tsuputon's blog

英語の名言をベースに, 哲学から医学・薬学に至る雑学を, ゆるまじめにご紹介していきます

英語の名言:現実というのは常に公式からはみ出すものだ(ファーブル)

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地球上最強生物・クマムシ

摂氏プラス150度以上でも,

マイナス150度以下でも生存可能

 

                                                    April.4.2018

 

 

ジャン=アンリ・カジミール・ファーブルは,

1823年フランス生まれの博物学者です

 

特に昆虫の行動研究の先駆者で,

その成果をまとめました

『ファーブル昆虫記』は

世界的に知られています

 

ただ,  祖国フランスではあまり業績が評価されず,

『昆虫記』が各国語で翻訳された後には,

ドイツ語圏やオランダ語圏,  

そして古くから昆虫愛好文化を持つ日本で,

より親しまれるようになりました

 

日本では小学生の時に一度は必ず

目にする本だと思います

小生も,  小学4年生の時に夏休みの課題で,

昆虫記の一部を読んで感想文を書く,

というものがあり, それに触発されて

和歌山県でカブトムシやクワガタ,

その他諸々の昆虫採集にハマったことがあります

今では少し虫が苦手なのですが… 

 

本日はこの,ファーブルの名言を

いくつかご紹介したいと思います

 

ジャン・アンリ・ファーブル - Wikipedia

 

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まずは,「仕事」についてのコメントです

 

Work so that I even have no time

when 1 minute rests.

I’m not this much happy.

A done thing and this are worth living.

1分間の休む暇さえないほどに働くこと。

これほど幸せなことはない。

働くこと、これこそが生き甲斐である。

 

「観察」を何よりも重視した,

ファーブルならではのリアルなコメントです

観察を休んだ瞬間に,

絶好の昆虫の行動を見る機会を

なくしてしまうかもしれない

そうした思いで

「1分間の休む暇さえないほどに」と

語っておられたのでしょうか

 

次に,「苦しんでいる人」にとって仕事とは… 

 

There may be no big comforts like work

for those who suffers.

苦しんでいるものにとって、

仕事ほど大きな慰めはないのではないだろう。

 

現実に何かに苦しんでいる時,

その原因となるものと全く違うことに集中すると

その苦しみがいつしか消え,

集中したことがうまくいくという体験は,

多々あります

あのブレーズ・パスカルも,

歯が痛くて眠れなかったときに,

仕方なく考えた数学理論が

サイクロイドの大発見につながったといいます

 

tsuputon7.hatenablog.com

 

苦しんでいる時こそ,  ちょっとした勇気を持って

何かに打ち込むこと,

ファーブルはそのスピリットを常に持ち続けていました

 

If you tackle the difficulty

with tolerance and consideration,

 you can grow every time. 

忍耐し熟考して

困難に当たれば,

そのたびに成長することができる

 

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ファーブルが特に好んだフンコロガシ

 

 

続きまして,

「自由」と「秩序」の関係についてです

 

Freedom makes an order

and makes disorder for compulsion.

自由は秩序を作り、

強制は無秩序を作る。

 

これは一見しますと,

常識的社会通念の正反対です

自由が無秩序を,  強制が秩序を作るかのように

世の中では思われがちです

法治国家では

「法律があるからこそ秩序が保たれる」

とされているのですから

 

ですがファーブルは,

昆虫や動物の観察をし続ける中で,

実は現実の自然界の「自由」こそが秩序だっていて,

人間が法などで人為的に定めた「強制」こそが

無秩序を作るのだと,

「見えて」いたのかもしれません

これは老子の「無為自然」の境地に近い

意識レベルかと思われます

 

あの南方熊楠も,粘菌の観察をする中で,

自己組織化する生命の秩序を目の当たりにして

驚愕したと言います

 

tsuputon7.hatenablog.com

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粘菌 

 

 

ファーブルは,  チャールズ・ダーウィンの進化論に

非常に強く反対していました

チャールズとは親交があり,しかもチャールズが

ファーブルを「類稀まれなる観察者」と

絶賛したにもかかわらず,

ファーブルは進化論への批判をやめませんでした

 

彼は狩バチの例によって

「進化論へのお灸」と題した章で,

次のように疑問を投げかけています

 

狩りバチの先祖は多様な獲物を狩れたのに,

子孫に限られたものしか狩れない者が出てくるのでは,

明らかに進化しているものの方が不自由であり,

変である,と

 

(For Darwin’s theory of evolution)

it’s magnificent as a law,

but it looks like a vial which contains only air

with the fact at the front.

(ダーウィンの進化論は)

法則としては壮大なものであるけれど、

事実を前にしては

空気しか入っていない

ガラスびんみたいなものだ。

 

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狩バチ

 

 

ここに,  

実践と理論の埋められないギャップがあることを

ファーブルは端的に示しています

 

ファーブル自身は想像を膨らまし続けるのではなく,

あくまでリアルな観察結果から論文を書く,

というスタイルを貫いていました

 

以前,山中伸弥教授が対談本を出された中で,

現代日本の理科教育についてのコメントとして,

次のように仰っていたことを思い出しました

 

例えば進化論はまだ誰も証明したことがないんです

あれは証明しようとすると

とてつもなく大変な作業になります

理論ではなく仮説に過ぎないんです

 

そしてあたかも進化論を,

証明済みの「理論」であるかのように教える

日本の理科教育の現場を嘆いておられました…

 

空気の入ったガラスびんでしかないものを,

中身が充実しているかのように教えている…

その段階で,それは科学ではなく,催眠です

 

 

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 ファーブルの人間論は実にシニカルなものでした

 

Human beings are,

to top it off you have piled up progress in progress,

it seems to be the day comes

that would have fallen by self-defeating

for the excesses of what is termed civilization.

人間というものは、

進歩に進歩を重ねた挙げ句の果てに、

文明と名付けられるものの行き過ぎのために

自滅し倒れてしまう日が来るように思われる。

 

19世紀から20世紀初頭にかけて生きたファーブルの,

資本主義の工業化社会に対する,

極めて深い懸念がここに示されています

奇しくもそれがファーブル没後100年を超えました今,

笑い事では済まされない予言ともなってしまっている

側面もあります

 

若かりし頃に物理や化学の教科書を書くなど,

自然科学全般に対し博識であったからこそ,

逆にテクノロジーが将来人類に何をもたらすかも

具体的に見えてしまっていたのでしょう

ファーブル本人はあくまで,

昆虫や動物の「観察」第一を貫きました

 

The one as actuality is something

always to stick out of the formula.

現実というものは、

常に公式からはみ出すものだ。

 

「常に」がポイントです

公式は現実の観察の結果からの後付けであり,

その後付けが現実を完全に予期できることなど,

ないと考えていたのでしょう

 

日常の目の前をよく見ること

 

忙しい生活の中で,

最も忘れてしまいやすいことです

 

It’s to know to see.

見ることは知ることだ。

 

それでは,このへんで

ごきげんよう

 

 

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