Georgia O'Keeffe by Alfred Stieglitz
June.9.2018
1887年アメリカ生まれの画家です
70年の画家生活の中で,
ほとんど風景,花そして動物の骨だけを
テーマとして描き続けました
また,アメリカ人初の抽象画家とも言われています
独自の世界を描き出せた女性画家として,
現在でも熱狂的なコレクターが数多くおられます
その画風は生と死,男と女,破壊と再生といった
私たち人間の存在理由の根底をなす二項対立を,
冷静かつ厳粛かつ軽やかに描写するものです
こうしたテーマは,
例えばピカソでも一貫して取り上げたものですが,
ご存知のように
彼のような強烈さ奇抜さとは全く違った,
他に類を見ないオリジナリティーを
オキーフは実現していました
本日はこの,今でも異彩を放ち続けている女性画家,
ジョージア・オキーフの名言のいくつかを,
彼女の作品群とともにご紹介したいと思います
(和文拙訳)
まずは,繊細の精神がうかがえるコメントからです
When you take a flower in your hand
and really look at it,
it's your world for the moment.
I want to give that world to someone else.
Most people in the city rush around so,
they have no time to look at a flower.
I want them to see it
whether they want to or not.
手に花を持って実際それを見る時,
その瞬間それはあなたの世界なのです
私は誰か他の人にその世界をあげたいのです
ほとんど街の人々は急いで歩き回っているから,
花一輪見る時間もないのです
私は彼らが望もうと望まないと,
花を見て欲しいのです
オキーフの生きた時代のアメリカは,
20世紀の近代資本主義経済社会が確立されていく
真っ只中でした
つまり,重・厚・長・大=男性原理が圧倒的優位を
維持し続けていたのです
そうした時代にあって,
オキーフは一人,
絵画を通して「否」と叫び続けました
Grey Line with Lavender and Yellow
Black Iris
続きまして,オキーフが絵画のモチーフとして
よく使っていました ,
「骨」についてのコメントです
Sun-bleached bones were
most wonderful against the blue -
that blue that will always be there as it is now
after all man's destruction is finished.
太陽光で脱色された骨は
青空を背景にして最も素晴らしいものでした
あの青空はすべての男たちの破壊がなされた後
今や実際にそこにいつもあるのです
つまり,オキーフにとって「骨」は
男たちが生命を貪り食って,もうこれ以上ない
という状態になった残骸です
そうしたものにオキーフ独自の
優しいまなざしを向け,
それが青空を背景としたときに
乾いた美を放っていた
それに気づいたオキーフは,
そこにメッセージを託すべく
数々の「骨」の作品を世の中に提出したのです
From the Faraway, Nearby
Cow's Skull: Red, White, and Blue
オキーフは当時としては
世界的にも珍しいと言われた,
抽象絵画を手がけた女性画家でした
当然そこには様々な苦労もあったはずです
To create one's world in any of the arts
takes courage.
どんな芸術分野であれ自分の世界を創り上げるには
勇気がいるのよ
ただ,絵はオキーフにとりまして,
詩人たちにとってのことばでした
I found I could say things with color and shapes
that I couldn't say any other way -
things I had no words for.
どんな他の方法であれ言えない色と形を使って
ものごとを言い表せるだろうと思ったのです
私にはことばが見つけ切れないものごとを
A Storm
またオキーフの絵画の特徴として,
「断片」のみをどこまでも丁寧に
描くことが挙げられます
その理由を彼女は次のように述べています
I often painted fragments of things
because it seemed to make my statement
as well as or better than the whole could.
全体ができるだろうことと同じ位あるいはよりよく
私の言いたいことが言えるように思えたので,
よくいろんなものの断片を描きました
「全体」に固執するのは男性原理です
「部分」に気を配れるのが女性原理です
そうした「部分」の,しかも,何らかの理由で
無造作に分かれてしまった「断片」に
細やかな眼差しを注ぎ,
それを表現することこそが,
オキーフにとって絵画活動する原動力だった
と言っても過言では無いかもしれません
そこには「小さなこと」に
あらゆるものを見出そうとする宇宙観がありました
Nobody sees a flower really;
it is so small.
We haven't time,
and to see takes time -
like to have a friend takes time.
実際に花を見る人は誰もいません
それはあまりに小さいからです
私たちには時間がないし,
見るには時間がかかる
友人一人持つのにも時間がかかるように
Abstraction IX
このようにオキーフの絵画のユニークさは,
常日頃の彼女の美学に裏付けられたものでした
そうした意味ではピカソと同じく,
人生=芸術だったタイプの画家でした
I often lay on that bench
looking up into the tree,
past the trunk and up into the branches.
It was particularly fine at night
with the stars above the tree.
私はよく夜空を見上げて
そのベンチに横たわりました
幹の向こう側の小枝を見上げたのです
特に木々の上に星々がある夜などは
それは格別でした
Corn, Dark , No. 1
現代の日本社会は
男性原理よりは女性原理が
本当の意味で必要とされている時代だと思います
日本古来「男時(おどき)」と「女時(めどき)」
があると言われます
昨今の日本社会の様々な問題を見るにつけ,
20世紀を駆け抜けてきました「男時」は
既に破綻・収束しつつあって,
「女時」の必要性が喫緊に必要かと思います
ただしそれは,
単に女性が活躍すれば良い,
ということだけではないです
男性の中にも女性性が,
女性の中にも男性性があって,
それを自覚できた人こそが真に
精神的成熟を遂げられる,
と言いました
ですが,
世の中の「女性の社会進出」のお話では,
往々にして,「男性の中の女性性」が
無視された,あるいは
そんなものなどないかのような状態で
話が流され続けている気がします
それでは男性方は一向に「成熟」しないのです
自分の中の「女性性」に対して,
ひここもり続けているだけですから
このようなままですと,オキーフの生きた
20世紀アメリカ社会の「男時」の原理と
何ら変わらないままです
「女性の活躍」=『女性の男性性の目覚め」
としますと,
男性としましては「女性性の目覚め」が,
個人的成熟のためにも, 社会全体の成熟のためにも,
改めて必要なはずです
オキーフの名言や絵画を見ますと,
不思議なことに何か,小生であれば
自分の中の女性性が活性化し,
心の中が洗われてバランスを修正される
気がします
ただし,
オキーフはこのような,
ユングをも超えることばも残していますが…
I feel there is something
unexplored about woman
that only a woman can explore.
女性にしか探れない
女性的なものが
あると思うのです
それでは,このへんで
Pelvis II