tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語で名言を:芸術は狂気の発動だからねえ(横尾忠則)

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横尾忠則氏デザインの加古川線の電車

 

                                                 April.23.2018

 

 

横尾忠則さんは,1936年兵庫県生まれの

芸術家です

 

44歳までグラフィックデザイナーとして

世界的に評価されていましたが,

ニューヨーク近代美術館ピカソ展に衝撃を受け,

画家に転向されました

 

個人的には幼少期に,

TBSのテレビドラマ『ム一族』のデザインと,

倉田という謎の人物の役をなさっておられた時に

初めてお名前を知りました

 

そして学生時代に横尾さんの作品や著作に触れ始め,

日本の芸術家としては岡本太郎さん同様,

多大な影響を受けてきました

 

常に「あの世」的な風貌・発言・作品は,

いついかなる時に接しましても,

異次元ワールドです

 

ある深夜番組で,

宗教学者中沢新一氏と対談されておられた時に,

 

芸術は狂気の発動だからねえ

 

と仰ったのを拝見し,

こんな生き方もあるんだと,

様々刺激させられてきました

 

以降,このおことばは

小生の座右の銘となっています

 

本日はこの,横尾忠則さんの

名言のいくつかをご紹介したいと思います

横尾忠則 - Wikipedia参照

(英文拙訳)

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まずは,「優れた芸術作品」についてです

 

優れた芸術作品は

年齢や性別,国籍などに関係なく

万人に受け入れられる普遍性があるでしょう

狭い範囲の人にしか伝わらなかったり

ある種の教養や知識がないと

わからないというものではないんです

A great art has the universality

that can be accepted by everyone,

regardless of ages, genders, or nationalities;

it isn’t something that can’t be understood

only by some selected people,

or without some kind of culture or knowledge.

 

芸術は普遍性に達していれば,

万人に受け入れられる

何かの条件に縛られることなく,

観る人聴く人に感動を与える

 

横尾さんの美学は極めてシンプルです

 

本当に素晴らしい物は

誰が見たって素晴らしい。

その一言。

これは万国共通かもしれない。

人の感性は国境を超える。

Something really great

is always great to everyone.

That’s all.

This may be universal all over the world.

One’s sensitivity goes beyond boundaries. 

 

作品の超越性こそ,芸術のなんたるかである

 

芸術は「狂気の発動」と仰った本意は,

この超越性を指しておられるのだと思います

 

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横尾さんはご自身のことについて,

次のように述べられています

 

自分に限界があると思わなかったことが

よかったんでしょう

「己の限界を知れ」

という言葉にも一理あるだろうけど

人間は限界を決めてしまうと、それを言い訳にする

It may have been good for me

not to think I have a limitation;

the phrase, “Know your limitation.”

may be a little bit reasonable,

but once a person decides it,

the person will make it an excuse. 

 

マイケル・ジョーダン然り,

超一流の方々が口を揃えて仰ることです

「自分はここまでしか出来ないから」

という時の「自分」とは,過去の自分でしかなく,

それを基準・限界に据えてしまうことは,

未来の可能性を一切排除してしまうことになります

tsuputon7.hatenablog.com

 

このように無限界の横尾さんにとって,

「創造」とはどのようなものなのでしょうか?

 

創造に結びつかない想像なんて、

ただの妄想にしか過ぎない

無意識のうちに自分に

枠をはめてしまうことがあっても

それを僕はどんどん壊してきた

飽っぽい性格が幸いしたのかもしれない

だから、また変わっていくでしょう

The imagination that can’t be associated

with creation is only illusion.

Even if I put myself into a frame unconsciously,

I have broken it on and on;

my capricious character may have been good.

So, I will change again.

 

ピカソ

私はいつも自分のできないことをしている。

そうすればそのやり方を学べるからだ。

と言いました

 

また,

自分に会ったら,自分を壊せ!

岡本太郎氏は仰いました

 

横尾さんも芸術を,

破壊と再生の永遠の往復運動と捉えておられます

tsuputon7.hatenablog.com

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 一歩 日豊 散歩

 

狂気とは,自身の既得権益を破壊することです

そのままでいれば,

安定が得られるように思われるものを突き崩し,

新たな創造の場とする

 

じつはこの発想は,

iPS細胞のアイデアだとも言いえます

 

そのままで何の問題もない人間の皮膚細胞を

「初期化」する…

ある意味,破壊活動です

そして,その破壊があって初めて,

「再生」医療が可能になる

こう考えますと,山中伸弥教授も芸術家です

 

先日,友人の医学部教授と会食した際,

赤ワインに酔いながら,

 

これからの医学の一番のテーマは

アートとのコラボだよ

 

と言っていました

人体とは無数の生死の集合宇宙だ

とも言っていました

人体を知れば知るほど,

神秘的な美を感じるそうです

 

tsuputon7.hatenablog.com

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横尾さんご本人の感じられる「狂気」とは,

どのようなものでしょうか…

 

絵は自分のスタイルで完成すると

満足するのは当然だが、

僕は自分の中の他人が全面的に出てきたとき、

満足というより、

何か恐ろしいものを感じる。

それは僕にとって狂気のようなものかも知れない。

It is natural that an artist should be satisfied

with his picture compleyed in his style;

as for me,

when someone else in myself all emerges,

I feel something frightening

rather than satisfaction.

It may be some kind of madness to me. 

 

心理学的に言いますと,

無意識の意識化こそ狂気です

「自分の中の他人」に出会う所こそ,

横尾さんの狂気の所在です

 

狂気は創造の核みたいなものだけれど、

自分であろうとすればするほど、

自分から離れて行く。

それが創造への入り口で、

そのドアをこじ開けなきゃ狂気に出合わない。

大抵はドアの前から引き下がってしまうのだ。

Madness is something like a core of creation,

but the harder I try to be myself,

the farther it goes away from myself.

It is the entrance to creation,

and I can’t encounter madness

without trying to open the door.

Mostly, I retreat from the front of the door. 

 

「自分であろう」とするのは,

先ほどの「限界」を設定する時と同じく,

過去への執着でしかありません

 

勇気を出してドアをこじ開けること,

そうして初めて,

自分の中の他人=狂気に出会えるのです

 

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 Y字路

 

 

横尾さんが「狂気」以外に

よく語られるキーワードに「未完」があります

 

僕の絵を未完のまま買った人もいた

その状態がその人にとっての

美だったんじゃないでしょうか

未完という形の完成

Someone bought my picture that was incomplete.

I’m afraid the state might be

a beauty to the person;

the completion in the form of  incompletion. 

 

ベートーヴェンの「未完成交響曲」然り,

大芸術家ほど「未完という完成」について語ります

そう思い至られる真意は…

 

結局は未完で生まれて、

未完で生きて、

未完で死ぬしかないのだろうか

iIm afraid, after all, I was born incompletely,

have lived incompletely,

and will die incompletely.

 

横尾さんの人生観に鍵がありました

 

人生は物質ではありません

人生はプロセスです

静的な三次元ではなく,

時間軸も持つ動的な四次元です

人生そのものが芸術である横尾さんは,

とっくの昔に御自身の生が

三次元世界に資本主義化されうるものではなく,

高次元であることに気づかれていたのです

 

ですので,他者の評価は気にされないと仰ります

 

作品解釈は見る人の想像力に委ねています

I let the viewers imagination interpret my works. 

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

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その後の天の岩戸