tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を:必要はもっとも確実な理想である(石川啄木)

f:id:tsuputon7:20180522092511j:plain

 

                                                   May.22.2018

 

 

石川は,

1886年岩手県生まれの詩人です

 

自分が生活する中で実際に感じたことを歌や詩にして

孤独感や貧困を表現し,

今日もなお共感を持って読み親しまれています

 

与謝野鉄幹森鴎外,金田一京介,夏目漱石らと

交流し,26年という短い生涯ながらも生前から

彼の歌は高く評価されていました

 

小生は個人的には,小学校5年生の時担任の先生が

に対する熱い思いを語って頂いたのが

初めての出会いでした

元来が脳天気な方ですので,

 

働けど働けど我が暮らし楽にならざり

ぢっと手を見る

 

を初めて聞いたときに,

あまりこれ以上知りたくないと正直思いました

 

ですが,その後,大学入学後,

働きづめに働き続けていた方ではないと知り,

ほっとしました

とりわけ放蕩していた時期もあり,

金田一京介氏の支援がなければ

生活していけなかった時期があるなど,

貧困とは別次元の人間味もおありだったのだと…

 

本日はこの,石川

歌と名言のいくつかをご紹介したいと思います

(和文拙訳)

石川啄木 - Wikipedia

f:id:tsuputon7:20180522091349j:plain

 

 

まずは,小さな心の動きを描写している歌からです

こみ合へる電車の隅にちじこまる

ゆふべゆふべのわれのいとしき

I shrink myself in the crowded train every evening,

which makes me protect myself.

 

 一人満員電車に乗るときの逆説的孤独感

いやがおうでも体が縮こまり,

電車の揺れるがままに進んでいく

そこにこれからの人生に対する

不安と悲哀が漂っています

 

あたらしき心もとめて名も知らぬ

街など今日もさまよひて来ぬ

Seeking for a renewed mind,

I’ve wandered through some town

whose name I don’t know.

 

北海道時代を始め,晩年上京後も

は「さまよう」ことを好みました

「あたらしき心」を求めずにはいられない閉塞感が

生活に蔓延していたのでしょう

 

ですが,小さな小さなことにも

なんとか希望を見出そうという意志が働いていた

と思われる歌もあります

 

よごれたる手を洗いし時の

かすかになる満足が今日の満足なりき

The slight satisfaction

when washing my dirty hands is the one of today. 

 

幸せに大きさはありません

 

の悩みの多くは,妻子と父母を,

社会的に不安定な自分が支えなければならない

というジレンマだったと言われます

とりわけ上京後に

いよいよ生活が逼迫して来た時期に,

最も多作で最も優れた作品群を書いた

と言われています

 

そんな自分を戒めてでしょうか,

次のようなことばを残しています

 

明日は、何を為すべきか。

これは今日のうちに考えておかなければならぬ

唯一のものである

What to do tomorrow;

this is the only one thing

I have to think about within today.

 

tsuputon7.hatenablog.com

tsuputon7.hatenablog.com

 

f:id:tsuputon7:20180522092213j:plain

 

が,幸徳秋水らのいわゆる「大逆事件」に

異常なまでの関心を寄せていたことが知られています

自ら裁判記録等を熟読し,

この事件の根本的原因は政府による社会主義弾圧だ

と確信していました

 

そんな中で,現代社会の私たちが読んでも

新鮮な驚きを与えることばを残しています

 

われは知る、テロリストのかなしき心を―

言葉とおこなひとを分ちがたき 

ただひとつの心を、奪はれたる言葉のかはりに

おこなひをもて語らむとす…

I know the sorrow of a terrorist;

the person is going to tell the only mind

that can’t separate words from actions by actions,

instead of the deprived words.

 

当時の「テロリスト」とは,

秋水らの日本人社会主義者たちのことでしょう

彼らの政府に対する訴え=言葉は通じませんでした

自分たちの正義の思いがもはや

聞き入れてもらえなかったら行動しかない…

彼らの気持ちはよくわかると啄木は言うのです

そこでガンジーのごとく,

非暴力・不服従を貫けていられれば… 

 

そうした政治の世界の負の側面が人災であり,

天災ではないことも,は熟知していました


戦争は決して地震津波のような天変地異ではない。

何の音沙汰もなく突然やってくるものではない

A war isn’t some kind of natural disaster

such as an earthquake or a tsunami;

it doesn’t come suddenly without any omen.

 

tsuputon7.hatenablog.com

f:id:tsuputon7:20180522092236j:plain

 

 

このような強い政治意識もあったは,

かつての小生の様に通俗的解釈によりますイメージの,

ただただ人生の暗い側面を描き出す,

感情的ロマンチストではありません

 

そのことは,

詩に対する彼の考え方からうかがい知れます

詩はいわゆる詩であってはいけない。

人間の感情生活の変化の厳密なる報告、

正直なる日記でなければならぬ

A poem must not be a so-called poem;

it must be a correct report of the change

in a human emotional life, an honest diary.

 

詩は報告であり日記であり,

とてもリアルなことばの塊でなければならない

とするのです

 

彼にとって詩は,「ファンタジー」ではなく

「リアリティー」を描き出す,

ノンフィクション媒体だったのです

心が現実そのものだと思っていたのです

 

かの時に言ひそびれたる大切の

言葉は今も胸にのこれど

The important words I couldn’t say at that time,

I still bear in mind.

 

f:id:tsuputon7:20180522091933j:plain

 

 

そんなにとって,「人生」とは…

われわれが書斎の窓からのぞいたり、

ほお杖ついて考えたりするよりも、

人生というものは、もっと広い、深い、

もっと複雑で、そしてもっと融通のきくものである

Life is something much broader, deeper,

more complex and more flexible

than the one we can see from the window

of a study,

or think of resting the chin in the hand.

 

人生は机上の空論ではなく,

様々な可能性を秘めたものだ,

とする思いがひしひしと伝わってきます

 

そしてリアリストとしての問題解決策は… 

 

いかなる問題にあっても、

具体的ということは最後の、最良の結論だ

Whatever problem it is,

to be concrete is the last and best conclusion.

 

自らの「大逆事件」に対する

思い入れの深すぎたことを,

自戒するかのようなコメントがありました

 

時代に没頭していては

時代を批評する事が出来ない

You can’t criticize the time

if you’re absorbed in it.

 

ものごとはあまりに近づきすぎると

実像が分からなくなります

適度な距離があって初めて,

適度な観察もできるというものです

 

の「時代」に対する視線は,

一体何が起きていて,何が起きるのだろう,

ということを的確に見定めたいとする

思いに支えられていました

 

そうした中で,

エジソン顔負けの至言がありました

 

必要はもっとも確実な理想である

Necessity is the surest ideal.

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

tsuputon7.hatenablog.com

f:id:tsuputon7:20180522100810j:plain