの積み重ねが,
気づけば大きな結果を残す,
ということは,
イチロー選手も口癖のことばです
考えてみましたら,
自分の体の健康状態も,
10兆もの細胞の各コンディションの
組み合わせの結果です
例えば,
喉の調子が良くない状態が
続いているだけでも,
それが気になることで,
頭の回転やその他のパフォーマンスに
大きな影響を及ぼします
他人に真摯に向き合うためには,
まず自分に真摯に向き合わなくては
始まりません
よりよく生き幸せな生活をする大前提として,
トルストイが考えていたことは,
実に端的明瞭なものでした
There is no greatness
where there is no simplicity,
goodness and truth.
シンプルさ,善,
そして真実がないところには偉大さはない
それでは,このへんで